第10話赤翼の鷲

 エリスが青龍を病院に運んだ後、 袖無しの黄色い花柄のワンピースを着たルキナがやってきて、 重そうに青龍を担いで病院の一室に運んで、 靴を脱がせベッドに寝転がせた。


「あー疲れた!」


 ルキナは青龍が寝ている場所にダイブした。


「痛った!」


 青龍は目を覚ました。


「あれ!」


 ルキナは隣のカーテンがかかったベッドに指を指した。 青龍は立ち上がり、 カーテンを開けた。 そこには、 白虎がエメラルドに抱き着いていた。


「お兄ちゃんおかえり」


「ただいま~」


「エメちゃんおいで」


 青龍が両手を広げる


「ヤだ」


 エメラルドは白虎に抱き着いた。


「エメちゃんは甘えん坊でちゅね~」


 白虎はエメラルドの頭を撫でる。


「蛇之~起きた~」


 朱雀がしれっと入ってきた。


「あれ? 雀、 任務は終わったの?」


 白虎は首を傾げる。


「特に問題無かったから戻ってきた」


「竜馬に報告したの?」


 青龍が朱雀にそう聞くと、 朱雀は首を横に振る。


「雀ちゃん抱っこ」


 ルキナが朱雀にそう言うと、 朱雀はルキナを抱きかかえる。


「もう1回見に行ったら?」


「いいけど、 猫都連れて行くよ?」


 朱雀はルキナを下ろす。 それと同時に、白虎がエメラルドを青龍に渡す。


「どうぞどうぞ」


 青龍がそう言うと、 朱雀が白虎を抱き抱えて任務に向かう。


「行ってらっしゃーい!」


 ルキナは笑顔で手を振る。


「下りる」


 エメラルドが青龍から下り、 ルキナに後ろから抱き着く。


「ベッドに入りたい」


 ルキナが靴を脱ぎ、 青龍のベッドに入る。


「私も~」


 便乗するようにエメラルドが青龍のベッドに入り、 抱き着く。


「エメちゃんは可愛いね~」


 青龍はエメラルドを抱きしめ、 頭を撫でる。


「ねぇねぇお兄ちゃん!」


 ルキナが青龍の腕を引っ張る。


「どうしたの?」


「お兄ちゃんの昔話をして」


 ルキナが興味津々にそう聞くが、 青龍は困った表情を浮かべた。 なぜなら、 ルキナの言う昔話は青龍自身の過去の話だからだ。


「思いだしたくねえけどな~」


 青龍は渋々だが、 淡々と語りだした。


  ===


 俺は昔、 家族全員で五泊六日の旅行に行き、 商売の事を沢山学んだ。


「あい! お兄ィ! ベルトつけて! 」


 弟が俺に向かってそう言った。


「蛇之ちゃんとしなさい! 危ないでしょ!」


 俺の母が後ろを向いて軽く頭を叩いた。


「まあまあ……」


 俺の父は軽く笑った。


「はーい」


 俺はシートベルトをした。


「お兄ィ何食べたい?」


 弟が俺にそう聞いた、 俺はとっさに「蛇料理が食べたい!」と言ってみた。 するとみんな笑い出した。


「蛇之は変わってるな! お前が将来どんな人間になるか楽しみだ!」


 父は元気よくそう言うと大声で笑い出した。


「まあまあ」


 母はクスクスと笑った。


「あい! 僕そんなお兄ィを支えたい!」


 弟は嬉しそうにそう言うと俺も含めて全員笑い出した。 だがそんな幸せな時間も長くは続かなかった。


「ちょっと待て……あの車おかしいぞ……」


 父がそう言った瞬間、 俺たちが乗っている車がおかしな車にぶつかった。 とっさに俺はシートベルトを外した。 シートベルトを外した瞬間、 車は大爆発を起こし、 俺を外に吹き飛ばした。 俺は火傷と骨折と大量出血だけで済んだが弟達は中に残ったままだった。


「おい……噓だと言ってくれ……」


 俺はその場で気絶して、 気づいたら病院の中に入ってて寝ていた。


 その後俺は看護師に家族の安否を聞くと、 俺以外の家族は死んだとの事。


「向こうの車の運転手はどうですか? 」


 俺が看護師にそう質問すると、 「向こうの運転手も無くなった」と残念そうな表情で言った。


(あの世で反省してくれるといいな……)


 俺はそんな事を考えていた。 でも真実を知るまでは……


「あの事件もこの事件も俺がやったんだぜ! 」


 どこかからそんな声が聞こえた。 俺は声の主を探した。


「俺は偉いんだ! だから人を殺しても許される!」


 俺は声主を見つけ出した。 その男は不良みたいな感じな男で携帯電話で誰かに電話している。 俺はカッとなって近くにあったパイプ椅子を手に取り。


「このクズ野郎がああああ!」


 俺は大声で叫びながら、 クズ野郎を何度も何度も殴り続けて額から血を流させた。


「このガキ!」


 クズ野郎は俺を数発殴って出血させ痣を作った。 クズ野郎は疲れたのか攻撃を辞めた。 俺はその一瞬を狙いクズ野郎の首に噛みつく。

 

 幸いなことに俺の犬歯が鋭かったのでクズ野郎は叫びながら俺をはがそうとした。 俺は思いっきり顎に力を入れて、 クズ野郎の首を噛み千切り絶命させた。 絶命した後も、 俺は拳で何度も何度も殴り、 全身血まみれになりながら男の死体をめちゃくちゃにして、 辺りに赤黒い血液や細かい肉片をばら撒き、 血液がべっとりと付着した桃色の食道、 灰色の脳みそを無造作にぶちまけた。


「あの世で反省しろ! ゴミ屑が!!!」


 俺が踏みながら叫ぶ。 その光景を目撃した看護婦が俺を止めに来た。

 

 その後、 俺は指名手配犯となり病院を抜け出し人気の無い山奥に徒歩で向かった。 その際、 食料と水分が無かったので、 水は川から摂取した。 食料はそこら辺の生き物をかったっぱしから食いつくした。 何回か嘔吐下痢や呼吸困難に見舞われたが、 数分後には治まっていた。


「何で世界はこんなにも理不尽なんだ!!」


 俺は森の中で叫ぶと、 目のあたりが生暖かく感じ視界が塞がれ耳元で優しい声が聞こえた。俺はその場に立ち止まり。


「君は一体……」


 俺がそう言うと耳元から、「元気出してね」と優しい声が俺にそう囁く。 それと同時に俺は少し不信感を抱く。


「君は誰だ!」


 俺は大声でそう言うと、 クスッと笑う声が聞こえた。 その笑い声は幻聴なのかもわからなかった。


「生きてお願い!」


 その言葉が聞こえると同時に俺は全身の全身の力が抜け膝から崩れ落ちた。 しばらくして俺は起き上がった。


「そうだ俺はまだ……生きなくては……」


 俺は泣き崩れ、 再び起き上がった。


「どんなことがあっても絶対に生きのびてやる! 絶対にな!!!」


 俺はそう叫び、 拳を天に衝き上げた。 その日の天気は晴天だった。


 その後、俺はホームレスのたまり場に二日だけ居座り、 様々な事を学んだ。 ホームレス達の紹介であの孤児院に入った。 あの人達に恩を返したかったが返せなかったのが残念だった。


 ===


「思った以上に壮絶だったね……」


 ルキナの顔は青ざめていた。


「この世界では平和に暮らせるといいな~」


 青龍は深刻そうな顔をして、 上を凝視する。


「何とかなる」


 エメラルドが青龍の胸に耳を当てる。


「そうなるといいな……」


 青龍は眠そうな表情を浮かべる。


「休んだら?」


 青龍はエメラルドを抱きしめ再び眠りについた。


「お姉ちゃん痛くないの?」


 ルキナがエメラルドにそう聞く。 エメラルドは「全然」と言い、 目を閉じた。 それを見たルキナは青龍を抱きしめ、 眠りにつく。


 その頃、 朱雀と白虎が向かっている場所に関雷雨の服を着装している二人組が城壁を眺めていた。 1人は目の色が濃い紫色、 金髪ロングでヘアピンをしている女。二人目は目の色が赤色、 白髪ロングの女。


「任務で来たのはいいですけど……これ何ですか?」


 金髪の少女はそう言った。


「エゲレスの城壁かな? 」


 白髪の少女はジェスチャーをしながら説明をする。


「どこですかそれ?」


 金髪の少女は首を傾げ、 白髪の少女にそう聞いた。


「お前知らんのか? まぁいいあれをどうにかするぞ」


 白髪の少女が親指を立てて後ろを指す。 すると、 後ろから30名ほどの冒険者らしき人たちがやってきた。 白髪の少女は小声で「ファイル化しろ」と呟く。 その直後、 2人は小声で「フェーズワン」と呟いた。


「お前ら誰だ!」


 1人の男の冒険者が二人にそう聞いた瞬間、 2人はクスリがキマっているような表情で振り向いた。 次の瞬間、 二人の足元に魔方陣が出現した。 金髪の少女の方は赤色で白髪の少女の方は黒色の魔方陣が現れた。


(マズイ! )


 1人の男の冒険者が白髪の少女に飛びかかって襲いかかった瞬間、 急に空の色が赤くなり、 パソコンのメッセージボードの様なものが2つ浮かび上がった、 そのメッセージボードには、 「全てを無に帰す 」と書かれていて、 もう一つのメッセージボードの様なものには「此処は寒くなるよ」と書かれていた。


 魔法陣から勢いよく大量の赤い液体が噴出し、 冒険者の上半身を吹き飛ばした。 幸いな事に食道が上半身と下半身を繋いでいたが、 吹き飛ばされた冒険者は死んでしまった。


 2人は赤い液体を浴びて変身する、 静かに消えた。 変身した金髪の少女は二足歩行で、 顔は狐の顔をしており白い羊の毛が生えていた、 皮膚は溶岩の様に赤く輝いていた。全長約14m。 体高約6.5m。


 白髪の少女の方は水魚と言う深海魚みたいだったが、 胸鰭はミノカサゴの鰭がついていて、 背鰭はそのままだったが、 何故かミノカサゴの毒棘になっている。 尾鰭はそのままだが藍色の斑点がぽつぽつとついている。 先端が尖っていて枝分かれした金色の角が生えている。 全長 30m。


「せっ……関雷雨だ!」


 一人の冒険者がそう叫ぶと、 冒険者達は戦闘態勢に入った。 その光景を壁の上で見ていた中世のアサシン風の服装を着た兵士がニヤリと笑いながら見ていたが、 赤い色のオウギワシの翼を生やした朱雀に見つかった。


「はーい! 何しに来たのかな?」


 朱雀はアサシン風の服装を着た兵士にそう質問すると、 自分の腕をオウギワシの腕に変形させた。


「貴様! 何者だ!」


 男は焦りながら短刀を抜いた。 その時、 後ろから白虎が急に現れ、 男の身柄を押さえた。


「捕まえた!」


 白虎はそう言うと、 男に電流を流した。


「猫都どいて! 『天燕アマツバメ』!」


 朱雀はオレンジ色の燕のような形をした物を男に目掛けて突撃させてた。 すると男は叫びながら燃え始め、 少ししたら男は黒い油の様な物になった。 幸いにも骨だけ油の様な物にはならなかった。


「猫ちゃん! 怖かった!」


 朱雀は白虎に抱き着き、 頬にキスをした。


「ハイハイ」


 白虎は呆れたような表情をした。


 変形した二人は冒険者と戦っていた。


「関雷雨の……コットン……」


 一人の冒険者がそう言う。


「何で知ってるの教えて? 」


 変身した金髪の少女は冒険者にそう質問した。 変形した金髪の少女も口を使わずテレパシーでそう質問した。 青龍同様、 声にエコーがかかっていた。


「教えるわけが無いだろ! 」


 一人の冒険者がそう言って襲い掛かると他の十人の冒険者達も襲い掛かった。


「スダチちゃん! 」


 コットンがそう言うと、 変身した白髪の少女は泳ぐようにしてワラビの後ろに回った。


『悪寒の息』


 スダチは空色の霧状の息を薙ぎ払うように吐き冒険者を負傷させた。 負傷した者の中には発熱を発症した者もいる。


「やれ」


 スダチがそう言うと、 コットンはオレンジ色の炎の様な剣を出現させ、 それを手に取った。 スダチも口を使わずテレパシーで伝える。


「『白煌剣はくおうけんワタメイバー』!」


 コットンが持っている炎の様な剣はオレンジ色から白色に変わった。 白色に変わった瞬間、 剣のリーチが伸びた。 その白色の剣で薙ぎ払い、 負傷した冒険者達を一瞬で灰にした。


 それを見ていたハレンチな服装の冒険者が「フェーズワン」と呟いた。 すると、 足元に水色の魔方陣が現れ、 赤い液体が噴出、 冒険者はその液体を浴びて変身する。 変身した冒険者はミニレッキスと言うペットとして飼われている白兎みたいだった。


「スダチちゃんアレ!」


 コットンは白兎に指を指した。


「ちょうど欲しかった奴がいたからラッキー!」


 2人は白兎に目標を合わせた。


「私は強いぞ!」


 兎は咆哮を上げる。 次の瞬間、 青い炎を纏った朱雀が叫びながら出現。 目にも止まらぬ速さで突進。 兎の心臓を貫く。 その光景を目撃した冒険者達は固まっていた。


「『白のホワイト破滅ディストラクション』!」


 コットンはそう言うと、白色の剣を地面に突き刺し、 壁の反対側に白色の熱を地面を割りながら広範囲に広げ、 火山の様に噴火させた。 幸いにも朱雀はガイドストーンを持ったまま飛び去り、 その場に居る冒険者達は一瞬で蒸発。 無に帰した。 冒険者達を倒した後、 2人は姿を元に戻した。 戻す際、 2人の体から灰が煙の様に出てきた。 コットンは反動の影響か、 泡を吹きながら気絶した。 スダチの方は無事だった。


「手当してあげるついてきて」


 朱雀は降りてきて、 いつの間にか回収したガイドストーンと注射針の付いた注射器をスダチにのポケットに入れる。


「感謝する!」


 スダチはコットンを抱えながら、 朱雀についていく。

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