第25話 小説の後書きの話、ポータブルラジオの話

 きた杜夫もりおの小説が好きだという話を前にしたが、私が自分の作品にほぼ必ず「あとがき」をつけるのは氏の『さびしい王様』シリーズが大量の「まえがき」「あとがき」をつけていた影響である。『さびしい王様』本編のフェチシズムあふれる文章にも惹かれたが、自分の小説では生々しすぎるので描写はセーブしている。

 「カクヨム」に発表した学生時代の小説などの制作経緯がわかるのは「あとがき」で詳細に記していたからである。今となっては当時の自分に感謝したい。


 さて、前回予告した家での音楽について語りたい。

 引っ越してからほどなくして、私はNHKラジオの『基礎英語』を聞きながら勉強するという理由で専用のポータブルラジオを手に入れた。教室でビートルズの歌を聴くのは好きだったが、英語の成績は悪かった私を気にして親が買ってきたのだ。

 もちろん『基礎英語』は聞いていたが、折角手元にラジオがあるので、私は他の時間も番組を聞き始めた。自室は二階なので、ベランダから覗きでもしない限り何をしているかは分からない。特に聞いていたのは歌謡曲のヒットチャート番組だ。日曜日には各局をはしごして楽しんでいた。83年以降のヒット曲の多くを私はラジオで覚え、現在でもカラオケでよく歌っている。

 ポータブルラジオは乾電池なので、電池を交換する頻度が増えるのが一番の悩みだった。それを解消するため、お年玉で私は念願のダブルラジカセを購入した。小学生時代にアニメのOP・EDや本編を録音していたように、今度はラジオ番組を録音し、かかった曲をダビングしてテープを作るようになるのだが、生テープの購入が自由にできるほどの金が手に入るのは高校時代にアルバイトを始めてからになる。


 私の部屋には小学校高学年の長弟が勉強のために入ってくることが多かった。といっても真面目に勉強しているわけではなく、私と一緒にこたつに入って漫画雑誌などを読んでいるのだ。長弟は当時流行っていた「おニャン子クラブ」のファンで、シングルやアルバムをダビングしたテープをよくかけていた。おかげで私も曲を覚えることができた。

 長弟は「おニャン子クラブ」の番組によく出ていた「とんねるず」のファンでもあり、後年「とんねるずのオールナイトニッポン」をタイマー録音して翌日聞くという習慣も長年続けていた。一緒に私も番組を楽しむようになり、就職で家を出た後も自分で録音して聞いていたほどだった。


 当時発売されていた『明星』などのスターグラビア雑誌も長弟は購入しており、付録についていた「歌本」はラジオで聴いた曲を覚えるのに非常に役立った。特にお気に入りの曲は歌本を書き写したり、切り取ったりして自分のスクラッププックに貼っていた。スクラップブックの話は長くなるので次回以降に続く予定だ。

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