7月4日

 旅行が好きだという同級生と知り合った。僕も旅行が好きだった。

 「まあ、現実逃避みたいなものだよ」と彼は言った。

 「現実逃避」

 「そう。世界の何もかもが嫌になってしまったときに、ふらっと旅に出て、それでまたふらっと帰ってくる。そんな感じ。まあ、普通の人はあんまりしないみたいだけどね」

 「なるほど」

 「変な人だねってよく言われるんだよ。別にいいけどね。ほら、普通はさ、旅行って楽しいものじゃん、それが現実逃避っていうのが特殊なんだろうね。俺にとってはそうとしか思えないけど。そういえば君は現実逃避とかするの?」

 「うーん、ときどき」

 「え、どんなことするの?」

 「ゲームとか」

 「ゲーム? マジか。それはさすがに現実逃避だわ。でも部屋にこもってゲームするより、旅に出たほうが楽しいぞ」

 「世界の何もかもが嫌になってしまったときに?」

 「そう。この世界には絶望ばかりだよ。みんなそうは思わないみたいだけどね」

 だという同級生と知り合った。僕はになったことはない。

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