第38話小さな引き金

 変身したスダチの姿はニホントカゲの様な骨格をしている。 脚は鱗で覆われ、 それ以外は毛で覆われている。 頭部は柴犬となっており、 前脚は犬の様な手をしているが爪が鋭い。 両腕にはミノカサゴの鰭を蝙蝠の羽の様な形状をした翼が付いており、 そのうえ、 翼の縁は刀の様に鋭い。 しかし、 蜥蜴の様に地面を爬行するタイプなのでグライダーの様に滑空する事でしか空を飛べない。 皮膚、 体毛の色は白色で、 目玉は赤色である。 全長約14m。


 濃い霧の中、 冒険者達にはスダチの影しか見えていないが、 小動物の様に怯えていた。


「おいおい嘘だろ……」


 1人の冒険者がそう言った刹那、 スダチの尾による薙ぎ払いをくらい、 その冒険者の頭が弾け飛ぶ。


「そんな……聞いていな……」


 短髪の女の冒険者がそう呟くと、 スダチが頭から噛みつき、 ボリボリと音を立てながら食べる。 食べ終えるとその場で耳をつんざく咆哮を上げる。


「まじか……!?」


 その場に居た者は全員、 耳を塞ぐ。 同時に、 霧が晴れ、 スダチの姿が露わになる。


「おいおい嘘だろ……都市伝説じゃなかったのか……」


 ローブを纏った冒険者が怯えながらそう言うと、 ケレヴが冒険者全員に向かって「逃げて!」と叫ぶ。 すると、 8人の冒険者が逃げ始めた。 しかし、 10人の冒険者はスダチに立ち向かうも、 あっけなく爪で切り裂かれ、 手で叩き潰される。 逃げた冒険者は酒井とガリウムにより、 首を刎ねられ斬殺される。


「終わった……」


 ケレヴがそう呟くと、 酒井がケレヴを取り押さえる。 それと同時に、 スダチは姿を元に戻す。


「私は……ローバロ王朝のケレヴ……国王の命令でここを攻めたが……もう時間が……」


 ケレヴはその場で黒い血液を口から吐き出す。


「酒井! 離れろ!!」


 スダチがそう言うと、 酒井はバックステップで後ろに下がる。 その刹那、 ケレヴの上半身が爆発。 上半身が跡形も無くなくなり、 墨のような体液が流れ出る。まるで、 コップから零れた水の様に。


「えっ……噓でしょ」


 酒井が唖然とした表情を浮かべる。


「とりあえず本部に戻るぞ! 確かローバロ王朝だっけ?」


 スダチは2人にそう聞く。


「ローバロ王朝です」


「ローバロ王朝です」


 酒井、 ガリウムの順に返答していった。


「ローバロ王朝です」


「ローバロ王朝です」


「ローバロ王朝です」


「誰か止めて!!」


 スダチがそう叫ぶ。


「凄く嫌な予感がする……」


 酒井がボソッと呟く。 この後、 ローバロ王朝の本軍が関雷雨とぶつかる。

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