アイス(3)

 コンビニに入った。


「泰ちゃんって、どういうのが好き?」

「なんだろ。バニラアイスの、直方体のやつ」

「……えぇ?」

「細長くて、四角いやつ」

「紙でつつんである、みたいな?」

「そんな感じ」

「あるかな……」

「これだね」

 ひとつ、かごに入れた。

「愛ちゃんは?」

「あたしは、これ」

 コーンがついた、いちご味の、ソフトクリームのアイスを指さした。

「わかった。いいよ」

「京助は?」

「どうしようかな……。これにする」

 小さくて、ボールみたいな形の、シャーベットのアイスがたくさん入ってる袋を、ひとつ選んだ。

「お金、たりる?」

「うん」

「あたし、エコバッグ持ってる」

「借りていい?」

「うん」


 会計をして、コンビニを出た。図書館の本を入れたかばんは右手で、エコバッグは左手で持った。

「とけちゃうから、急ごう」

「うん」

 急ぎ足で、家に帰った。

 ゆるい坂道で、空を見あげた。青くて、きれいだった。


「ただいま」

「おかえりー! アイス! ある?」

「あるよ。手を洗っておいで」

「わーい!」

 泰助が、洗面台のほうに向かって走っていった。

「おかえりなさい」

「ただいまー」

 愛ちゃんが、母さんに答えた。

「あたしも、手を洗ってくる」


 僕も手を洗って、リビングのテーブルにアイスを置いた。

 それから、食器棚からお皿をひとつ出して、使うことにした。

「どうぞ」

「ありがとー! これ、ぼくの好きなやつ?」

「そうだよ」

「しあわせ」

 本当に幸せそうだった。

「母さんも、食べる? これ」

「いいの? じゃあ、ひとつだけ」

 よってきた母さんが、僕のアイスをひとつつまんで、口に入れた。

「つめたっ」

「おいしいでしょ」

「おいしいけど。つめたいね」

 愛ちゃんも、プラスチックの容器をはずして、アイスを食べはじめた。

「あまい。おいしい」

「よかった」

「夏だねー」

「そうだね」

「それ、とれる? 泰ちゃん」

「もうちょっと……。できた!」

 やっと、アイスの紙をはがせた泰助が、アイスをかじる。

「おいしー」

 喜びの声をあげた。


 アイスを食べたあとは、休けいした。

 愛ちゃんと泰助と僕の三人で、テレビを見た。

 この時間のテレビは、そんなに面白くはなかったけど、みんなでテレビの前に座って、ひとつのものを見ていると、愛ちゃんと家族になったような気分をあじわうことができた。


「宿題、どうする?」

「あたしは、今日はもう勉強しない。荷物を持って帰る」

「そっか」

「ちょっと、上に行っていい?」

「いいよ」


 僕の部屋に入ると、愛ちゃんは床に座りこんだ。

「あたし、京助に、言わないといけないことがあって」

「……なに?」

 あんまり、いい話じゃなさそうだった。

 うかない顔をしてる。

「同じクラスの、万代ばんだいくんから、告白されたの」

 しょうげきの告白だった。

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