第114話 『クレギオン#2 イスフェルの地にて』その3

 『クレギオン#2 イスフェルの地にて』ではオフィシャルイベントが2回行われた。ゲーム中盤と、最終回後のファイナルイベントだ。それとは別に、地方プレイヤーとの交流のため、プライベートイベントの会場へ、近隣に住むマスターがゲストとして参加するという試みも行われた。

 ゲーム中盤のイベントでは、野尻抱介マスターのSF作家デビュー作となる『ヴェイスの盲点』のサイン会も行われた。『クレギオン』の世界を舞台にして書かれた本作は、その後シリーズ作品となる。私も本を持ってサイン会に参加し、野尻マスターに「めざせ反重力!」とメッセージを書いてもらった。


 部長として参加したファイナルイベントでは、自分のアクションがマスターに満足のいくものだったのかが気になり、直接野尻マスターに聞いたことが交流誌の原稿に残っている。


 もちろんプライベでの交流も盛んに行っていた。自キャラであるエサウとジオベールのリアクションでは描かれない出来事を、毎回「裏リプレイ」と称して小説(今風に言えばSS)に執筆し、親しいプレイヤーに配っていた。エサウの同居先である現地民プレイヤーも私への返事として小説を執筆し、親しく交流していた。

 彼にはエサウが部長立候補前後に迷っていた際、根気よく相談に乗ってもらった。自室に電話もなく、携帯電話も一般に普及していなかったため、彼との連絡は寮の一階にあった公衆電話からとっていた。明かりも消えた深夜のロビーで公衆電話の前に座った私は、泣きながら電話を掛けていた。今思えば彼も辛抱強くつきあってくれたものだ。私は彼ともっと親しくなりたいと思ったが、結局メイルゲームプレイヤーとしてのみの交流に終わった。

 ともかく、この一件で電話の必要性を痛感した私はNTTの電話加入権を購入し、自室に電話を引くことになった。


 当時交流していたプレイヤーでもう一人印象に残っているのが、論客系プレイヤーだった男性だ。彼は当時発売されたばかりの評論本、佐藤健志『ゴジラとヤマトとぼくらの民主主義』を私に勧めてきた。彼の熱に押されて私も本を購入し、新しい知見を得ることができた。彼はその後コンシューマーゲーム業界に入って有名ゲームを手がけるなど、大成することになる。


 交流していたプレイヤーがゲーム中に病死されたというのも初めての体験だった。ご家族からの手紙で訃報を知らされた私は、交流誌内で追悼ページを設けている。


 プライベには、少ないが女性プレイヤーもいた。私が交流していた女性は各地のプライベ会場に出没するというので「ワーパー(パワープレイヤーのこと)」と呼ばれていた。自キャラのアクションよりもプレイヤーとの交流が楽しいという感じで、メイルゲームプレイヤーにも様々なタイプがいることが感じられた。


 「クレギオン#2」の話はここで終わり、次回は遊演体のターンに入りたい。

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