第30話前触れ

 1月2日 午前9時00分 爽やかな風が落ち着いてきた。 パストとシルバーが喫茶店でコーヒーブレイクをしている。


「久しぶりにコーヒー飲んだね! 」


 シルバーが嬉しそうな表情を浮かべる。


「ね! 」


 パストはそう言うとコーヒーを飲む。


「ここの通貨って金貨とか? 」


「いや札だった」


 パストがそう言うとシルバーが驚いた表情を浮かべる。


「どうやって交換したの? 」


「忘れちゃった」


 パストが照れてペロッと舌を出すとシルバーは呆れた表情を浮かべる。


「そうだった過去ちゃん天然だったね」


「えへへ」


 その後二人は料金を払いカフェを出た。 その頃青龍は眠そうな表情でベッドから起き上がる。 起き上がると谷間にチョコクッキーを挟んだエメラルドがいた。


「食べる?」


 エメラルドが青龍にそう聞くと青龍はエメラルドの胸に飛び込みクッキーを食べる。 エメラルドは青龍の頭を優しく撫でる。


「お兄ちゃん! お姉ちゃん! 麒麟さんが呼んでいるよ!」


 灰色のパーカーとジーンズを着服しているルキナが部屋に入って来た。


「着替えてくださ~い」


 黒色のダウンと紺色のショートパンツを着服しているルナがしれっと入って来た。


「シャワー浴びてからでいい?」


 エメラルドがそう言うとルナが頷く。 エメラルドは浴室に入る。 青龍はしれっと洗面所に向かい歯磨きを終わらせ寝室に戻る。 青龍がその場で着替えようとすると、


「ここで脱がないでください!」


 ルナが青龍に注意をする。


「わかったわかった」


 青龍が苦笑いしながらそう言うとルナがダークネイビー色のスーツを持ってくる。


「こっちの方着てください」


 ルナが青龍にスーツを渡すと青龍はぱぱっと着替える。 ルキナが黒色のシルクハットと黒い革手袋を持って来て青龍に渡した。 青龍は革手袋を穿く。


「行くか! 」


 青龍はトップハットをかっこよく被り、 会議室にルナとルキナを連れて向かった。


「ルナちゃん! 後で一緒にご飯食べに行こ! 」


 ルキナがそう言うとルナが頷く。


「俺もいっていい? 」


 青龍がそう言うとルナが不満そうな顔をする。


「いいよ!」


 ルキナが嬉しそうにそう言うとルナが心配そうな表情を浮かべる。


「後でエメも誘っていい? 」


「いいですけど」


 ルナがため息をつく。 そうこうしているうちに三人は会議室の入り口に到着する。


「にぃには扉を開けて最後に入ってください」


 ルナがそう言うと青龍はめんどくさそうに扉を開けとルナとルキナが嬉しそうに入る。


(にぃに?)


 青龍は変な違和感を持ちながら会議室に入る。


「おーい竜馬~朝早くからどうした? 」


 青龍が眠そうな表情で部屋に入ると、 ベージュ色のダウンとデニムショートパンツとタイツを着服していてボンネットを外しており、 ロングストレートのグラスが優雅に温かい紅茶を飲んでいる


「お前誰? 」


 青龍がグラスにそう聞くとグラスは嫌そうな顔をする。


「なんだぁテメェ」


「蛇之です」


 青龍は真顔でそう言う。


「違うそうじゃない」


「青龍です」


 青龍がそう言うとグラスはゴミを見るような目で青龍を見つめる。


「お前があの…」


 グラスがそう言うとベージュ色の可愛らしいワンピースを着服したエメラルドが入って来た。


「ねえお兄ちゃん」


 エメラルドが青龍に青龍の刀を渡すとポコポコと叩く。 青龍は顔を赤らめてエメラルドの頭を撫でるとエメラルドがしれっと抱き着いてきた。


「お待た~」


 竜馬が入り口から入って来た。


「呼び出した張本人が遅れてくるな! 」


 青龍が怒った表情でそう言うとルナが気に食わない顔をした。


「遅刻ぐらいいいじゃないですか」


 ルナは腕を組んだ。


「まぁいいけど…要件は?」


 青龍が麒麟にそう聞くと麒麟は雲龍柳の葉を青龍に渡した。


「トラウト王国に行って条約結んで来い…向こうが応じる気が無いのであれば即座に王妃の首を刎ねろ」


 麒麟がそう言うとグラスは驚いた表情を浮かべる。


「な~んだ簡単な事じゃん朝飯食ったら行ってくる」


 青龍はそう言うと刀に雲龍柳の葉をあてる。 すると漆が塗られた木製のTステッキへと姿を変えた。


「仕込み刀か?」


 青龍は鞘を軽く捻って抜刀する。 刀身はフランベルジュの様になっているが剃刀以上の切れ味を持っていて溝には漆の樹液が流れるようになっている。 青龍は静かに納刀した。


「漆と雲龍柳を混ぜたらこうなった。 栽培方法は普通の雲龍柳と同じだが漆の毒性を持っている。 苗木は植物に詳しいお前にやるからじっくり育ててくれ」


 麒麟は慎重そうな発言をする。


「青龍とやらできれば…できれば穏便に済ませてくれ…」


 グラスは悲しい表情を浮かべる。


「珍しいな、 何でもかんでも資本主義国家にしようとする国が」


 麒麟が真顔でそう言うと、 グラスが麒麟を睨みつける。


「あんま調子乗ってると、 この村石器時代に戻すぞ」


「冗談でもやめてくれ、 噂だけど、 おまえら三回も母国にでっかいの落としたらしいから」


 青龍は冷や汗をかく。


「落としたらしいじゃねぇ


「アウトやん」


 麒麟がツッコミを入れる。


「うるせえ! そこの奴よりまだマシだろ! 」


 グラスはエメラルドに指を指す。


「エメちゃんはどこ出身ですか?」


 青龍はエメラルドにそう聞く。


「ブリティッシュ! 」


 エメラルド笑顔で返答する。


「なんだブリカスか」


「shut up! 」


 エメラルドは激怒する。


「二人は? 」


 グラスはルキナとルナにそう聞く。


「ドイチュラント! 」


「フランゼース」


「二回も負けた国と首都陥落した国だ! 」


 グラスは笑いながらそう言う。


「「shut up!」」


 ルキナとルナがキレる。


「そろそろ行くからまた今度な~」


 青龍がそう言うとエメラルドと一緒に会議室を出る。


「本当にいいのか?」


 麒麟がグラスにそう聞くとグラスは頷いた。


「お前ら蛇之追わなくていいの? 」


 麒麟がそう言うと二人は青龍を追いかけた。 その後二人は青龍に追いつき四人で朝食をとった。 朝食はシンプルな洋食で珈琲もついていた。 四人は黙々と食事をとるが青龍はあまり喉に飯が通らない様子であった。 食事を終えると二人は青龍を笑顔で送るが、 エメラルドが青龍にキスをし幸せそうな表情で青龍を見送った。


「行ってきます…」


 青龍はそう言うと帽子を深くかぶり、 歩きでトラウト王国に向かった。 向かう際、 戦死者の死体がゴロゴロと転がり、 蠅が湧き、 鴉が啄んでいた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る