第55話 ドラマ『ジャングル』と安原義人レギュラー出演の話

 さて、私がバードマンファンになってからずっと活動をチェックしていた安原やすはら義人よしと氏だが、1987年2月に大事件が起こる。当時ボス役の石原いしはら裕次郎ゆうじろう逝去等で惜しまれつつ終了した刑事ドラマ『太陽にほえろ!』シリーズの後番組として始まった刑事ドラマ『ジャングル』に、レギュラー刑事の明石あかし亀雄かめお(初期設定は「亀男」)役として出演が決まったのだ。

 元々安原氏は舞台俳優であり、以前にも水谷みずたにゆたか主演の『熱中時代2』等、ドラマのレギュラー出演経験はあった。しかし、私がドラマで俳優としての安原氏を見るのは初めてだった。


 人気刑事ドラマの後番組ということで放送局の日本テレビも力を入れており、番宣も多数放送された。しかし、当時の『ジャングル』放送枠である金曜20時は、TBSの伝説的バラエティー『風雲!たけし城』と被っており、我が家でも一家で見ていた。

 ビデオ録画という方法もあるが、ビデオテープは高すぎてとても小遣いで気軽に買えるものではない。結局私は客間にある2台目のテレビで『ジャングル』を見ることにした。


 『ジャングル』はカリスマのあるボスが個性あふれる部下を率い、派手に事件を解決するという『太陽にほえろ!』などが作っていた今までの刑事ドラマのパターンとは違い、仕事と家庭を両方大切にし、部下との話し合いも対等に行うボスが、個性もあるが悩みもある部下と共に、毎回の事件解決と数話にまたがる大事件の解決を同時に行うという新しいスタイルの作品だった。拳銃の持ち出しを厳重にするなど、実際の警察署の雰囲気を再現するのもこだわりの一つだ。


 安原氏演じる明石亀雄は警部補で、思春期の息子の扱いに悩んでいるという設定だった。刑事部屋では孫の手を愛用していたり、決まったネクタイをしている等の演技のこだわりが随所に見受けられる。捜査は地道に足で稼ぐタイプで、本編でメインになった話は数話しかないが、毎回の出番を見逃さないようテレビを注視していた。


 しかし制作陣の意気込みとは裏腹に視聴率は振るわず、数話にまたがる大事件というフォーマットは早々になくなり、1988年1月から『NEWジャングル』としてリニューアルされた。これに伴い数人の刑事が退場し、新人刑事として売り出し中だった江口えぐち洋介ようすけが加わる。安原氏演じる明石亀雄は残留し、私はホッとした。

 同時期の日本テレビではバディ刑事ドラマ『あぶない刑事でか』が人気であり、こちらは続編が何本も作られる人気シリーズになった。後年リアリティを感じる刑事ドラマとしてフジテレビの『踊る大捜査線』がヒットした際、視聴者の感想で早すぎたルーツとして『ジャングル』が上げられていたのが嬉しかった。


 はやし哲司てつじの音楽も都会的な雰囲気で、当時普及し始めたCDで発売されたサウンドトラックは、CDラジカセを買った時にレンタルショップで借りて真っ先にダビングしたくらいお気に入りだった。

 OPは二種あるが、ジェイク・H・コンセプションのサックスが唸る『NEWジャングル』OP『Dangerous Night』、EDは『ジャングル』OP『Jungle -Main Theme-』の歌詞入りバージョンであるジャッキー・リン&パラビオン『Stranger's Dream』がお気に入りである。『NEWジャングル』ではEDがない代わりに江口洋介のアルバムから『ガラスのバレイ』が挿入歌として使われ、私は後にアルバムを購入した。


 放送当時、放送映画出版が出していた雑誌『テレビジョンドラマ』87年11月号で『ジャングル』が特集され、私も書店で見て購入した。安原義人の詳細なプロフィールも掲載されており、貴重な情報だった。


 次回はこの『NEWジャングル』が大きく絡む、高校二年の冬に行われた修学旅行の話をしたい。

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