第99話 『クレギオン』プレイヤー交流の始まり

 『ネットワークRPG クレギオン 遙かなるアーケイディア』の「リアクション」には、同じ話を選んだキャラクターの住所が巻末に記載されており、プレイヤーが直接連絡を取れるようになっていた。現在では考えられないことだろうが、当時は雑誌で文通募集や同人誌通販がまだまだ盛んであり、ストーカー問題等も広まってなかったので、不特定多数に住所を知らせる抵抗感は低かった。それでも様々な事情で住所を知らせたくない人向けに、ホビー・データ預かりで手紙を送り、会社から転送することもできた。しかし、どうしてもタイムラグが発生するため、使う人は少なかったようだ。

 インターネットも黎明期であり、パソコン通信や伝言ダイヤルが最先端の情報交換手段であった時代である。

 プレイヤー交流の目的はいくつかあった。まずは共同アクションのお誘い。同じリアクションで同じ目的を持ったキャラクター同士が協力すればアクションが通りやすくなるという目論見だ。

 次に、他ブランチのリアクション収集。同じブランチでも複数視点からのリアクションがあり、突き合わせないと全貌が見えない話も多かった。

 学校の友人等と一緒にプレイしたり、懐に余裕のあるプレイヤーの中には、複数キャラを違うブランチにエントリーして興味のある話を追ったり、ブランチをまたいでの共同アクションをする者がいた。

 大都市では公民館などを借りてプレイヤーがリアクション交換をしていたが、地方在住のプレイヤーにとってはハードルが高く、文通を手広く行うのが正攻法だった。もっと余力があるプレイヤーはリアクションをまとめた交流ペーパーやコピー情報誌を作っていたが、さすがに数は少なかった。

 『クレギオン』開始から3ヶ月ほど経った頃、我が家に同じブランチのプレイヤーから共同作戦の誘いの手紙が届いた。この時には別のアクションをするのが決まっていたので断ったが、その後も手紙の交流は続き、以降彼をリーダーにした数人のプレイヤーでチームを組んでアクションをしていくことになる。チーム名は私が命名したものが採用された。ブランチ名にちなみ「F」が頭文字に付いた単語である。

 しかし、短大2年生の私は就職活動中でもあったので、積極的な行動は控えていた。私がメイルゲームに本腰を入れるのは、就職後からのことである。

 というわけで、次回100話の就職活動話で短大編を終了する予定だ。

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