2-1 満月
昼間にそんなことがあったせいか、その夜、ボクは、なかなか寝付けなかった。
そういえば、ニュースで、今夜は、特別な満月の夜だと言っていた。月がいつもより大きくて綺麗な日だそうだ。
その月を見てやろうと、ボクは、カーテンを開けた。
そして、ボクは、わが目を疑った。
月明かりが、窓の外に浮かぶツバサの顔を照らしていた。
一瞬、ツバサに会いたい気持ちが夢を見せているのかと思った。
そのくらい、その景色は、現実離れしていた。
でも、ボクは、気づいてしまった。
ツバサの顔の下についているのは、昼間に見たコートだった。
コートの中が作業着になっていたけれど、間違いなかった。ツバサの顔をしたそれは、昼間のおじさんだった。
なんのためにそうしているのかはわからないけれど、おじさんは、ツバサの顔写真を印刷したマスクをかぶっていた。
そして、おじさんが手をかけているのは、ツバサの部屋の窓だった。
ツバサが、危ない。
おじさんは、ボクの倍以上大きな大人の体をしていた。
そして、おじさんの手には、ハンマーのようなものが握られていた。
あのハンマーで殴られたら、ボクの頭は、スイカ割りのスイカみたいになってしまうに違いなかった。
怖くて声が出なかった。
助けを求めて、ボクは、ツバサのお父さんお母さんがつけたカメラの方を見た。
2階の四隅に取り付けられ、ツバサの窓の前を見張っているカメラだ。
家族以外の人が、ツバサの家に入れないよう見張っている凄いカメラだ。
でも、その凄いカメラは、ツバサのお父さんお母さんがつけたカメラは、おじさんを見とがめていなかった。
カメラは、ボクをツバサの部屋に入れないのに、ツバサの顔を使う怪しいおじさんをツバサの部屋に通そうとしていた。
やっぱり、カメラなんかにツバサを守れるわけがなかった。
だから、ボクが、おじさんをやっつけて、ツバサを守るしかなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます