第104話 『クレギオン』プライベートイベントの話

 メイルゲームのプライベートイベント、略してプライベについて今回は語りたい。

 『クレギオン』の情報誌には各地で行われるイベント情報を掲載するページがあった。会社が公式で行うイベントではないので、プライベートイベント、略してプライベと呼ばれていた。なお、会社が公式でイベントを行うときはオフィシャルイベント、略してオフイベである。

 プライベはリアクションが届いた後の週の土日にあわせ、公民館などを主催者が借りて行われるのが通例だった。部屋の予約を取った後、情報誌に載せるため会社に記事を送るのだ。

 プライベを開く目的は主にプレイヤー同士の情報交換だ。参加者は自分に届いたリアクションのコピーを持って行き、挨拶代わりに他のプレイヤーと交換する。プレイヤーの中には、入手したレアなリアクションを配る人もいた。

 プライベで出会ったキャラクター同士で、次回のアクションを検討するのも重要な目的だ。当時はインターネットも広まっておらず、プライベで直接顔をつきあわせて話すのは効率的だった。ここでグループを組み、作戦名を決めて「パスポート」に記入して共同作戦を行うことも多かった。

 メイルゲームのプレイヤーには、バイトなどで金があり比較的自由がきく大学生や、ラノベなどに親しんでいた20代社会人が多かった。メイルゲーム会社もTRPGの雑誌やラノベ雑誌、アニメ情報誌などに広告を出していたので、そういった雑誌の読者が多かった。

 東京はメイルゲームのプレイ人口も多く、公民館なども多かったので、同日に複数のプライベが開かれることが多く、行きやすい場所を選ぶことができた。

 このプライベで、私は初めて自分が共同アクションをしていたグループのリーダーと会った。彼は仕事等が忙しく、毎回来ることはなかったが、他のグループメンバーは地方に住んでいたので、プライベで打ち合わせた内容を持ち帰ってリーダーが各メンバーに作戦を告知するという段取りになった。

 公民館の会場は昼間のみの時間貸しがほとんどで、終了後も話し足りないプレイヤーは夕食を兼ねて居酒屋やファミレス、喫茶店等に流れることが多かった。大人数を収容できる店も多いのも東京の利点だった。私は寮の門限もあるので、早めに帰宅していた。

 次回は『クレギオン』本編後半にまつわる出来事を、私の動きを中心に話したい。

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