第8話〈6〉【無銭LANを導入しますが、何か?】

 

 唐突ですが、皆様……。

 

 『月』──という言葉を聞いて。

 真っ先に何を閃めきますか?


 ……ふふっ、そう身構えないで下さいな。

 ただの連想ゲームみたいなモノですわ。


 何でも構いませんのよ?


 ……。


 ……ふむふむ。

 なるほど……!


 【夜】──ですか。


 確かに、そうですわね。

 夜空は『月』が最も輝きを放つことの出来る、絶好の大舞台。


 満ち欠けだけでなく、数年に一度しか見ることのできない皆既月食やスーパームーン、ブルームーンといった神秘的な場面に立ち合わせてくれるのも、この時間帯だけですものね。

 人が月と関わりを見せる唯一の瞬間とも言えるので、【夜】を連想される方は非常に多いはずです。


 いいですわね。

 ……では、他には何かございますか?



 【七曜】──?


 ああ、なるほど!

 七日間の周期中に属している、『月』曜日のことを指しているのですね!


 日、月、火、水、木、金、土。

 今となっては全世界の常識となっている、この一週間の数えですが……。

 これは、古代バビロニアから伝わる一週間の区分法で、五つの惑星に月と太陽を加えた天体に宿る守護神が、日替わりで私達を見守って下さっているという考え方から定められた暦数え。


 とある一説によると、この七曜一週の考え方は。

 特に国際間通しで意図的な統一を測ったわけでもなく、『人々による伝播』という手法だけで、自然と全世界に定着を見せたのだとか……!

 もしかすると、人類には計り知れない。

 何か特別な力でも働いたのかもしれませんね。


 ……さて。

 お次は何でございましょう。


 

 こ、【告白の言葉】──?


 ……ふむ。

 これは、少し存じ上げませんわね……。

 告白と月に、何か深い関連性でもあるのでしょうか?


 私も、恋愛に関しての経験は乏しい身の上でしたので、イマイチ理解はできておりませんが……。

 私ならきっと、余計な小技になど頼らず。

 『正直な言葉』の一本だけで、堂々と勝負して見せますわ。


 あなただって。

 気の利いたロマンチックな言葉なんかよりも。

 勇気を出して下さった、お相手様の『本心』が聞きたいでしょう?

 

 ……ふむ、簡単に挙げられるのは。

 ざっとこのあたりですかね?


 中々、興味深いご意見でしたわ。


 この度は、ご協力いただきまして。

 誠に有難う御座いました。


 ……。


 ……えっ?

 最後に『私の意見が聞きたい』……?


 そうですわねぇ。

 月と言えば、やはり……。


 定番の『アレ』ではないでしょう?


 ……。

 

 だから、アレですわよ。

 アレ……。


 月面へと初めて飛び立った、かの有名な……。


 ……いや、違います。

 【アポロ計画】の話ではありません。


 もう一つの方です。


 え? まさか、誰も知らないのですか?


 月面帝城──。

 『キャステル・オブ・ディザスト』を……。


 ……。

 

 そう、今宵の舞台は。

 地球から約38万kmほど離れた場所にある衛星。

 ──『月』の真上であった。


 加えて、この場所には。

 全宇宙の統治を目論むディザスト達の根城……。

 月面帝城──『キャステル・オブ・ディザスト』が存在していた模様。


 月の表面に聳え立つ夥しい数の電波塔。

 地球外生命体の髄液が入った緑色の燃料タンク。

 交錯したライトレールを行き交いながら、離着陸を繰り返す小型の円盤飛行艦。


 その通り。

 彼らは、今まで侵略に成功してきた数々の惑星から奪取した、コレらの技術達を用いて……。

 月面上から、最後の侵略先となる──『地球』へと宣戦布告をしているのだ。


 ……そして、そんな中でも。

 最も危険指数の高いオブジェクトは……。


 やはり、帝城の中心部に大きく構えられし。

 超究極古代兵器。

 ──『ハイパー・ディザストキャノンΩ』である。


 既に『巨大な風穴を一つ穿たれた青い地球』に向かって、禍々しく銃口を突きつけているこの巨大な砲筒は……、今もなお。

 

 猛々しい機械音と共に。

 生命エネルギーの再充填を試みようと……。


 試み……、ようと……。


 ………………。


 …………。


 ……はぁ。

 もう、このくらいで宜しいでしょうか?


 説明文を読み上げているだけですのに。

 なんだか、頭が痛くなってきましたわ。


 ……そもそも、なぜ私は。

 こんな訳のわからないゲームの世界観を熱心に解説させられているのでしょうか。


 詳しくは知りませんが……。

 どうせ、『サンダーちゃんが主役のゲームタイトル本編に出てくる原作舞台の一部を、そのまま対戦ゲームのステージとして流用した』だとか、そんな話でしょう?

 

 ……。


 ……と言いますか。


 そもそも、どなたですの?

 悪のディザストって……。


 二次元のフィクション作品に対して。

 とやかく文句をつけるつもりはありませんが……。


 私達の愛する地球に。

 なに、トンデモナイことしてくれてるんですか。


 いくら侵略してる側とはいえ。

 開幕からいきなり、どデカい風穴を開けてくるなんて……。

 いくらなんでもやりすぎでしょう。


 あそこまで、容赦なくやられたら。

 もはや、主人公のサンダーちゃん様もディザスト達を成敗したところで、復興のしようが無いのでは……?


 他にも……。

 帝城の名前がシンプルにダサい、だとか。

 高い軍事力の割に戦法が脳筋すぎる、だとか。

 味占めて二発目いこうとするな、だとか。


 色々ツッコミどころ万歳ですが。

 ぼやいていても、仕方がありません。


 こんなふざけた世界観であろうと。

 それが主の敬愛なされるサンダーちゃん様の世界だというのならば、甘んじて受け入れましょう。

 

 私は諦めたように。

 その場で一つの小さな嘆息。


 目の前に起きている非現実的な光景を。

 全て、受け止めるかのように。


 煌めく星々に包まれし月面の上で。

 颯爽と全力の決め台詞を放つのであった──



『──私の名は雷鳴のサンダー。……今宵より貴女だけの騎士とならん』



 すると、近くにいた二人の少女達から。

 「おーっ!」と、全力の拍手が贈られる。


 一人は日本人留学生の華様。


「すごいですよ、アメリアさん! もうどこからどう見てもっ! サンダーちゃんにしか見えませんっ!」


 そして、もう一人は……。


「ほ、ホンモノだぁぁーーー!!??」


 本日、最高潮の大興奮を見せている我が主。

 カノン様だ。


 そう、あれから私達は。

 それぞれのアバター衣装を購入した後……。


 新たな装いと共に。

 ここ──【ゲームエリア】へと訪れていた。


 ここまでの流れで。

 何となく察しがついているとは思うが……。


 私のアバタースキンは、目当てのメイド服から。

 いつの間にか、この訳の分からないコラボ衣装──【雷鳴の聖騎士】へと、強制的に変更させられてしまっていたらしい。


 そして、今はその衣装が最も映えるであろう。

 本VRの有料コンテンツ。


 大人気RPGのお祭り系コラボゲームである。

 ──『ラスト・オブ・ファンタジー〈光の闘争者達〉』の世界へと、馳せ参じている訳なのだが……。


「……仮想世界の中とはいえ、まさかこのような格好をする羽目になるだなんて……! く、屈辱ですわ……!」


 当の私は。

 終始、この有り様。


 人生で初めて身につけた。

 コスプレ衣装を前に羞恥心を捨て切れず。


 華様とカノン様がお揃いで着用している素朴な可愛らしいワンピースタイプのアバター衣装を羨ましそうに見つめながら、もじもじと身体のあちこちに手をやるばかり……。


 すると、そんな落ち着かない様子の私に対し。

 近くにいた華様が、そっと耳打ちを仕掛けてきたようだ。


「大丈夫、ちゃんと似合ってますよ! それに、ほら……! アメリアさんが【サンダーちゃん】になりきってくれてるおかげで、カノンちゃんの機嫌もすっかり直っちゃいましたし……!」


 華様の言葉通り。

 足元付近に視線をやると、そこには……。



 私にキラキラと熱い眼差しを送り続けている。

 満面の笑みを見せたカノン様。


 そのサマは、まるで……。

 長年追い求めていた神様的存在のアイドルが。

 突然、自身の目の前に降臨したかのようである。


「ふぁんです! さいんくださいっ!」


「……」


 私は冷や汗混じりの笑顔を見せつつ。

 彼女の要望に応えるように、メニューから筆記アプリを起動。


 時間経過で消える特殊な光のペンを召喚しつつ。

 カノン様の腕を対象とした【Thunder】というサインを記入してみせるのであった。


 ちなみに、サインを記入するのは。

 これで五度目である。


「おぉー……っ!!」


 自身の腕に描かれた文字を見つめながら。

 目をパチパチとさせる、カノン様。


「……よめないっ! ……けど、わーいっ!」


 どうやら、それでも。

 彼女にとっては嬉しい出来事であるのか。

 

 全く同じ反応で、ぴょんぴょんと喜びを体現している様子である。


 可愛らしい純粋な反応に。

 一瞬だけ和んでしまう私。


 しかし。

 すぐに、ブンブンと自身の首を振ってみせる。


 ……って。

 呑気に和んでいる場合ではないでしょう!

 アメリア、あなたは天下の【超級使用人】なのですよ!?


 本当に良いのですか!?

 こんな着せ替え人形みたいな扱いを受けたままで!


 た、確かに。

 カノン様は喜んでくれてはいますけれど……!


 それは、私にとっても。

 非常に喜ばしいことですけれど……!


 ただ……!


 ただ……!!


 もし万が一、こんな姿を……!

 ルーヴェインに見られでもしたら……!?


「……」


 私は、クイっと自身のVRゴーグルの片側に手を当てて……。

 右目のみを、恐る恐る現世へと帰還させてみた。


 すると、そこには元いた屋敷の一室。

 ──【レッスンルーム】の光景が広がっていた模様。


 加えて、目の前には。

 カノン様の一人称視点を画面共有した教材用モニターが待ち構えていたらしい。


 ちなみに、画面内には。

 サンダーちゃんのコスプレに扮する私が、バッチリと映し出されている様子である。


「うぅっ……!?」


 改めて、客観的に自身の姿を真っ向から見せつけられたせいなのか。

 私の身体は一瞬にして、熱を帯びさせてしまう。


 なんですの、コレ!

 これでは、まるで……。

 誰よりもVR機器にはしゃいでいる、幼子のようではありませんか!!


「……っ!」


 とりあえず、私は冷静に。

 その場から周囲の様子をゆっくりと確認してみることにした。


 まずは、右側だ。


 隣の椅子には、VRゴーグルを装着して。

 二つのグリップ型コントローラーを手にしている華様がいらした。


 続けて、左側……。


 そこには、赤ちゃんワニのクロダを頭の上に乗せたカノン様が、華様と同様の格好でちょこんと椅子に座っている。


 ……どうやら、部屋の様子を見ている限りだと。

 幸いにもルーヴェインは。

 まだ、外出先から戻ってきてはいないらしい。


 しかし、彼もまた。

 あらゆる分野を卒なく熟すエキスパート。


 任された任務を片付けるスピードも。

 尋常ではないはずだ。

 

 故に、帰ってくるのは。

 時間の問題であるということ。

 

 何としても、彼が戻ってくる前に……。

 キリの良い所を探さねば……!


 そして、私は心臓を高ならせながらも。

 暫く、キョロキョロと【レッスンルーム】内の様子を隈なく見渡していると──



〈──……あの、大丈夫ですか?〉



 突然、耳元のVRゴーグルから。

 華様の心配そうな声が聞こえてきた。


「ひゃぁっ!?」


 その声に反応した私は。

 すぐさま、VRゴーグルを元の状態に戻すと……。

 そこには。

 私の顔を不思議そうに覗き込んでいる華様の姿が……。


 おそらく、無言で棒立ちとなってしまった仮想世界内の私を不審に思ったのだろう。

 いち早く、私の様子を伺ってきたらしい。


「問題ありませんわっ! ええ、全くもって問題などございませんともっ!」


「そ、そうですか? なら、いいですけど……」


 そして、私の意識が回帰した事を確認したのち。

 改めて華様は、私に本題を切り出してくる。


「……それにしても、まさか月の上にまでくるとは思いませんでしたよー! こんなところで、私達は何をさせられるんでしょうね?」


 どうやら、華様は。

 このゲームについての詳細を知りたがっているらしい。


 なので、私は華様の質問に答えるべく。

 このゲームの中へ入る際にダウンロードしておいた本ゲームのルールブックを展開。


 一つの咳払いを挟んだ後に。

 ポイントを掻い摘んだ説明を口にしてみせた。


「……ふむ。どうやら、このゲームは三対三でとりおこなう協力型格闘ゲームらしいですわね。『チームで共有する三つの残機ストックをお互いに奪い合い、先に三ダウンを奪った方のチームが勝者になる』というルールらしいですわ」


「えっ!? コレ、格闘ゲームだったの!? ……不安だなぁ。 正直、格闘ゲームだけはあんまりやったこと無いんですよね〜……」


 自信なさげに、分かりやすく肩を落とす華様。

 そんな華様に対し、私は励ましの言葉を贈る。


「まぁまぁ、あくまでも娯楽ですからね。そう気負わずに、楽しむことを第一として考えましょう」


 すると、その直後。

 次の様な機械アナウンスが……。

 突如として、ステージ全体に響き渡った──



〈マッチングを完了しました。各チームのプレイヤーをそれぞれの本拠点へ転送致します。〉



 ──アナウンスを聞く限り。


 どうやら、ようやく。

 私達の対戦相手が決定したらしい。


 つまり、私達の記念すべき初戦闘を飾る対戦相手が、もう間も無く。

 この月面ステージへと、転送されてくるという訳だ。


 加えて、そのアナウンスが流れると同時に。

 私達三人は揃って、対戦ステージの東側にある青色の拠点へと自動ワープさせられた模様。


 ……察するに。

 この青い旗が立っている場所が。

 私達の本拠点となるのだろう。


〈転送完了。各チームのプレイヤーは、職業を選択して下さい〉

 

 続けて、流れるように。

 試合前のブリーフィングタイムへと突入。


 突如、私達三人の前にて。

 職業選択用のメニューウィンドウが一斉に表示される。


「なんだか、たくさん種類がありますね……! 初心者すぎて、どれにすればいいのか全くわかんないです……」


 ……というわけで。

 私は再び、ルールブックを展開。


「【近接】、【後衛】、【補助】──。大まかに分けると、この三種類の役割を持つ職業が存在しているみたいですわね。 ……役職の組み合わせによって様々な編成パターンを組めるようですが、ルールブックを見た限りですと、基本的に全種の役割を均等に採用したバランス型のパーティを組むのが推奨されているようですわ」


 そう、このゲームは。

 三人一組で行う格闘ゲーム。


 そして、プレイヤー達は。

 原作シリーズに登場する数多のキャラクター達の力を自身に憑依させて、その力でバトルを繰り広げるという仕組みらしい。


 見たところによると。

 剣士や槍術士などの──【近接】タイプ。

 魔術師や銃士などの──【後衛】タイプ

 僧侶や盗賊 などの──【補助】タイプ。


 ……と言った、三種類に属するタイプに。

 それぞれの職業が振り分けられているようだが。

 極論、三人とも【近接】タイプを選ぶ超攻撃型のパーティを編成することもできるのだ。


 まぁ、何はともあれ。

 自身の選択は、カノン様達の選んだ職業を見てから判断することになるだろう。


 私は隣にいるカノン様の様子を盗み見るように。

 横目でチラっと彼女の様子を観察してみる。


 すると、彼女は目の前に展開されたゲームウィンドウを見つめながら。

 「むぅ……」と唸っている様子。


 ……悩みを見せているようだが。

 正直、彼女が選ぶ職業は確認せずとも既に分かっていた。


 なぜなら、ここにある職業選択ウィンドウの中には、彼女が大好きだという【サンダーちゃん】の顔を写した項目も存在していたからである。


 つまり、十中八九。

 彼女はサンダーちゃんを模した職業を選ぶはずだろう。


「ぽちっ!」


 しかし、意外にも意外。


 いざ、彼女が選んだのは……。

 全く別のキャラクター。

 

 なんと、【後衛】を生業とする。

 見たこともない、銃士のキャラクターだった。


「「……っ!?」」


 瞬間、カノン様の目の前に。

 そのキャラクターが原作で使用しているであろう『ハンドガン』が顕現。


「わぁー! かっこいいー!」


 ……まさか。

 操作を誤ってしまった……?


 いや、今の眼と指の動きは。

 間違いなく、自らの意思によるモノ。


 一体、どういうことなのだろうか?


 すると、私と同じ疑問を持ったのか。

 反対側にいた華様が、私の代わりに首を傾げ始める。


「あれ? カノンちゃん、本当にそれで良かったの? ……ここに、サンダーちゃんとおんなじ職業のやつもあったみたいだけど……」


「うんっ! きょうはね、ホンモノのサンダーちゃんいるからっ! カノン、べつのにするの〜!」


 サンダーちゃんの格好をする私を見つめながら。

 にぱーっと無邪気に笑うカノン様。


「ねっ!? サンダーちゃん、ねっ!?」


 そして、そんな彼女を見た瞬間。

 思わず、私はその場で「えっ!?」と大きな声をあげてしまったようだ。


 ……まさか。

 本気で私のことをサンダーちゃんだと思い込んでいるのでしょうか?


 しかしそうなると、必然的に。

 『それじゃあ、メイドのアメリアはどこに消えた』問題に直面することになりますが……?


 ……。

 

 いえ、詮索するのはやめておきましょう。

 ただでさえ、羞恥に晒されて精神がすり減っている状態です。

 これ以上は私のメンタルが持ちませんわ。

 

 私は、無理な笑顔を作りながらも。

 震える指で、渋々とサンダーちゃんのアイコンをタップして、彼女の長剣を入手。


 そして、そんな私たちを確認した上で。

 最後に残った華様も……。


「それなら、私は余った【補助】系の僧侶キャラクターにしてみようかな? ここに初心者向けって書いてあるし!」


 ウィンドウの横に小さく書いてある説明書きを読みながら、ゲームサイドがおススメする初心者向けの【補助】キャラを選択したのであった。


 そして、華様が目の前に召喚された『杖』を握ったところで。

 丁度、ブリーフィングタイムは終了。


 そうこうしている内に。

 試合開始までのカウントダウンがスタートする。


〈試合開始まで、十秒前……〉


 すると、緊張した面持ちの華様が。

 味方である私に、この様な提案をしてきた。


「どうしましょうか? 私達は全員、初心者ですし……。まずは軽く、自陣で操作確認でもしてみませんか?」


 そんな彼女の提案を聞いた私も。

 すかさず、対面側に小さく見えている……。

 西側の敵拠点へと視線を送ってみる。


 ……確か、あの遠くに見える反対側の拠点が。

 対戦相手達のいる敵拠点ですわよね?


 一応、ここからかなり距離がありますし……。

 コチラから前線を上げない限り。

 すぐに鉢合わせることはないでしょう。


 それを踏まえた上で。

 私も、彼女の提案に同意を示した。


「そうですわね。私達もコレが初陣となる訳ですし、ここで少し操作確認でもしておきましょうか」


 ……そして、とうとう。

 試合開始のブザーが。

 

 月面ステージの全体を包み込むように鳴り響く。


「さて、参りましょうか」


 加えて、開幕したと同時に。

 私は手元にある適当なボタンを、一度だけ短く押してみることにした。


 すると、その瞬間──


「──っ!?」


 なんと、自身の身体が勝手に動き。

 何もない目の前の虚空に向かって……。


 長剣を用いた。

 華麗な3段攻撃を繰り出したのである。


 ……不思議な感覚だ。


 例えるなら、ボタンを押した直後の数秒間だけ。

 何者かに、自身の身体を乗っ取られているかのようだ。


 確認の為に。

 何度か同じボタンを繰り返し押してみたところ。

 先程と寸分違わぬ軌道とモーションで、全く同じ攻撃が繰り出される模様。


「な、なるほど……。操作自体はワンボタン式で非常に簡単のようですわね。一度の入力だけで、ある程度の技が勝手に繰り出される仕組みのようですわ」


 コントロールスティックの位置と組み合わせて。

 ニュートラル攻撃、上段攻撃、下段攻撃。

 ……と、バリエーションが複数存在するものの。


 基本的には、ボタンタップ一度で最後まである程度の連携を出し切ってくれるという、非常に初心者にも優しい操作難易度となっているらしい。


 それを見ていた華様も。

 同じように。

 杖をブンブンと振り下ろす三段攻撃を開始。


「わっ、本当だ! 一回押しただけで、簡単に連続攻撃が出せる!」 


 そして、そんな風に私と華様は。

 暫く、自陣である本拠点から離れることもなく。

 回避、ガードといった、様々な操作を試していると……。


 操作に慣れてきた華様が。

 私に笑顔を見せてきた。


「なんだか思ったよりも、ずっと簡単ですね! これなら、私やカノンちゃんでも問題なく戦えるかも!」


 ただ、調べていくにつれて。

 徐々に判明していく出来事もある。


 そして、それは……。

 私の顔に曇りを見せるのには十分であった。


 そう、この操作確認の段階で早くも。

 私は、このゲームの真理に気づき始めたのだ。


「……なるほど。だから『協力型格闘ゲーム』というジャンル名なのですか……、上手く考えたモノですわね」


「え? どういうことですか……?」


 私は、操作確認の手を止めつつ。

 自らの考えを華様にも共有することに。


 まずは、攻撃面について。


「確かに、技を繰り出すのは非常に簡単ですが……。その代わりに、個々で放てる攻撃の速度や判定はかなり抑えめに設計されているんですよ」


 次に、防御面について。


「反面、ガードの発生や回避ステップの長さといった防衛に関する動作が、攻撃に比べて遥かに優秀な性能をしております。……この様子だと、動向を見られてる状態の相手に攻撃を当てることは、極めて困難となるやもしれません」


「……えーっと?」


 しかし、その二つを聞いてもなお。

 ポカーンとした顔を見せる華様。

 

 ……というわけで。

 要点だけをピックアップして、再度。

 自身の見解を分かり易く述べることに。


「要するに、このゲームは『一人の力だけでは、攻撃が当てられないように出来てる』ということですわ。 多勢に無勢が基本戦法であり、相手の体力を奪うには、仲間同士の協力と連携が必要不可欠だということです」


「……な、なるほど! どれだけ一人が上手くても、絶対に一人の力じゃ勝てないように出来てるんですねっ! ……あっ! だから、協力型格闘ゲームなんだっ!?」


 そして、ようやく全てを理解しきったのか。


 華様は、意気込みを見せるかのように。

 顔の前に、小さく握り拳を作成。


 加えて、そのまま流れるように。

 背後にいるであろう、カノン様の方へクルッと体を半回転させた。


「よーし、カノンちゃん! みんなで力を合わせて、一緒に頑張ろうね! ……って、あれ?」


 ……が、しかし。

 そこにカノン様の姿は無い。


「あの、アメリアさん……。カノンちゃん、知りませんか?」


「あら? さっきまで、そこにいらしたハズですが……」


 私もキョロキョロと自陣を見渡してみたが。

 そもそも、私たちの立っている自陣には。

 私と華様の姿以外の人間がいない様子。


 ……。


 なんでしょう。

 とてつもなく、嫌な予感がしますわ……。


 すると、その瞬間。


〈────っ!!!〉


 私達のすぐ、隣に。

 天から差す、一筋の光が出現。


 柱だ……。


「わわっ!? びっくりした!? なんですか、この光っ!?」


「は、離れてください! もしかすると、敵の攻撃かもしれませんわっ!!」


 唐突な出来事に対して。

 思わず、急いで警戒態勢をとる私達。


 加えて、その天上から差す光の柱に紛れて。

 『何者か』が上空から舞い降りてきたことに気がつく。


 目を凝らしてみると。

 それは、『一人の小さな女の子』であったらしい。


「アメリアさん! 見て下さい! 上に誰かいますよ!?」


 そして、その小さな女の子は。

 ふよふよと浮遊しながら……。


 何やら、真下にいる私達に向かって。

 ブンブンと手を振ってきた模様。


 ……間違いない。


 アレは……──



『──あっ! あめりあ、はなー! おーいっ!』



 そう、その人物とは……。


 敬愛する我が主。

 カノン様であったのだ。


「えーーっ!? カ、カノンちゃん!? 何っ、その技っ!? すごっ!!??」


「驚きましたわ……! まさか、この一瞬であそこまでキャラを使いこなすだなんて……!!」


 そう、私達が目を離した隙に。

 いつの間にか、彼女は……。


 空を自在に飛翔できるという。

 素晴らしい能力を身につけていたのだ。

 

 ……まさか、彼女の中にある秘めし才能とは。

 【格闘ゲーム】だったのでしょうか……?


 正直、少し意外ではありますが……。

 この際、全くもって構いませんわ!


 今の時代は。

 ゲームだって立派な競技であり、プロゲーマーという職業が世界で認知されているくらいですもの!


 特に問題はありません!


 そうと決まれば……。

 今日から早速、カノン様のためにも格闘ゲームを中心とした環境を導入しなければ……!


 そして。

 そんな風に。

 私と華様が笑顔で、彼女のいる上空方面を見つめていると……。


 ふと、彼女とは別方向にある中央付近の空に。

 四角形の電光ボードのようなモノが浮遊していたことに気がつく。


「……ん?」


 よく見ると。

 それは、この対戦の戦況に関する情報を事細かく示したボード──『戦況表』であったようだ。


 加えて、そこには『残り対戦時間』や『チームで共有する残機ストック数』などの情報が、両チームの陣営から見えるように表示されていた模様。


「……ん?」


 そして、私は。

 そんな戦況表を目にした瞬間。


 思わず、二度見……。


 いや、三度見してしまうこととなる。


 ……そう、このゲームは。

 先に『チームで保有する三つのストック』を全て奪った方のチームが勝利するのだ。


 つまり、最初の持ちストックは。

 両チームとも公平に三つずつあるはず……。


 しかし、何度見直しても。

 何故か、開幕早々。

 私達のチームだけ、残り残機ストックが三つから二つへと減少していたのである。


 私は、それを呆然と見つめていると。

 次第に、天から舞い降りしカノン様が自陣の上に着陸。


 すると、華様と二人で。

 以下のような会話を繰り広げ始めるのであった。


「いいなぁー! 私も飛びたいなぁー! ……ねぇねぇ、どうやったら飛べるの!?」


「えっとねー、あっちにいったらとべるよ〜!」


「へー、そうなんだっ! 向こうはどんな感じになってるのかな?」

 

「なんかねー、ひとがいたっ! さんにんくらいっ!」


「……えっ?」


 そこで、ようやく。

 華様も気がついたらしい。


 カノン様は自らの力で空を飛んだのではなく。

 ゲームの仕様上、やむ終えず。

 『空に飛ばされていた』ということに……。


 冷や汗混じりに。

 恐る恐る、敵陣の方を指さす華様。


「……もしかして、カノンちゃん。私達が話している間に、一人で敵陣に特攻してきた?」


「へっ!? あれ、てきなの!?」


 そう、カノン様は。

 私達が操作確認をしている短い時間の間に。

 あわや、敵陣へとお散歩感覚の正面突破。

 

 一体三という状況を作り出してしまったせいで、瞬く間に自身のライフを削り切られたのか……。

 早くも、チームのストックを一つ消費して。

 自陣へと戻されてしまったらしい。


 結果、私達のチームは。

 残り残機、二つ。


 早い話。

 マイナスからのスタートである。


「……ど、どうしましょうか。確か、あと二回チームの誰かがやられた時点で負けなんですよね?」


「まぁ、仕方ありませんわ。目を離した私が悪いですし……。今のは私の使う予定だった残機ということで手を打ちましょう」


 そして、私がそう口にしながら。

 仕切り直そうとする……。


 まさに、その時だった──



〈──いたぞ! こっちだ!〉



 なんと、自陣の入り口付近に。

 突如、一人の槍を持った男が現れたのだ。


「っ!?」


 おそらく、話し込んでいる間に。

 前線を捜索していた敵の一人に見つかってしまったのだろう。


 加えて、槍の男が放った声を察知したのか。

 遅れて、二人目のバズーカ砲を携えた敵も駆けつけてくる。


「わわっ!? 自陣に攻め込まれちゃいましたよ!?」


「そのようですわね! しかし、敵はまだ二人だけですわ! 落ち着いて対処すれば問題ありませんっ!」


 ……とはいえ。

 頼れそうな華様も、格闘ゲームには苦手意識を持っている様子。


 ここは私から積極的に動いて。

 攻撃の起点を作るしかないだろう。


 幸い、私は前衛を得意とする。

 【近接】タイプの職業。


 ある程度、敵と距離を詰めても。

 多少くらいなら耐えられるはずだ。


 そう判断した私は、槍の男を狙って。

 一直線のダッシュを開始。


 すると、いち早く反応した槍の男が。

 そんな私を迎撃しようと、前方に広範囲の薙ぎ払い攻撃を繰り出してきた。


〈ふん! また、一人で特攻してくる気か? 甘いんだっての!〉


 ……が、私は。

 本当に敵の前に素早く移動をしただけ。


 特に何もすることなく。

 直前で、冷静にガードボタンを入力して攻撃を弾き返してみせる。


〈はっ!? ジャストガード!? 気をつけろ! この近接の女、普通に上手いぞ! アイツから潰せ!〉


 すると、指揮を取る槍の男の叫びにより。

 背後に控えていた【後衛】のバズーカ砲を持った男が、私に銃口を向けてきた。


 とりあえず、狙い通り。

 私にヘイト〈敵意〉を向けさせることに成功したらしい。


 ……しかし、先程も口にしたが。

 このゲームは、多勢に無勢が基本戦術となる格闘ゲームだ。

 

 いくら、私が最善を尽くしたところで。

 足止めは時間の問題となるだろう。


 故に、鍵を握るのは。

 仲間たちの助けなのである。


「まずい、アメリアさんがピンチだ! カノンちゃん、一緒に助けてあげよう!」


「わかったっ!」


 背後から、かすかに聞こえる……。

 聞き慣れた二つの声。


 ……間違いない。

 この声は、華様とカノン様のモノだ。


 交戦中なので、目視での確認は出来ないが。

 どうやら、一体二の状況になっている私に。

 二人が加勢に入ろうとしてくれているらしい。


 つまり、形勢逆転。

 三体二の状況が作れるという訳である。


 まさに、今の彼女達は私にとって。

 希望の援軍。


 ……ふふっ。

 たかだかゲームとはいえ。

 負けるつもりは微塵もありませんの。


 初心者だから、幼い子が仲間にいるから。

 そんなものは只の言い訳にしかなりませんわ。


 さぁ、一気に片をつけて……──



「──あめりあー! いま、いくからねー!」


「うんっ! カノンちゃん、どこにいくのかな!?」 


 ──……。


 ……前言撤回。


 ヤバイですね。

 普通に負けるかもしれませんわ、コレ。

 

 会話から察するに。

 カノン様は、どこか全く別のところへ消えていった様子……。

 

「ダメだ、ここで私がカノンちゃんを追いかけたら、アメリアさんが一人になっちゃう! わ、私がやらないと!」


 ただ、不幸中の幸い。


 どうやら、冷静な判断を見せた華様だけでも。

 私の元へ駆けつけようとしてくれているらしい。


 なので、私は防御体制を崩さず。

 そのまま背中側にいるであろう華様に号令を。


「華様! 必殺技のスペシャルスキルをお使い下さい! 攻撃ボタンの上にあるボタンです!」


「わ、わかりました! えーいっ!!」


 敵の【後衛】が持つバズーカから放たれる大砲を回避ステップで避けつつ、私がそう叫ぶと。


 華様は私の指示通り。

 すぐに、自身が持つ【補助】魔法の必殺技。

 電撃魔法陣を、前衛にいる槍の男に向かって展開してくれたようだ。


「あっ!? 外しちゃった!?」


 しかし、華様の狙いは大きく外れ。

 槍の男の少し隣側のズレた位置に、魔法陣が完成してしまうこととなる。


〈へっ! どこ狙ってやがんだよ!〉


「いえいえ、上出来ですわ……っ!!」


 ……が、私は。

 それに落胆を示すこともなく。

 すぐさま頭で戦法の軌道修正。


「せいっ!」


 槍の男の真横に体を入れて。

 即座に、自分ごと魔法陣へ押し込んで見せた。


 すると、槍の男の全身を這うように。

 ビリビリと凄まじい雷が駆け巡る。


〈ぐおぉっ!? ……あばばばばばっ!?〉


 そう、私はキャラクター選択をする際に。

 サンダーちゃんだけでなく、他にいる全てのキャラクターの特徴や必殺技を素早く暗記していたのだ。


 ……確か、私の記憶が正しければ。

 彼女の必殺技は。

 敵を五秒間もの間、行動不能にするという拘束技であったはず。


 すなわち、暫くの間は。

 ライフル銃を持った後衛の男と……。

 私と華様の、二体一という状況……!


〈や、やべぇ!?〉


 というわけで……、私は間髪入れず。

 拘束中の槍の男を置き去りにして。

 まずは、その後ろ側にいた。

 【後衛】の敵へと狙いを定めた。


 距離を詰めるように潜り込み……。

 そのまま、得意間合からの連撃を。


「せいっ!!!」


 すると、体力ゲージを全て失ってしまった【後衛】のバズーカを持った男は。


 徐々に光の粒子となって。

 次第にその場から完全に消えてゆくのであった。


 そして、私の活躍を見ていた背後の華様も。

 ぴょんぴょんと跳ねて喜びを見せている。


「や、やったー! アメリアさん、すごーい!!」


 ……だが、その一瞬の隙が。

 戦場では命取り。


「華様、危ない!?」


「へっ……?」


 痺れている槍の男が。

 雷に包まれている最中でもそれを見逃さなかったのか。


 自身の拘束が切れた瞬間に。

 華様に向かって、槍による連撃を繰り出してしまったのだ。


〈オラァァ!!〉


「きゃぁーー!!?」


「華様っ! ……くっ!!」


 無論。

 前後で敵に囲まれている状況でそんなことをすれば、残った私に背中を晒すことは言うまでもない。


 私は、難なく。

 後隙を晒した槍の男の強力な一撃をお見舞いして、残りの体力を削り切ることに成功する。


 ……ただ、槍の男が消えた。

 その背中の向こう側には。


 もう、華様の姿はなかった……。


 どうやら、彼女も同じく。

 体力を削り切られてしまったのだろう。


「くっ……。そういうことですか! 今の的確な判断、相手は間違いなく経験者ですわね……!」


 おそらく、先ほどの槍の男が放った今の攻撃は……。

 限りなく、捨て身に近い攻撃。


 囲まれている状況での突破は難しいと迅速に判断したのか。

 操作が覚束ない様子の華様だけを狙い、道連れにするプランへと変更されてしまったのである。


 その場に一人だけ残った私は。

 苦々しい顔で、近くにある自陣まで戻ると。

 そこには、光の柱から自陣に再召喚されている華様の姿が……。


「すいません……、普通にやられちゃったみたいです」


 申し訳なさそうな顔で地面に着地する華様に対し、私は笑顔で出迎える。


「仕方ありませんわ。……おそらく、補助キャラは回復や罠などの強力なスキルが使用できることと引き換えに、体力ゲージを最弱レベルにまで引き落とされているのでしょうね。 補助キャラ同士の戦いならともかく、それ以外の職業との交戦なら、例え一対一でも厳しいモノになるかと」


「な、なるほど! だから、すぐにやられちゃったのかぁ……」


 一瞬、残念そうな顔を見せた華様であったが。

 空を見上げながら、すぐに気持ちを切り替える。


「でも! これで戦況は五分五分になりましたよね! この調子なら、初陣での初勝利も夢じゃないかもです!」


 華様の言う通り。

 これで、残る残機は両チーム一つずつとなった。


 つまり、次に誰かがやられた瞬間。

 その時点で、ゲームセットとなる。


「ええ。ここからは、先にダウンを奪った方が勝者となります。じっくりと作戦を立てて、確実に勝ちを狙いに行きましょうか」


「……よーし! 次こそ役に立つぞー! アメリアさん、まずは何をすればいいですか!」


 いよいよ。

 この戦いも、クライマックス。


 ……ただ、その前に。

 私達には、やるべきことが一つだけあった。


 そう、それは──



「……とりあえず、消えたカノン様を探しましょうか」


「ですよねっ!!!」



 ──任侠映画に出てくる鉄砲玉の如く。

 どこかへ突撃してしまった、もう一人の小さきチームメイト。


 ……行方知らずの。

 カノン様を捜索することである。



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