第38話 合唱部の助っ人のこと、好きだった合唱曲のこと

 私が中三になるまで、合唱部の部員は女子のみだった。日頃学校でからかわれたりしているので男子が苦手だった私にとって、部活が居心地良かった原因の一つでもある。

 しかし中三進級後、合唱部の顧問はNHK全国学校音楽コンクールの地方大会に備え、今年は混声コーラスで行くと宣言した。中学校の混声コーラスは少なく、審査員にアピールするためだ。しかし、普通に部員募集しても男子部員が入ることは考えにくい。顧問が打った手は、助っ人として生徒会の男子を呼ぶことだった。

 今まで女子だけの部室に男子が入ってきたことは大事件だった。同じクラスの男子もいたと記憶している。幸い生徒会員たちはマナーも良く、パート分けをした後、課題曲を共に練習してコンクールに挑んだ。残念ながら結果は予選落ちだったが、助っ人としての役目を終えた男子たちは生徒会室に戻っていった。


 合唱部では様々な曲を歌ったが、これまで語っていなかった中で印象に残った曲を紹介したい。

 まずは「海はなかった」。公害で海が汚染された時代背景を感じさせる歌詞で、それでも最後は「海へ行こうか」と締めくくる。その海は実際の海なのか、それとも思い出の海なのか。静かなロングトーンで終わるのも好きだった。

 もう一つの海へ行く曲、「若菜よ、来年は海へ行こう」。幼い「若菜」に親か祖父母がまだ知らない海の素晴らしさを語りかける歌詞だ。当時は「若菜」という名前も珍しくてしゃれていると思った。

 「虹のうた」。私たちが選ばなかったNHK全国学校音楽コンクールの課題曲だが、当時は一番人気で、コンクールでは他校が歌いまくっていた。コンクール後自分たちも歌いたいとなって選ばれたと記憶している。

 そして「出発たびだちの朝」。旅立ちへの不安と決意を歌った歌詞を私は非常に気に入り、私のパーマン二次創作でも「まえがき」に使わせてもらった(ウェブ版では削除してある)。


 コンクールの地方大会が終わった後、私たち三年生は部活を引退した。

 翌年、NHK全国学校音楽コンクールの地方大会が行われた際、私たちOGは応援のため観客席で鑑賞した。なんと、この時の後輩たちは予選落ちしたが入賞した。母校の歴史上初めてだったかもしれない。

 残念ながら顧問の先生が転勤したため、合唱部はその後低迷し、私との繋がりも切れてしまった。幸い現在も母校では合唱部が続いており、コンクールで入賞もしている。嬉しい限りである。


 合唱部シリーズはここで終わり、次回からは別の話をしたい。

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