第35話周辺国の今後

 ―15時30分 晴れ 少し風が吹き始めた。―


 麒麟が青龍、 玄武、 智和を会議室に呼び、 座って話し合いを行っているが青龍だけ寒そうな態度を取る。


「寒い暖房付けて! 」


 青龍は口を上着の内側で覆い、 くしゃみをする。


「風邪ひいた?」


 玄武が青龍にそう聞く。


「いや、 寒いのが苦手なだけだから」


 青龍は返答すると席を立つ。


「エメラルド抱き枕にしてたもんなお前」


 麒麟が腕を組む。


「いいじゃん! 俺のなんだから」


「シスコン変態卿め! 」


 玄武がしれっと呟く。


「誰がシスコン変態卿だよ! 」


 青龍が玄武にツッコミを入れる。


「早速だけど本題に入るぞ」


 麒麟がそう言うと二人は静まる。


「これを見てくれ」


 麒麟がそう言い、 3人に資料を渡す。資料には場所と机や椅子などの配置の事だけが書かれていた。


「どうしてこれだけ? 」


 青龍は麒麟にそう聞く。


「他の分野は女子にやらせる」


 麒麟がそう返答する。


「そういうことか」


 智和は何かを察したようだ。


「じゃあパパっと終わらせてくるわ」


 青龍が部屋を出ようとした瞬間、 麒麟が止める。


「追加注文で叔父貴から弁償代回収してきて」


 麒麟がそう言うと青龍はグットサインをして会議室から退出する。


「お前らは先に始めといて」


 麒麟がそう言うと2人は会議室から退出する。


「YATIRUさんPCだして」


「無理です」


 それから数分後、 青龍がエメラルドを連れて会議室に入って来た。


「悪い、 請求できなかった」


 青龍はしょんぼりとした態度でそう言う。


「どして?」


「エメちゃんが……」


「エメちゃん何したの?」


「ドア壊した」


 エメラルドからは反省の色が全く見られなかった。


「何しとんねん」


「大変申し訳ありませんでした!」


 青龍が深く頭を下げ謝罪する。


「まぁ俺が召喚した建築物、 全部再生するから大丈夫なんだけどね!」


「「なんやそれ」」


 2人は呆れた表情を浮かべる。


「蛇之~竜馬いる?」


 白虎が会議室に入って来た。


「いるよ~」


「これ使いにくいから返すね」


 白虎は麒麟にモーニングスターを返す。


「いや返さなくていいよ」


『神の一手』


 麒麟はモーニングスターにポンと触れると、 モーニングスターはナックルナイフへと姿を変える。 その、 光景を見た3人は首を傾げる。


「これだったら使えるだろ」


「ど……どうも」


 白虎は困惑しながら麒麟からナックルナイフを受けて取り、 会議室から出ていく。


「当分創作系の魔法使えなくなったからよろしく~」


 麒麟は青龍にそう伝える。 これをきっかけに彼らは生活が少し不便になる。


「いいよー生活が少し不便になるけど想像力鍛えられるから、 我慢する」


 青龍は気楽そうな態度を取る。


「設計図作ればよかったな……」


 麒麟は自身の頭をかきむしる。


「No problem! お兄ちゃん達頭いいもん! 」


 エメラルドが嬉しそうにそう言う。


「そう言う問題じゃないのよ……」


 麒麟は冷や汗をかく。


「まぁ何とかなるだろう! んじゃ俺は仕事に行ってくる」


 青龍はその場から立ち上がる。


「お兄ちゃん抱っこ」


 エメラルドがそう言うと青龍はエメラルドを抱き上げる。


「エメちゃんも重たくなりましたねぇ!」


 青龍がそう言うとエメラルドが青龍の頬を軽く殴る。


「はいはい行きますよ」


 青龍はエメラルドを抱えて会議室を出ていく。 それはさておき、 トラウト王国が滅んだ事に各国は国内で会議を開いていた。 先ずはトラウト王国の西側にある国、 ローバロ王朝では緊迫した会議が見られた。


「許せん! 友好国であるトラウト王国を……」


 ローバロ王国の王、 ジーバスは歯ぎしりしながら何度も机を叩く。 この王の特徴は、 中年太りで白ひげを生やし赤い服を着ている。


「まぁまぁ陛下、 トラウトが滅んだくらいでお怒りにならずに……」


 白いミトラを被って緑色のキャソックを着服した、 ロン毛で細目の男がシーバスを慰める。 この男の名はフェモラータと言い、 この国の司祭であり格闘家だ。


「陛下も援軍を送ればよかったのでは……」


 フェモラータと同じく、 緑色のキャソックを着た筋骨隆々の褐色禿げの男が腕を組みながらそう言う。この男の名前はバッファローと言い戦士長である。


「と言うか今は動かない方がいいのでは? 内戦の事もありますしそれに、 北のトリスカからも連絡が途絶えていますし……それに……捕らえているが脱走されたら何かと厄介ですし……」


 緑色の修道女の服を着た茶髪ポニーテールの女が偉そうに王にそう言う。彼女はケレヴと言う名前で、 女子修道院を設立した院長であり、 この国の冒険者ギルドの設立者でもある。


「もういい! ケレヴ、 今すぐ奴らをぶち殺してこい!」


 シーバスはケレヴにそう命令する。


「正気ですか! 今そのような事をすれば国内が!」


 ケレヴは必死に反発するもその声は届かなかった。


「うるさい! 今すぐ行かねば教会の修道女を皆殺しにするぞ!」


 シーバスがそう言うとケレヴは悔しそうな顔をしてその場を去った。


「バッファロー! 国内にいるパルチザンを皆殺しにして来い!」


 シーバスがそう言うとバッファローはその場から去る。


「フェモラータ、 お前はマリーナとシャムナフトラに伝えろ……この国が滅んだら今すぐ例の村を攻め落とせと……」


 この発言がきっかけで、後に世界を震撼させる事件を引き起こしてしまう。 さて、 ローバロ王朝の同盟国であるシャムナフトラでは今から会議を行うつもりだ。 フードの無い灰色のローブを着服した白髪の老人が部屋に入る。


「皆揃ったか?」


 老人が入った部屋は大広間となっており、 そこには約6人の若いアジア人の男女が座っていた。 男女比は、 男4人で女が2人。


 左からの順に説明しよう。 茶髪で短髪の青い西洋風の鎧を着服した男が居る。 彼の名前は西川 庸人ようとと言う。 性格は熱血で独特の倫理観を持っている。


 2人目は黒髪、 ウニの様なスパイクヘアーで灰色のパーカーと黒いズボンを着服した男で、 名前は由良ゆら あきらと言う。性格は好戦的で傲慢。身長は庸人と同じだ。


 3人目は薄い茶髪のマッシュでオレンジ色のパーカーと茶色いズボンを着服した男で、 名前は高橋 恭太きょうたと言う。性格は大人しそうに見えるが実は残忍。身長は二人と同じ。


 4人目は濃い茶髪のショートボブで服装は小豆色のテーラードと白いズボンを着服している女。名前は香春かわら 姫奈ひなと言う。 性格はわがままで自己中心。身長は三人よりも低い。


 5人目は黒髪、 ストレートロングでシアン色のチャイナ風トップスと黒いスカートとパンストを着服しており、 靴は黒色のスニーカーを着用した女。 名前は柯 鬼娃キエ、 台湾人だが口調が出雲弁である。 性格は普段は臆病で優しい、 平和主義者。 しかし、 スイッチが入ると手が付けられない。


 鬼娃以外は日本から転生して来た人間である。


「揃ってねーよ、 ジジイ」


 亮がやる気のない態度を見せる。


「誰と誰だ?」


 老人は亮にそう聞く。


「山崎 詠美と新海 鮎奈ですよ……」


 恭太が亮の代わりに老人にそう返答する。


「そうか……お前達には引き続き異世界人を見つけ出し、 勧誘してくれ」


「何であたしたちが勧誘しないといけないのよ! あんたたちが勝手にやればいいのに! 」


 姫奈は老人に文句を言うも老人は全く見向きもしない。


「俺には向いてなさそうだ!」


 庸人は老人にそう言う。


「そうか……なら庸人、 お前は怪物退治に向かってくれ……ちょうど大型のイノシシが我が領内で暴れているそうだ」


「どこでですか!?」


「城門に案内人を呼んでおいたからそいつに聞いてくれ……」


 老人がそう言うと庸人は勢いよく立ち上がり、 部屋を出る。


「恭太、 亮、 お前達には引き続き領内にいる亜人の駆除を頼みたい」


 老人がそう言うと2人は嬉しそうに部屋を出て行った。


「あの……駆除はやりすぎじゃなえかと……」


 鬼娃はおどおどしながら老人にそう言う。


「なぜだ? 」


「だってあえつら何もしちょらんじゃん!」


 鬼娃が必死に説得する。 しかし、 老人の耳には届かず、 そのうえ老人は鬼娃の頬を叩く。


「ここでは私たちの意見が最優先だ、 口答えするな」


「あはは……そうですか……」


 頬を叩かれた鬼娃はそう言った瞬間、 老人を睨む。


(こえつ理不尽すぎー!)


 鬼娃はそう思いながら唇を噛みしめる。


「姫奈、 引き続きこいつと一緒に紛れ込んだ異世界人の勧誘を頼む」


 老人はそう言うと部屋から出ていく。


「あーめんどくさ、 行くよ! 」


 姫奈がそう言うと鬼娃も部屋を出る。 その頃、 白鯨の惨劇を目の当たりにしたボーイッシュの女騎士が1枚の写真を手に持ち、 城から海を眺めていた。


「おーい純子!」


 金髪ロングの女騎士が彼女を呼ぶと、 彼女は振り返る。 そう、彼女こそやごーが警戒していた、 葛籠菜 純子だ。


「あら幸子、 どうしたの?」


 純子が声をかける。 金髪ロングの方は桑原 幸子と言い、 純子の幼馴染だ。


「またセルゲイの奴、 単独行動してるよ」


 幸子は退屈そうにそう言うも純子の方は軽く微笑んでいた。


「分身体でしょ? 本体は皇都ここにいるわ」


「それはそうと……あんた本気なの? 孤児院建てるの」


 幸子は純子にそう聞くと、 純子は頷く。


「いいじゃん! 子供が好きなんだから」


「相変わらずだね……まぁそう言うところが好きなんだけど……」


 幸子は呆れた態度を取る。


「でも本音はあの子たちにまた会えると思ったから……」


 純子は写真を眺める。 そこには、 白髪の少女、 緑髪の少年、 黒髪の少年、 金髪の少年、 赤髪の少女と一緒に写る純子の姿だった。 この写真に写っている子供は青龍達に似ていた。


「「失礼します」」


 2人の女が純子を訪ねた。 1人は黒髪ショートボブ、 シアンブルーの目を持もち、 目の下にはシアンブルーの細い涙痕の様な跡がある。 身長は169cm。もう1人は、 ミドルポニーテールで髪と目は透き通った水色、 身長は176cm。2人共襟に黒字のXが描かれた白地で留め具が黒色のファスナーのロングコートを羽織っている。 ズボンと靴も白色だが、 紐以外は黒色。 首に銀のペンダントを掛けており、 腰に剣を拵えている。


「あら、 アンとレイチェルじゃない? どうしたの?」


 幸子は振り向き2人に話しかける。 黒髪の方がアンで水色の髪レイチェルと言う。


「例の件につきまして、お話がございます」


 レイチェルは2人に何かを話し始めた。 さて、シャムナフトラの上側にある国、 カナヒリ共和国と言う群島国家では、 緑髪のショートカットの赤目で黄緑色の羽織と着流しを着た青年がススキ畑の中から青天を見上げていた。


「兄ぃこっちの世界に来てるかな~」


 青年はそう呟くと、 胸に赤色でXが描かれたサーコートと白いマントを着服した白髪の低身長の男エルフとその部下と思わしきに男2人が青い盾と剣を持ち、 青年に近寄る。


「おい、 ここから出ていけ!」


 青年が3人に警告するも、 一歩も引かないためススキ畑の中から大量のキリギリスがセルゲイの部下2名に襲い掛かり無力化する。


「お前が青柳 藪螽蟖……いや……臨界の藪螽蟖!」

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