6月19日

 試験が得意な友人にアドバイスをもらったことがある。彼は弁護士や税理士などいくつもの免許を持っていて、学校での評定はS以外をもらったことがないという。そのような事柄に関しては、彼の右に出るものはいない。

 「どうすればテストでいい点数が取れるの? つまり、学校の定期考査や、資格の能力審査や、その他もろもろのことだけれど」

 「作問者と対話するのさ」

 「対話?」

 「そう、対話。彼らの声を聞き、彼らが求めるものを返答する。それだけのことだ」

 「待って、君はそんな声を耳で聞くことができるのか?」

 「まさか。しかし音を受け取ることは必ずしも空気の振動を前提とはしない」

 「そういうものなのか」

 「ある意味、ではね」

 結局のところ、彼の助言は絵に描いた餅ほどにも役に立たなかった。

 人には人のやり方がある。これは今でも僕の座右の銘である。

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