第66話 ゲームブックとの出逢いの話

 高校時代に私は「ゲームブック」という新しい趣味に目覚めた。

 「ゲームブック」とはパラグラフによる分岐で物語を進める本で、本来はテーブルトークRPGのソロプレイを本で行うため考え出されたものだった。大体の作品には冒険する自分の分身を管理するキャラクターシートがあり、ダイスを振って戦闘したり、謎を解いて答えのパラグラフを探したりしながら進む。選択に失敗したり、戦闘に敗れるとゲームオーバーやバッドエンディングになることもあった。


 私が「ゲームブック」に初めて触れたのは中学時代、長弟が友達から借りてきた二見書房刊『グーニーズ』。映画の内容をゲームブックにしたものだ。ダンジョンで宝探しをする映画の内容と親和性が高かったと思われる。

 その後いくつかの出版社が海外で流行っていたゲームブックを翻訳したり、日本人作家がオリジナルのゲームブックを執筆して本格的なブームが訪れた。


 私がゲームブックと再会したのは高校時代、社会思想社から翻訳発売された『ファイティング・ファンタジー』シリーズの文庫本を書店で見た時だ。1986年時点で発売されていた本が平積みされており、何が良いか悩んだ私は当時ほぼ最新刊だった『盗賊都市』を選んだと記憶している。


 『ファイティング・ファンタジー』シリーズのメインはファンタジーRPGで、『ドラゴンクエスト』くらいしか知らなかった私には敷居が高かった。そもそも図書館でもファンタジーには興味がなく、置かれていた『ナルニア国物語』シリーズや『ゲド戦記』も読もうと思わなかったのだ。

 私がファンタジーRPGの世界を知るきっかけとなったのが『ファイティング・ファンタジー』シリーズだった。家にファミコンはあっても高校生が遊ぶのははばかられたので、自室で遊べるゲームブックというのはありがたかった。作品の性質上、買った人がクリアした本を古本屋に売ることも多く、私は古本屋でゲームブックを購入することが多かった。

 『ファイティング・ファンタジー』シリーズの姉妹作である『ソーサリー』4部作は東京創元社から翻訳発売された。戦闘ではなく魔法のスペルを覚えて戦うという内容で、やり応えのある作品だった。


 1986年には社会思想社からゲームブックやTRPGメインの雑誌『ウォーロック』も発刊され、私は小遣いで毎月購入するようになった。次回は『ウォーロック』の話をしたい。

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