第102話 番外編 『VOICARION~スプーンの盾~』観劇感想
予告とは違うが、今回は日比谷のシアタークリエで上演されたプレミア音楽朗読劇『VOICARION~スプーンの盾~』を観劇した感想を語りたい。
『VOICARION(ヴォイサリオン)』とは公式サイトによると「VOICEとギリシャ神話に登場する天馬ARION(アレイオーン)を組み合わせた造語。」とのこと。藤沢文翁が手がける声優の朗読と生演奏を組み合わせた舞台で、『スプーンの盾』では原作・脚本・演出を担当。2022年初演で今回の2023年は再演となる。
『VOICARION』の魅力は多数の声優を組み合わせたユニット。一人の声優が日替わりで違う役を演じることも多い。その演技に生演奏が息を合わせるという贅沢な舞台である。
今回私が観劇したのは、もちろん安原義人がこのユニットメンバーにオファーされたためだ。ただし、私が朗読劇を知ったのは安原義人が2020年に出演した舞台配信『神楽坂怪奇譚「棲」体感型配信怪奇譚』。今回調べていて、本作にも藤沢文翁が関わっていたと知り驚いた。
ここからは内容に触れる部分があるので未見の方はご了承いただきたい。
本作の登場人物は4人のみ。皇帝ナポレオン・ボナパルト、ナポレオンの料理人となるアントナン・カレーム、カレームの弟子マリー・グージュ。ナポレオンの腹心であり、カレームをスカウトした外交官モーリス・ド・タレーラン。私の見た初演では、ナポレオンを石井正則、カレームを朴璐美、マリーを沢城みゆき、タレーランを安原義人が演じた。
タレーランの企む「料理外交」のために要人に料理の腕を振るうカレームだが、ナポレオンが皇帝になるに連れて状況は変わっていき……という内容だ。
4人の出演者が舞台前部の椅子に座り、出番になると立ち上がる。衣装は各自の役に合わせて全員分用意してあるという徹底ぶりだ。舞台の奥には厨房のセットが組まれており、中央の暖炉では火が燃える演出がされている。そのセットの前に演奏家の席があり生演奏する。私の席は中央だったので、舞台全体が見渡せて良かった。
4人で正味3時間の舞台を演じる訳だが、4人全員が関わるシーンは少なく、4人の中の2人が話の展開に沿って様々に絡み合うのが興味深かった。舞台背景の暖炉も、明るいシーンでは燃えたぎり、静かなシーンでは火が消えているという演出で、登場人物の心情を表現していた。
皆素晴らしい演技だったが、やはり久方ぶりに安原義人の声を生で聞けるのは至福だった。朗読するときはさすがに眼鏡をかけていたが、終演後の挨拶では眼鏡を外し、「自分で読んでて泣けるんだよな。昔はそんなことなかったのに、年なのかな」というようなことを述べていたのが印象深かった。
今回朗読劇の舞台に初めて行ったのだが、観客には白杖を持った視覚障害者とおぼしき方もおり、様々な人々が楽しめる一つの舞台の形なのだと感じられた。
また機会があれば是非とも行ってみたい。
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