2-2 奮闘
ボクは、窓をそっと開けた。
冷たい夜風が窓から入り込んできた。
おじさんは、ツバサの部屋の窓に何かを取り付けるのに熱中していて、ボクの部屋の窓が開いたことに気づいていなかった。
ほんの少し手を伸ばせば、おじさんを突き落としてやっつけられる。
2階から落ちれば、大人のおじさんだってただでは済まないだろう。
怪我をして、骨だって折ってしまうに違いない。
だからボクは、おじさんを突き落とそうと手を伸ばした。
でも、おじさんを突き落とす前に、ボクは、気づいてしまった。
ツバサが見ていた。
薄く開けたカーテンの隙間から、ツバサがボクを見ていた。
ツバサは、おじさんに気づいていた。気づいて、震えていた。
目に涙を浮かべて、ツバサは、震えていた。
泣きかけているツバサに、ボクは、これ以上怖いものを見せるわけにいかなかった。
ボクがおじさんと喧嘩して大怪我をさせるところを、ツバサに見せるわけにいかなかった。
だからボクは、勇気を出して窓から飛び出し、大嫌いな奴を頼った。
部屋から飛び出してツバサの部屋の窓に迫ったボクを見とがめたカメラは、期待通りに、大きなサイレンを鳴らした。ボクがツバサと会うことを邪魔する大嫌いなサイレンだけど、このときだけは、頼もしかった。
おじさんは、サイレンの音にびっくりして、下の植木に落ちていった。
やりとげたボクは、ツバサの部屋の窓にぶら下がったままブイサインを出してツバサを安心させようとし、手を滑らせて落っこちた。
最後がちょっと締まらなかったけど、ボクは、ツバサを守った。
ほっぺたに枝が引っかかって血が出たけれど、名誉の負傷だと思うと、そんなに嫌じゃなかった。
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