第103話 『クレギオン』コピー情報誌制作の話

 前回話が飛んでしまったが、ネットワークRPG『クレギオン 遙かなるアーケイディア』の話に戻ろう。

 引っ越してからも共同作戦のプレイヤーを始め、同じFブランチのプレイヤー数人と手紙の交流は続いていた。自分から出すというよりは、「今回同じリアクションに載ったので交流しましょう」という手紙で交流が始まるのがほとんどだ。手紙には自分が入手した他ブランチのコピーが添えられていることも多かった。こういった周辺情報を読み、自分の立ち位置や次回の行動を考えるのだ。

 プレイヤーの中には多数のプレイヤーと交流するため、コピー情報誌の体裁で手紙を送ってくる人がいた。各キャラクターへの返事、自キャラの作戦解説、個人の近況などをA4コピー二枚ほどにまとめるという能力は、同人誌作りに慣れていらっしゃる方のように見受けられた。

 この手紙で私が知ったのが、プレイヤーキャラで共同体を作ってプレイするというスタイルだった。家族という設定で同じ名字にする、マフィアファミリーや総合会社の社員など、同じ組織に所属している裏設定がある等、スタイルは様々だが、「家族のキャラクターから得た情報ですが」という前置きで他ブランチの情報が語られると臨場感が増すのは感じられた。後年私も他のメイルゲームで共同体プレイをすることになる。


 私は交流の手紙には全部返事していたため、結局30人ほどのプレイヤーと毎月交流することになった。全部手書きの返事を送るのはさすがに手間がかかりすぎるし、切手代も大変だ。そこで私が思いついたのが、郵便書簡(ミニレター) を使うことだった。

 郵便書簡は封書より安い料金で送れ、25グラム以内であれば中に紙片も入れられる。というわけで、ワープロで宛名を印刷して郵便書簡に貼り、縮小コピーしたリアクションと手紙を入れて送るのだ。リアクションが届くと、寮の近くのコンビニに行ってコピーをしまくるのが毎月の日課となった。


 全国のプレイヤーと交流するので、郵便物をできるだけ早く入手するのは大事なことだったが、私の住む寮では土曜日は管理人が休みだった。当時は土曜日も郵便配達があったので、待ちきれない私は、紐で縛られて受付に届けられた郵便物から、自分宛の郵便物を抜き出していた。エレベーターのない建物の5階に住んでいたため、郵便が届く頃を見計らって一階の応接室で待ち構えていたものだ。

 次回はプライベートイベント、略してプライベの話をしたい。

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