第147話 番外編 大山のぶ代さんを偲んで
2024年10月11日、声優・俳優の大山のぶ代さんが老衰で90歳で亡くなられたことが報じられた。近年の大山さんは認知症を発症し、夫の砂田啓介氏も先立たれたため、老人ホームに入所されていらっしゃるという話は聞こえてきていた。最後まで看護の手を尽くされて看取られたのであれば、大往生ではないだろうか。
私は大山のぶ代さんたち、初代シンエイドラえもんの声優陣を見る機会が数回あった。
その一つが1990年代、劇場版ドラえもんの公開前日に毎年行われていた「大人だけのドラえもんオールナイト」である。池袋などの東宝映画館で行われ、過去の劇場版ドラえもんを数本と、今年公開の本編を先出しで上映するのだ。大人の藤子ファンが多数集まり、『ネオ・ユートピア』の会員も多数来るので、藤子ファンの交流の場ともなっていた。新作の上映が終わると、着ぐるみのドラえもんとメイン声優陣が壇上に上り、トークをするのが恒例となっていた。
昔のことなので毎回大山さんが来ていたかは覚えていないが、体力のある藤子ファンの中には、オールナイト開けで封切り初日の日劇東宝に向かい、声優陣の二度目の舞台挨拶を楽しむ猛者もいた。
私はもちろん大山ドラ世代だが、再放送していた『無敵超人ザンボット3』、アメリカアニメの『タコのロクちゃん』の吹き替え等、他の作品で大山さんの演技にも触れていた。
大人になり、CS等で昔の作品も見る機会があり、『のらくろ』『ハゼドン』『国松様のお通りだい』、『大岡越前』等のドラマ出演も視聴している。
大山さんの名優ぶりについては私が今更語るまでもない。
『無敵超人ザンボット3』が『スーパーロボット大戦S』で声つき参戦を検討された際、大山のぶ代さんにもオファーしたことを当時のプロデューサー、寺田貴信氏がXで語っていらっしゃった。しかし大山さんは辞退され、『ザンボット3』は音声なしで参戦した。
この経緯について、大山さんが『ザンボット3』を嫌っているのではないかという噂が一部で一人歩きし、寺田氏はそういった理由ではない、と何度か誤解を解こうと語っていらっしゃる。今回もその意図で発言されたのであろう。
後年、『ザンボット3』が『スーパーロボット大戦Z』シリーズに参戦した際は、大山さんの代役として中山千夏氏が勝平を演じた。『のらくろ』の孫が主人公であるアニメ『のらくろくん』の主人公を演じた縁ではないかと言われているが、理由は定かではない。
中山千夏も少年役の名優であり、アニメ最終回の再現シーンなど、魂のこもった演技をされていらっしゃって感銘した。
ともかく、この連載では触れなかった小原乃梨子さんをはじめ、増山江威子さん、三輪勝恵さんとレギュラー声優陣が次々と逝去され、今年は藤子アニメファンにとって一つの節目の年になってしまったな、とドラえもんのポケットのような半月を見上げながらしみじみ思った。
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