第71話 大学受験の話

 一話飛んだが、今回は大学受験の話をしたい。


 高校三年になり、私も進路について考えるようになった。当時の国公立大学受験の場合、国語・数学・理科・社会・英語の5教科7科目が試験科目となった「大学共通第1次学力試験」通称「共通1次」が一般的で、国語と社会しか得意科目がない私が共通1次試験を受けるのは無謀すぎた。私は得意科目だけで受験できるような短期大学の国文学部を選ぼうと考えた。

 私が大学へ行きたかった理由はもう一つあった。卒業論文で『パーマン』について書きたかったのだ。アニメやマンガの評論本も当時いくつか出ていたが、子ども向けと思われていた藤子作品はアニメ雑誌でも取り上げられることが少なく、私は『パーマン』のジュブナイル作品としての素晴らしさについてもっと評価されるべきだと思っていた。


 試験シーズンの前に、私の高校でも近隣の大学から職員が集まり、進路相談会が開かれた。私は各学校のブースを訪ね、卒論について尋ねた。短大ということで卒論に力を入れていない学校も多く、卒論がある学校で受験できそうな学部はかなり絞られた。

 結局、私は試験科目に国語があり、苦手な数学がない短大を受験することにした。一つは栃木とちぎ県栃木市にある短大、もう一つは茨城いばらき土浦つちうら市にある短大だった。どちらも今まで縁のない土地だ。土浦は水戸みとから常磐じょうばん線で一時間ほどかかるが、栃木に進学した場合家から通うのは難しいので、一人暮らしできるか心配した母親と一緒に受験前に周囲の視察に訪れた。


 先に試験日が来たのは栃木の短大だった。水戸駅から初めて乗る小山おやま行きの常磐線から両毛りょうもう線に乗り換え、大学に向かった。

 試験終了後、駅に戻るバスに乗っていた私は途中で見かけた古書店の誘惑に耐えきれず下車した。店頭にはゲームブックや私が初めて見るTRPG系の雑誌があり、二度と来ることはないかもしれないと思った私は予算の許す限り本を買いまくった。あまりの量に持って帰るのを諦めた私は入手した段ボールに本を詰め、宅配便で家に送った。

 結局試験は不合格だったと記憶している。あれから栃木市を訪れる機会はなく、古書店での出来事は夢のように曖昧になっている。


 土浦の短大の試験は国語と社会、英語の三科目だった。得意科目の国語と社会で苦手な英語をカバーするという算段だ。幸い試験は合格し、私は家から土浦の短大に通うことになった。


 次回からは第四部として短大時代の出来事について語ろう。

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