第96話 ロールプレイ・メール『二つの川の物語』の話

 私が読者参加コンテンツにはまる最大のきっかけになったのは、『ウォーロック』誌の連載企画『二つの川の物語』だった。

 本作の概要についてはウィキペディアを参照していただきたい。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%83%AD%E3%83%83%E3%82%AF_(%E9%9B%91%E8%AA%8C)#%E4%BA%8C%E3%81%A4%E3%81%AE%E5%B7%9D%E3%81%AE%E7%89%A9%E8%AA%9E


 記事に書かれてない部分は私の記憶で補っているが、現在『ウォーロック』誌が手元にないので記憶が間違っていたら申し訳ない。


 物語の舞台となる二つの川が流れる開拓地「探検家ヒルツの地図」が誌面に示され、読者はハガキで地図の座標を指定し、猫に近い「猫の種族」人間に近い「竜の種族」のどちらかを選んでハガキを送った。

 私は「竜の種族」の「あるじぇ」という男性キャラクターをつくった。名前がひらがななのは「竜の種族」の特徴である。「猫の種族」の名前はカタカナ表記だった。開拓場所は私の好きなバードマンにちなんでBの座標と、右上の場所を選んだ。

 本作のシステムは「ロールプレイ・メール」と呼ばれており、読者から投稿される地域のイベント、頼み事、事件などをもとに編集部が記事を作って紙面に掲載し、その記事を元に住民は次月の行動を投稿するというシステムだった。開拓地域は「ばいあ(バイア)地方」と名付けられるが、これも読者投票の結果だったと記憶している。

 自分のキャラクターが他の読者とともに別の世界で生きているという実感が感じられるプレイを私は気に入り、毎月の記事を楽しみにするだけではなく、当時文通していたペンフレンドを開拓者として誘うまでにはまった。ペンフレンドは私の誘いに乗り、文通が途切れるまでは『二つの川の物語』に参加していた。

 しかし、二つの種族が共存している平和な開拓地にも戦争の影が忍び寄りつつあった。これは90年代初頭の現実世界で湾岸戦争の戦火が広がりつつあったことが影響していた、と後にスタッフが解説している文章を読んだ記憶があるが、『ウォーロック』誌最終号の記事だったろうか。

 『ウォーロック』誌56号から始まった「竜の国遠征記」からは、戦争中の「竜の国」に視察に向かったNPCとプレイヤーたち、開拓地で帰りを待ちながら暮らす住民の2サイドに別れて物語が進んだ。私は自キャラの故郷でもある竜の国に向かう船に乗り、ペンフレンドは開拓地に残ったと記憶している。誌面の記事も寂しい内容が増え、『ウォーロック』本誌の廃刊と共に静かに幕を閉じた。


 「ロールプレイ・メール」というシステムが気に入った私は、当時『ウォーロック』誌に広告が掲載された遊演体ゆうえんたいの『ネットゲーム90 蓬萊ほうらい学園の冒険!』に興味を持ち、パンフレットを取り寄せた。架空の巨大学園で学生キャラをプレイするという世界観には大いに惹かれたものの、毎月の会費が一万ほどかかるというのは負担が大きすぎ、参加を断念した。私が『蓬莱学園』に参加していたら、後のメイルゲーム歴は大いに変わっていただろう。


 次回もメイルゲームの話をする予定だ。

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