第98話 『ネットワークRPG クレギオン 遙かなるアーケイディア』開始

 さて、1990年10月から始まったホビー・データ社のPBM『ネットワークRPG クレギオン 遙かなるアーケイディア』。会費を払い込んだ私に届いたのは、キャラクター作成及び、自分が参加する「ブランチ」を選ぶための初期情報、自分のキャラクターの行動を書いて送る「パスポート」という名のノートだった。

 「クレギオン」世界は未来の宇宙植民時代が舞台ということで、自分の身分証明書が「パスポート」というのは世界観に合っていた。定形封筒に入る大きさのノートは、毎月1ページで12月分の行動を書くエリアと、キャラクター情報を書くページに分かれていた。

 行動シートの下部にはマスターからのメッセージエリアもあり、時々手書きのメッセージが書かれていた。

 キャラクターを作るにあたり、私は日系の女性精神科医「パトリシア・ウェールズ・ワカイ」という名前で登録した。愛称は「パッツィー」。パトリシアという名前はパーマンファンとしてパの付く名前を付けたかったからだ。愛称はあまり使われてなさそうなものを選んだ。職業は当時ユングなどの精神医学に興味を持っていたためだ。パスポートのキャラシートに貼る自画像もがんばって描いた。


 初期情報を見て選んだのはFブランチ。「アーケイディア探検」というロマンに惹かれたプレイヤーが多く集った物語だ。

 公式からは月に一度、担当マスターが書いた「リアクション」という名の小説形式の行動結果と、パスポートが送り返されてきた。「リアクション」とは別に、「ICサービス」という個別サービスを別料金で利用することが出来、簡単な行動結果や、NPCに手紙を送り返事をもらうことが出来た。ただし、私の知り合いが送ったNPCへの手紙の返事はかなり遅れて届き、マスターが謝っているという文章がおまけでついていたので、かなり負担だったのかもしれない。

 公式からはリアクションの時期に合わせて情報誌も届き、各地のブランチの情報、世界設定などのコラム、会員からのお便り等が掲載され、読者参加ゲームとして運営されていたモーターゲームの結果発表もされていた。

 未来世界の設定や人々の暮らしなども紹介され、リアクションの描写の参考となっていた。私が特に気に入ったのは「コミュニケーター」。携帯できる機器がネットにつながり、買い物や通信、情報入手等が出来るというのは、1990年の私には夢の世界のように思えた。

 1990年代末に携帯電話でインターネットが使えるようになって最初に感じたのは、(コミュニケーターみたいだ)という驚きだった。21世紀初頭にスマートフォン時代が到来し、まさにコミュニケーターが使えるような世界になるとは当時は予想できなかった。


 次回はプレイヤーとの交流について語りたい。


参考資料 同人誌『94年版 商業PBM白書』Postal Tale 刊

及び私の同人誌、リアクション等

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