11月28日
「別に病んでるわけじゃない。ただ、ときどき、ものすごく寂しくなるんだよね。そういうのってわかる?」
「わかると思う」
「でも彼氏がほしいわけでもない。いろいろめんどくさいし、まあ、そもそもできないし」
「なるほど」
「だから、この前友達とも話してたんだけど、都合のいい男の子がほしいだけかも」
「そうなんだ」
「結局ね」
エアコンが効いた車内にはオルタナティブ・ロックが流れていた。彼女の選曲だった。
「こういうのを聴きながら運転していると、ちょっと変な気分というか、危ない気分になって、いい感じなんだよね」
「そうなんだ」
「ならない?」
「聴きながら運転したことないからわからないなあ」
「今度してみて、おすすめ」
その夜、僕は素直に誘いに乗り、お酒を飲みに行くべきだったと思う。そして成り行きというものに身を任せるべきだったと思う。長い人生の中で、何度も思い出しては指でそっとなぞりたくなるような後悔はいくつもあるわけじゃない。
「それじゃあ、今日はありがとう、楽しかったよ」
「こちらこそ、また、元気でね」
「なにそれ、もう会えないみたいじゃん」
「いや、ただの口癖なんだ」
「そう、じゃあ、元気でね」
それから彼女には会っていない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます