第37話油断禁物

 ―16時40分 まだ明るいが寒くなってきた。―


 関雷雨改め、 アビスの本部にはアラレとジョーカーが赤い袋を机に置いていた。 袋にはと書かれていた。


「紅羽ちゃん胡桃食べる? 」


 ジョーカーはそう言いながら袋から胡桃を取り出す。


「あっせっかくなのでいただきます」


 フェザーがそう言うと、 ジョーカーは手刀で胡桃を割る。


「身潰れていませんよね? 」


 フェザーは胡桃の身を探し、 見つけると口に運ぶ。


「割ってもいいですか? 」


 フェザーがそう聞くと、 ジョーカーは袋から胡桃を取り出し、 フェザーに渡す。 すると、 フェザーは左手で胡桃を軽く握り潰し、 胡桃の身だけ綺麗に取り出し、 口に運ぶ。


「掃除、 手伝ってくださいよ」


「いいよ~」


 ジョーカーとフェザーが奥から小箒と塵取りを持って来て、 胡桃の破片を回収してゴミ箱に捨てた。 ところで、 他のメンバーは今、 何をしているのだろうか。


「ちょっと酒井君、 あなたやめなさい」


 大蛇をココアとガラナが必死に取り押さえている。 酒井は大蛇が採取した、 大量のコガネグモが入った虫籠を持っている。


「風太…やっちゃいなさい」


 レモンが酒井にそう言うと、 酒井は戸惑う。


「ホントに逃がしていいの? 」


「お前、 これ食う事になるんだぞ!! 」


 レモンがそう言うと、 酒井は蜘蛛を全部逃がした。


「よくやった風太! 」


 ルフナが酒井を褒めると酒井は調子に乗る。


「ふぅ~やったぜ! 」


「おい酒井 風太、 お前後で覚えてろ」


 大蛇は怒りを露にする。 すると、 酒井は啞然とした表情を浮かべる。


「え? 噓でしょ? 」


 酒井が小声でそう言う。


「嘘じゃないわよ、 てか、 さっきから額がピリピリするのよ」


 大蛇がそう言いながら額を触れると、 ココアが偉そうな態度をとる。


「実はね、 アンタの額にキスしたペコ! 」


「だから何よ」


「唇にカプサイシンを塗ってたペコ! 」


 ココアが大笑いした直後、 急に俯き、 唇を手で覆った。


「あっ、 ヤベっ。 唇ピリピリしてきた」


「ざまあ味噌漬け」


 大蛇が失笑しながらそう言った。


 一方その頃、 青龍は今日の仕事が終わったため、 豪邸のソファーに寝転んでいる。


「お兄ちゃん抱っこして~」


 エメラルドがはしゃぎながら青龍に近づく。


「えーエメちゃんいくつですか? 」


 青龍がそう聞くと、 エメラルドは指で3と表す。


「嘘つけ…お前4才だろ」


「アハハ…fuck!!! 」


 エメラルドはそう言うと、 中指を立てる。


「ごめんごめん! 10歳でしたね」


 青龍はそう言いながらエメラルドを抱きかかえる。 エメラルドは頬を膨らまし、 ポコポコと青龍の胸を叩く。


「わかったわかった! 」


 青龍はそう言うと、 エメラルドの頭を優しく撫でる。その頃、 ケレヴが50名の冒険者を引き連れ、 村に訪れた。


「あーあの無能の言う事聞かずにパルチザン側についていればよかった…」


 ケレヴは頭を抱えながら自分の行いを悔いている。


「んじゃ俺たちは暴れさせて貰いますぜ! 」


 一人の冒険者がそう言うと、 他の冒険者も暴れ始めた。


「おい! 止めろ! 」


 ケレヴは止めるも冒険者達は建築物、 商品の破壊を行った。 その近辺に居た兵士が冒険者達を止めようとするが、 悉く斬殺されてしまう。


「まずい…戦争になってしまう…」


 ケレヴは震えながらその場に蹲る。


「こんな村すぐに…」


 鎧を着た男がそう言った瞬間、 男は何者かに斬られた。


「なっ…何だ! 」


 別の冒険者がそう言った瞬間、 忍者刀を持ったカスミがどこからともなく現れ、 その冒険者の首を斬り落とす。


「てめーら全員酒のつまみにしてやらぁ! 」


 カスミが冒険者9名を斬殺する。


「きさま!…」


 女の冒険者がそう叫ぶと後ろから、 酒井が転移して携帯している剣でその女の心臓を貫く。


「先輩遅―い」


 カスミがそう言うと、 酒井がカスミの方を見る。


「遅れたぐらいいいじゃん! 」


 酒井がそう言った瞬間、 5人の冒険者が斬りかかる。 その刹那、 酒井が斬りかかった5人の首を斬り落とした。


「待って、 凄く斬れる」


 酒井が携帯している剣は、 プッシュダガーの様な形状をした打刀と同等の長さの剣である。 尚、 剣の切れ味がいい為、 スッと刃が入る。


「おーい! 何してるの? 」


 水の入った瓢箪を持ったスダチが二人に話しかける。 それと同時に後ろから、 トマホークを携帯したフルプレートの冒険者10人がスダチに襲い掛かる。 次の瞬間、 スダチは瓢箪を転移させると同時に打刀二本を手元に転移する。 次の刹那、 スダチは目に見えぬスピードで抜刀。 冒険者10人の首を刎ねる。


「かくれんぼしよう! 」


『白霧』


 スダチが深呼吸をする。 すると、 辺り一帯が白い霧に覆われ、 ほとんど見えない状態となる。 しかし、 使用者のスダチには敵の位置がわかるため6人の耳を削ぎ落とし、 首を刎ねた。


「雑魚斬ってもつまんない! 飽きた! 」


 スダチはそう言うと、 刀と鞘を転移する。


「見よ! 雑魚共、 これが余の真の姿なり! フェーズワン」


 スダチの足元に黒色の魔法陣が現れ、 勢い良く赤い液体が噴き出し姿を変える。 その姿は前回と同じ姿ではなく、 異なる姿をしていた。


 残り20名

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