第97話 PBM(プレイバイメール)とは何か

 私が初めて参加した『ネットワークRPG クレギオン 遙かなるアーケイディア』の話をする前に、メイルゲーム、いわゆるPBM(プレイバイメール)についての説明をざっくりとしたい。

 PBMは読者参加ゲームのようにプレイヤーが封書で毎月の行動をゲーム会社に送り、運営が結果を小説形式で執筆し封書で返してくるというシステムだ。読者参加ゲームと違うのはプレイヤーの連絡先が小説の最後に一覧で表示されており、プレイヤー同士が連絡を取り合って情報交換をしたり、共同行動をもちかけたりできたことだ。

 会期は1年間が一般的で、プレイヤーは月会費を払って参加する。一年間先払いしてくれるのがゲーム会社にとってはありがたいため、特典をつけていた会社もあった。


 PBMというのはあくまで一般的な呼び方で、当時は各社で独自のブランド名を作って呼んでいた。前回紹介した遊演体の『ネットゲーム90 蓬萊学園の冒険!』の場合、『ネットゲーム』がPBMのブランド名となる。「90」というのは1990年開始だったためで、1作目の『ネットゲーム88(サブタイトルなし)』が1988年開始だったことから開始年の年号を付けるのが遊演体のお約束になっていた。

 私は『88』『90』をプレイしなかったので、後に参加したプレイヤーの体験話等で見聞きしただけだが、初期の遊演体作品の結果報告は簡潔なもので、自分の情報や他のプレイヤーの情報を付き合わせることで判明する事実もあった。『88』ではプレイヤーが対立する陣営で競い合う内容だったため、正体を隠してライバル陣営に近づいたりとリアルでのトラブルにつながる事例もあったようだ。

 『ネットゲーム90 蓬萊学園の冒険!』は絶海の孤島にある学園を舞台にした何でもありな設定がプレイヤーに大いに受け、TRPGや小説等に発展する。ゲームを通して知り合ったプレイヤー同士の結束も深かった。後に遊演体のゲームに参加した私も、過去のゲームでの知り合い同士で作ったグループに参加したことがあり、当時の熱気を間接的に感じることが出来た。


 遊演体の『ネットゲーム90』開始から半年ほど経ち、1990年10月から開始されたのがホビー・データ社によるPBM『ネットワークRPG クレギオン 遙かなるアーケイディア』だ。「ネットワークRPG」というのがPBMのブランド名となる。未来の宇宙植民時代が舞台だ。『ウォーロック』誌に載った広告を見た私は、会費が8000円ほどとやや安めだったこともあり、思い切って参加することにした。


 ホビー・データ社の特徴は プレイヤーが「ブランチ」と呼ばれる小分けされたストーリーを選び、「マスター」と呼ばれる担当スタッフが毎月の行動結果を小説で描写していくというスタイルだ。プレイヤーの活躍場面が増えることで満足度が上がり、後発の会社や遊演体の作品にも影響を与えていくことになる。


 詳しい内容については次回以降に語ろう。

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