第73話 土浦の古書店の話

 短大の図書館は私好みの本が少なく、すぐに行かなくなった。国文科よりも保育科がメインの学校なので仕方なかったのだろう。

 代わりにお世話になったのは土浦駅周辺の古本屋だった。特に行っていたのは路地沿いにあった店やモール505というショッピングモールの近くにあった店だ。路地沿いの店は文庫本が多く、ゲームブックや『ウォーロック』誌で知ったクトゥルフ神話の生みの親、ラヴクラフト全集の文庫本を買ったことを一番覚えている。


 モール505近くの店はマンガ中心の品揃えだが、アニメの資料集やレコードなども置いてあり、ここで入手したお宝もたくさんあった。1983年と1984年だけ発行されたアニメ年鑑や、徳間書店が本格的なアニメ総カタログとして完成させた『TVアニメ25年史』と『劇場アニメ70年史』だ。

 思えば私が自分の生まれる前のアニメに興味を持ったきっかけも、子どもの頃買ってもらったケイブンシャの『アニメ全百科』だった。現在では容易に視聴できる作品も、当時は本に掲載されたスチール写真一枚で想像するしかなかった。


 シンエイアニメ版『パーマン』の主題歌「きてよパーマン」のレコードや、劇中のアイドル、星野スミレ(パー子)の歌う挿入歌「御機嫌伺いLOVE」、夏の間使われた「パーマン音頭」など、パーマン関連シングルレコードを見つけたときは嬉しかった。

 店頭に出す前だった『ヤッターマン』のコミックスを見つけたときも驚いた。存在を知らなかったくらいなのでレアものだったのかもしれないが、安価で購入できた。


 たまに行っていたのは当時あった地元のデパート、小網こあみ屋の近くにあった古本屋だ。ここは昔ながらの古書店という雰囲気で、マンガの評論本など堅めの本を買っていた。

 ここで私が見つけたのがパラフィン紙に包まれた藤子・F・不二雄のコミックス『中年スーパーマン左江内さえない氏』だった。大人向けの『パーマン』という雰囲気で、最終回には原作よりもやや成長したとおぼしきパーやんが登場するというクロスオーバーもあり、たいそう驚いた。

 本作は後年、日本テレビで『スーパーサラリーマン左江内氏』のタイトルでドラマ化されるが、最終回はパーやんというよりバードマンのオマージュキャラが登場する等、色々変わっているので原案程度に見ておけば楽しめた。


 この記事の執筆のため現在の土浦の古書店事情を調べたところ、駅の近くにあったパチンコ店の居抜きで古書店のモールが出来ており、関東一の店舗面積を誇っているという。古書探索に土浦訪問というのも面白そうである。


 次回は番外編的な母親のハンドクラフト話をしたい。

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