第三部 高校生時代

第42話 高校への通学の話、デパートの話、書店の話

 1986年春、公立高校の試験に落ちた私は滑り止めで受かった私立の女子高校に通うことになった。制服はブレザーにジャンパースカートだ。

 学校は水戸市の中心部にあり、家からは路線バスで通う。学校の近くのバス停まで1本で行ける路線があるのだ。定期券を購入したので、帰宅途中に水戸市内の店に寄り道することも多かった。

 昼食は弁当を母親が作ってくれたが、小遣いも少し増えたのでおやつや録音用のカセットテープを買ったり、古本屋で本を買ったりしていた。


 当時水戸市内にはデパートが軒を連ねていた。駅前には駅ビル「Excelエクセル」、丸井、西武百貨店、そこから大通りを大工町だいくまち方向に進むと順にダイエー、ユニー、伊勢甚いせじん百貨店、伊勢甚の向かいに京成けいせい百貨店。この大通り周辺が「上市うわいち」と呼ばれる繁華街だ。「下市しもいち」と呼ばれる水戸駅の南口エリアにはジャスコもあったが、2022年現在では駅ビルと京成百貨店、イオンになったジャスコ以外はなくなってしまった。


 デパートにはよく寄り道した。丸井はあまり縁がなかったが、各デパートに入っている書店で雑誌やマンガを購入したり、立ち読みしたりしていた。当時は西武ライオンズの全盛期で、優勝セールの時になると西武百貨店の書店の隣にある催事場で、松崎しげるの「地平を駈ける獅子を見た」がエンドレスで流れていた。

 特にダイエーにはプライベートレーベルのカセットテープが安く売られており、予算が少ない時は重宝していた。伊勢甚や京成のおもちゃ売り場も友人たちと新製品チェックによく行っていた。


 中でも各デパートで時々行われる古本市は大好きなイベントだった。大体は安い古本を購入するのだが、時には東京の古書店が巡回で稀観本きこうぼんを出す古本市もあった。ある時伊勢甚で行われた古本市では、ガラスケースに入った藤子不二雄の公式ファンクラブ機関誌『UTOPIAユートピア』や、シンエイアニメ『パーマン』のシナリオ、『パーマン』の『小学一年生』付録コミックスなどの貴重なアイテムをお年玉で購入した。私が『UTOPIA』の存在を知るきっかけでもあり、アニメパーマンの制作資料を集めるきっかけとなったグッズである。


 水戸市内には『川又かわまた書店』という大きな書店があり、本店では当時再版されていた『パーマン』の児童向けムックを購入した。水戸駅前店では藤子不二雄A(当時はコンビ解消前)のコミックエッセイ『パーマンの指定席』を連載していた『コミックトム』やアニメイトのミニショップをチェックしていた。『藤子不二雄ランド』で発売された『新編集パーマン』もここで購入し、川又書店のブックカバーを付けて保管していた。

 この川又書店も現在はブックエースに営業権を譲渡し、名前を残した形でかろうじて存続している。駅前店もなくなり、私が通っていた店舗で残っているのは駅ビルの支店のみのようだ。


 他にも駅前には別の大きな書店(文教堂だったろうか)があり、アニメ雑誌の立ち読みを良くしていた。横田順彌よこたじゅんやの文庫本や、社会思想社のゲームブックとの出会いもこの書店だが、それはまた別の機会に語ろう。


 バス停から高校に向かうまでの間にも小さな書店があった。コロタン文庫『パーマンオール百科』という本を購入したのはこの書店だったと記憶している。アニメや原作の設定等をまとめた公式のムックで、嬉しかった私はカバーを掛けて保管し、中のカットに色鉛筆で着色したりしていた。


 次回は高校の友人たちとの出会いの話をしたい。

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