第19話Apex Predator Overrun

「たく…何だったんだあれは?」


 一人の兵士がボソッと呟く。


「見ろ! 山頂が…山頂が!」


 もう一人の兵士が怯えながら山頂に指を指した。 何故ならさっきルキナが使った弾丸が爆破し、 山頂が融解し始めたからだ。 そのうえ、 重度の放射能汚染が広がっている。


「陛下は何とか…」


 さらにもう一人の兵士は王の安否を願うが時すでに遅し、 双眼鏡を持った兵士が麒麟の方に目をかざすと固唾を飲みこんだ。 彼が見た物は首がもぎ取られた王の生首を持ち上げている麒麟の姿だった。 生首から血が滴っていた。


「なんてことだ…王が…王がー!!」


 双眼鏡を持っている兵士が泣き崩れ兜を捕り、 頭を掻きむしった。


「おい見ろ! 前線の兵たちが突撃しだしたぞ!」


 一人の兵士が指を指しながら平地の方に指を指すと同時に青龍が急降下して突撃してきて指を指していた兵士と激突して兵士の体がバラバラになり飛散した。


「きさま何者だ!」


 別の兵士が青龍の背後から襲い掛かったがエメラルドにワイヤーでサイコロ状にカットされてしまった。


「ホント凄いなエメは…」


 青龍は少し驚く。


「ありがとう」


 エメラルドは微笑む。


「敵襲! 掛かれ!」


 他の兵士と違う服装の兵士がそう言うと大勢の兵士が二人に飛び掛かる。


「行くぞエメ!」


 青龍は大鎌を転移した。


「しょうがないなぁ~」


 青龍とエメラルドは自身の武器を使い襲い掛かった兵士たちを目にも止まらぬ速さで次々にばらばらにしていった。 殺戮後、 欠損死体が辺り一面に転がる。


「きさまら…いったい…」


 違う服装の兵士が腰を抜かすと同時に二人は兵士を見つめると同時に白虎が急降下し、 激突。 その兵士の体をバラバラにした。


「遅かったな」


 青龍が白虎に声をかける。


「ハイハイ…」


 白虎はつまらなそうに言ってエメラルドに後ろから抱き着く。


「俺は右の方に行くから二人は左の方に行ってくれ…」


 青龍が右の方に行こうとするとエメラルドが青龍に抱き着いた。


「また今度な!」


 青龍はエメラルドの頭を撫でるとエメラルドは頷く。


「蛇之…」


 白虎が青龍に声をかけ戦闘態勢に入る。


「猫さん、 お兄ちゃん…私に任せて! 」


 エメラルドは青龍から手を外すと覚悟を決めた様な表情になる。


「わかった…終わったら何か買ってやるよ!」


 青龍はそう言うと右の方に向かった。


「エメちゃんまた後でね!」


 白虎はエメラルドを抱きしめ、 額にキスをする。


「猫さん…相変わらず優しいですね! 」


 エメラルドは白虎の耳元で囁く。


「お…女の子だけだからね!」


 白虎は顔を赤らめて左の方に向かって行った。


「たく…何の騒ぎだ?」


 短髪の冒険者の様な服を着ている女がテントから出てきた。


(何で起きなかったんだろ?)


 エメラルドは首を傾げる。


「お前誰だ?」


 女はエメラルドにそう聞くとエメラルドは虚ろな表情で笑う。


「I won't tell you, idiot.」


『神社巡り:蛇窪』


 エメラルドは特殊な亜空間から金色の七支刀の様な物を引き寄せ構える。


「なに言ってるかわかんねぇが面白れぇ小娘だな!」


 女がそう言うとエメラルドはほくそ笑む。 二人は同時に攻撃を開始する。 場面は青龍の方に変わり青龍が物陰に隠れて右の方にあるキャンプを襲撃しようとしている。 キャンプにはテントが五つある。テントの奥からジャージを着た金髪の不良青年がやって来る。


「おいそこにいるんだろ?」


 青年は何処かを見つめながらそう言うと、 青龍が両手を上げた状態でそこから出た。


「バレてた?」


 青龍は挑発するようにそう返答した。


「ふん…バレバレだ…」


 青年は青龍を睨みつける。


「へーどうするの?」


 青龍は再度挑発する様な態度をとる。


「ここは狭いからやりたくない…ついてこい」


 青年は青龍を広い場所に案内する。


「じゃあ死ね」


 青年が青龍に急に殴りかかったが避けられてしまった。


「危な!」


 青龍は大鎌で青年を切り裂こうとしたが腕で弾き返されてしまった。


(硬っ体内に金属でも入れてんのか?)


 青龍は首を傾げる。


「やるな…」


 青年は口笛を吹く。


「お前本気じゃないだろ?」


「そうかよ…じゃあ本気で相手してやるよ…フェーズワン!」


 青年の足元に赤色の巨大な時計の様な魔法陣が出現して勢いよく赤い液体が吹き出し青年の姿を三つの頭を持つ犬に変えた。 全長約17m。


「ファイル化しねーと本気出せねーのか!?」


 青龍が少し声を荒げると青年は青龍の上半身を引っ掻き大きな傷をつけたが傷と服が瞬時に再生した。


(面白くなってきたじゃねーか…)


 青龍はクスッと笑うとケルベロスに飛び掛かった。 場面が白虎の方に変わる。


「全く…無駄な体力使わせて…」


 白虎は尾骨を変形させ白い虎の尻尾をフリフリさせながらテントを探している。 そうこうしているうちにテントを見つけた。


「見つけた…」


 白虎は興奮して頭頂部から白い虎の耳が生えニヤリと笑った。


『悪逆非道』


 白虎の腕の周りに様々な金属が集まって青白いレーザーが目にも止まらぬ速さで研磨しごつく巨大な籠手になった。 その手甲の指先には鋭い鉤爪がついている。 白虎はそのまま敵陣に突撃した。


「何者だ!」


 槍を持った兵士が白虎に挑んだが頭を殴られ脳震盪を起こし死んでしまった。


「敵襲! 敵襲!」


 一人の兵士が大声で叫ぶが白虎に喉を掻っ切られ死亡してしまった。 その後も白虎は兵士たちを殴り殺し続け最後の一人になるとぴたりとやめた。


「ここであなたを止めます」


 兜を被っていないが鎧をつけている女の冒険者が白虎に剣を向ける。


「手加減しないとダメそうね…」


 白虎は女を挑発する。 すると女は飛び掛かり白虎を真っ二つにしようとしたが白虎の右籠手がバラバラに崩れ落ちて中から大きい白い虎の腕が出てきて女の上半身を殴りつける。 すると女の上半身がパンッと言う破裂音とともに消えてしまった。 白虎はその場に泣き崩れた。


「ごめんね…綺麗に殺してあげなくて…」


 白虎は腕を元に戻す。 実は威力が高すぎて女の上半身が分子レベルに分解され飛散し、 肉眼では女の上半身が確認できない状態となっている。


(本当にごめんね…)


 白虎は泣きながら下半身を貪り食った。 場面がエメラルドの方に変わった。


「はぁ…はぁ…」


 エメラルドは疲弊しているような演技をして相手を油断させている。


「おいおいそんなもんか?」


 女はエメラルドを挑発する。


「ええ…」


 エメラルドは剣を置いて演技を続ける。


「へっ…お前の兄も今頃死んでるだろうな…」


 女が嘲笑うかの様にそう言うとエメラルドの表情が変わった。


「サブスキル…禁忌の箱パンドラボックス…」


 エメラルドの周りに暗紅色の雷が発生し辺りを焦がす。


「本気で遊んでやるよ…フェーズトゥー!」


 エメラルドの足元に青白い巨大な時計の様な魔法陣が出現し、 エメラルドの足元からガシャンという音とともに魔法陣に亀裂が入りそこから勢いよく赤い液体が吹き出しエメラルドを変身させた。 変身したエメラルドの姿は、 上半身はエメラルドの姿だが腕が六本あり服装が巫女服になっていて袖が三つある。 下半身は大蛇の姿をしており、 柄はアミメニシキヘビだが、 色は赤色。 全長約36m。


「Don't think you can die easily you motherfucker」


 エメラルドがそう言った次の瞬間、 目にも止まらぬ速さで女を殴り、 宙に浮かせ、 足を掴み勢いよく地面に叩きつけ女の顔を見つめる。 女の顔は皮膚がボロボロで頬の方には沢山の中くらいの穴が開いていて鼻血が鼻の中に溜まっていた。 エメラルドの声にもエコーがかかっておりテレパシーで伝える。


「まだ死んじゃダメだよ…」


 エメラルドは頬の穴をゆっくり広げていった。 女はあまりの痛さに絶叫する。


「もっと遊んであげるからね!」


 エメラルドは笑顔で女の頭を鷲掴み、 女の耳、 手の指をちまちまとちぎって女を投げ飛ばし、 自身はかなり高く跳び置いていた剣を引き寄せ手に取りそれを女に投げつけた。 投げつけた剣が女の下半身を真っ二つにする。 エメラルドは女に近づき持ち上げた。 持ち上げた際に女の大腸と肝臓がボトッと落ちて胃が垂れ下がっている。


「いただきます」


 エメラルドは女の頭を口の中に入れ、 蛇の様に丸呑みにした。


「普通に美味しい」


 エメラルドはその場で深呼吸をする。 場面が青龍の方に変わった。


 青龍は何度も何度も青年の攻撃をかわしている。


(クソ…埒が明かねぇ…あれを使うしかないのか…)


 青龍は苦戦しているようだ。


「しょせんそんなもんか」


 青年は青龍を挑発するが青龍はため息をつく。青年の声にもエコーがかかっておりテレパシーで伝える。


「はぁ…疲れるなぁ~」


 青龍は呆れた表情を浮かべる。


(やるしかねえ…)


 青龍は青年の攻撃をかわし態勢を整える。


「フェーズトゥー!」


 青龍の足元に紫色の巨大な時計の様な魔法陣が出現して勢いよく赤い液体が吹き出し青龍を変身させた。 変身した姿は全身青柳色のキングコブラに指が四本ある龍の手足と先端が尖っていて枝分かれした金色の角が生えていた。 全長38m。


「さて…どうしよっかな~」


 青龍は余裕そうな表情を見せる。 無論青龍の声にもエコーがかかっている。


「青龍…きさま何考えやがる…」


 青年は小声でそう言うと青龍を睨みつける。 青龍はくるりと振り返りキャンプの方を見つめた。


爆裂する劇毒オフィディオフォビア


 青龍はキャンプの方に球体型のブレスを三発放った。 ブレスは無色透明で粘性のある液体だった。 青年はテントの方に向かい一発目のブレスにわざと当たった。


「かかった!」


 青龍がそう言った瞬間、 青年に当たった瞬間、 液体が爆裂し火の粉が飛び散る。 幸いな事に青年は火傷傷で済んだが火の粉が別のブレスに当たり爆破。 テントに炎が燃え広がり中にいた人は皆外に出たが煙を吸って体が麻痺し、 バタバタと倒れて行った。


「なんだこれは…」


 青年が唖然としていると猛スピードで青龍が突撃してきて青年の真ん中の頭に噛みつき毒を流す。


「くっ…クソ…体が…」


 青年の体が動かない。 何故なら、 青龍が噛みついた際、 ドラゴントキシンSと言う名の強力な神経毒を体内に注入したからだ。 この毒は人間を数秒で死に至らしめ肉体を一瞬で腐敗し崩れる場合と意識だけはあるも、 体を動かす事は出来ない、 そのうえ肉体は腐敗しない。 しかし、 毒の持ち主あるいは、 死体に集まる虫に食われて死んでしまう。 データファイルの場合、 体が数分だけ麻痺し、 苦痛なく生命活動を停止させられる。 この毒はどんな毒耐性も貫通してしまうが青龍、 朱雀、 麒麟の血液が抗体として使える。 しかし、 青龍の血液を使用する場合は一度冷凍庫で凍らせ、 高温で解凍し、 コブラ科の蛇に血液を注入。 それから、八時間後に蛇から血液を採血。 こうして、 抗体が作れる。


「青龍…きさまぁ!!」


 青年は麻痺していて動けなった。 青龍は口を他の蛇とは違う動かし方をして丸のみにした。 丸のみした後、 青龍は姿を元に戻したが口から灰の様なものを吐き出しガイドストーンを摘出した。 青龍は姿を戻す際、 灰のような物が出てきた。


「不味っ! 食えた代物じゃない…」


 青龍は辛そうな態度をとる。


「どういう事だ…データファイルが食われて死ぬなんて聞いた事が無いぞ…」


 先ほどの戦いを物陰から見ていた女がいる。 その女の特徴は、 短髪で薄い金色の髪、 胸に赤色でXと描かれたサーコートと白いマントを着服していた。


(こいつらを殺さないと世界が終わ…ゲホゲホ…)


 女は解毒薬を一口で飲み、 剣を抜き青龍を背後から切り殺そうとしたが青龍が気づいてしまい攻撃をよけ髪の毛を掴まれそのまま持ち上げられる。


「悪い…死んでくれ…」


狩りをする竜ハンティングドラゴン


 青龍の腹が裂けハエトリソウの葉の様な口になり女を一瞬で捕食した。


「お兄ちゃん!」


 元の姿に戻ったエメラルドが走りながら青龍に飛びつく。


「あら思った以上に早いじゃない」


 奥の方から口元に血液がべっとりと付いた白虎がやって来た。


「そうでもないだろ。 てか煙吸って大丈夫?」


 青龍は二人にそう質問すると二人はグットサインをした。


「二人ともどうする?」


 エメラルドが二人にそう聞きながら魔法で炎を消化する。 消化後辺り一面にドロドロに溶けた焼死体が転がっていた。


「俺はやりたいことがあるからもう少しこの辺を見て帰るよ」


 青龍はそう言うとエメラルドにガイドストーンを渡す。


「じゃあ私たちは帰るね! 猫さん行こ!」


 エメラルドがそう言うと白虎は嬉しそうに頷いた。 二人は転移といいその場から瞬間移動をして立ち去った。


「さて行きますか」


 青龍は西の方へ向かった。

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