第91話 番外編 祖父母の家が売り出された件
先日の敬老の日、たまたま父方の祖父母の家周辺を見たくなってGoogleマップで見ていたところ、祖父母の家に『売物件』という看板が掛かっており驚いた。マップの更新日は今年だったので最近売り出したらしい。
早速不動産サイトで祖父母の家の地域の売り出し物件を調べてみると、見覚えのある家が引っかかった。サイトには家の内部の写真もある。
祖父母の家の周辺には墓参り等で行っていたが、家には何十年も行ってなかった。お中元やお歳暮は毎年贈っていたが、後を継いだ伯父夫婦が数年前に亡くなったこともあり、現在では交流はない。いとこにあたる伯父の息子は近所に住んでいるので、現在は無人である。そういえば父が「実家を処分したい」と言っていたような気もする。
何はともあれ、不動産サイトに載せられた家の内部の写真を見て回った。懐かしい記憶が次々思い出される。
広い
左隣の部屋は帰省時の私たち一家の寝室として使われていた。布団を島に見立てて同い年のいとこと遭難ごっこをしたのもこの部屋だ。鶴の細工が施された欄間も映っている。
その左隣は仏間兼伯父の息子の部屋で、後に建てた納屋の上の部屋に引っ越した後は、寝たきりになった祖母のベッドが置かれていた。
玄関から左側には廊下に続くドアがあり、回廊のように部屋を取り囲んでいた。廊下奥のトイレの写真もあり、和式便器の上にプラスチックのカバーを覆って洋式にしてある。これも私が子どもの時に変更していた。トイレの手前にはかなり古そうな桐箪笥が置いてあった。
玄関の右側からは土足で入れる小さな部屋があり、正月に餅を作った時はここで乾かしていた。その横を通ると土間になっている台所に行けるが、どうやら木の床にリフォームしたらしいことが写真で分かった。これは私が見たことがない姿だ。
客間の奥は台所に続く居間となっており、振り子時計やテレビ、掘りごたつが置かれていた。祖父のたばこ盆も置かれており、「エコー」を吸っていたと記憶している。この居間の右には回廊となった廊下へ続くドアがあり、入るのがはばかられた祖父母の寝室や、結婚して家を出た伯父の娘の部屋があった。
居間の奥には洗面所や風呂場に続く廊下があり、冬場は寒かった。
家具はほとんど運び出してあるが、洗濯機やクーラーは残されている。家が建てられたのは私が生まれたのと同じ1970年だということも分かった。納屋も現存しており、二階にある伯父の息子の部屋で本を読みながら過ごしたことを懐かしく思い出す。
家のそばには確か大きな柿の木があった。畑やビニールハウスのあった土地を含めるとかなりの広さだ。
不動産サイトの注釈によると、祖父母の家は「再建築不可物件」であると注記されている。これは現在の建築基準では隣接した道路の幅が足りず、解体しても同じ土地に家を建てることは出来ないというものだ。確かに我が家が帰省する時にもかなり苦労して敷地に入っていた。祖父母の家の敷地のそばには建築後に出来た県道があり、繋がる土地を確保できれば活用できるが、かなり困難だと注記されている。
この記事を書くために再度確認しようとしたところ、すでに不動産サイトから祖父母の家の記事は削除されていた。買い手が付いたのだとしたら喜ばしいが、正直寂しい気持ちである。
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