第8話 運のいい奴

 ――ボカーン!


 弾に貫かれた消火器は、勢いよく爆発して、銀行内に白煙が舞い散った。


「カケル! 人質確保だ!」

「ケホッケホッ! そう言われましてもね!」


 そう文句を言いながらも、白馬は、白が充満した銀行の中に必死に突っ込む。


「い、いてぇー……。クソっ……。足がやられた……」


 すかさず俺は、人質の側で、痛そうにうずくまっている犯人に詰め寄る。


「お前? オーパーツは、持ってるか?」

「はぁ……? そんな高価な物持ってたら……、こんな事してねぇよ……」

「そうか……」


 そこで俺は、すんなり犯人に銃口を向ける。


「ち、ちょ――」


 ――カチャ……。


 だが、残念ながら俺の拳銃は弾切れだった。


「ついてねぇー、さっきので弾切れか……」


 犯人があまりの事に下半身をじんわり濡らす。

 それも仕方ない。

 なぜなら運が無ければ、死んでいたかもしれないのだから。


「運のいい奴だぜ」

「た、助――」


 ――ゴガン!


 しかし、そのまま俺は、拳銃を持った右手で、犯人の顔を思いっきりぶん殴ったのだ。


 「俺に出逢って、死なずに済んだんだからな」

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