11月27日
「ようこそお越しくださいました、先生。こちら、私が責任をもって案内させていただきます。この度は、先生の圧倒的な知識と頭脳をもちまして、少しでも助言をいただければ幸いです。
すでにご存知かと思いますが、当施設は国家最高機密機関であり、超人の選抜と育成を行っております。その基本理念は、大生物学者チャールズ・ダーウィンに遡る、自然選択であります。先生のことですから、いまさら詳しい解説は不要でしょう。具体的な作業といたしましては、集められた候補者たちをそれぞれのタスクグループに分けて、報酬と懲罰による選択圧をかけていきます。その内容は多岐にわたります。たとえば、食事や睡眠の有無、各種拷問器具による肉体的苦痛、また、寝たきりのグループでは脳に直接電極を刺して電気刺激を与えることもあります。このような選択圧の豊富さは当施設の大きな特徴だと言えましょう。
手前味噌ではありますが、ここでいくつか特筆すべき結果をご紹介します。箱の中身を透視、コイントスの結果を予知、他人の心象を読解。いずれもここ二年間のあいだに、当施設で得られたものです。詳しいデータはそちらの資料にございますので、ぜひご覧ください。一回きりの偶然ではなく、何度も何度もタスクを成功させています。というのも、一人以外の全員が選択圧によって淘汰されるまで実験を継続するしぶとさを、我々職員一同、胸に刻み込んでおります。どうでしょう。たった一人の生き残りたち。少しは目の輝きがちがうように思えますが、私の気のせいでしょうか。
すみません、話がそれました。それでは、私からは以上ですが、何かご不明な点はございますか?」
「少し個人的なことを聞いてもいいかね?」
「ええ、かまいません」
「君は迷惑メールはよく受け取る?」
「ええと、迷惑メールですか?」
「そう。競馬の三連単の組み合わせとか、宝くじの一等の当せん番号とか、その手のものを買わないかというような迷惑メール。だいたい、本物だという証明に、過去回の正しい結果を期日前に投稿した記録が添付されていたりする」
「いや、まったくないですね」
「そうだろうね」
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