第24話 中学校で出会った音楽、『くちびるに歌をもとうぜ!』執筆のこと

 水戸の中学校は東京の中学校とは違い、広い校庭があった。毎週金曜日だったか、放課後全校生徒がグラウンドをランニングする決まりになっていた。この時のBGMとしてスピーカーから流れていたのがYMOの『ライディーン』だった。走るのは嫌いだが、YMOのテクノサウンドはとても気に入り、楽しい時間だった。


 英語の授業の時には、教師がカセットデッキにテープを入れ、ビートルズの歌をよく流していた。『yesterday』等の有名曲はこれで覚えた。

 体育のダンス授業ではベイ・シティ・ローラーズの『S-A-T-U-R-D-A-Y NIGHT』が課題曲として使われた。ステップを覚えながら踊るのだが、この曲自体もノリのいい曲で気に入った。

 そういえば小学校の体育祭では『8マン』をBGMにして応援ダンスをしたことを思い出した。私が『8マン』を知ったのはこの時である。

 もちろん現在では著作権等があるので学校で気軽にアーティストの曲を使うのははばかられるのだろうが、自分の音楽知識を広げる貴重な機会だった。


 転校後しばらくして、秋の文化祭が行われることになった。私のクラスである1年7組では、教室に生徒の作品を展示することとなり、私はオリジナルの小説を書くことにした。これが私が公に発表した最初の作品である『くちびるに歌をもとうぜ!』である。内容は富士山麓ハイキングに来た中学生たちが青木ヶ原樹海で迷子になり、皆で歌を歌って励まし合いながら救出されるというものだ。


 本作のヒントになったものはいくつかある。まず、小学校時代の山中湖林間学校で青木ヶ原樹海に興味を持ったこと。磁石が働かず、地下のあちこちに溶岩洞穴があるという地勢にそそられた私は、パーマン二次創作でも舞台に選んでいる。

 次に、藤子・F・不二雄のSF短編『ポストの中の明日』。ハイキングで遭難するシーンが作中にあり、当時コミックスで読んだ私は舞台劇に向いてそうだと思い、頭の中で台本を考えていた。

 そして作品内で合唱コンクールで歌う曲として設定した『気球に乗ってどこまでも』。小学校で使用した歌集に載っており、授業や学内の合唱コンクールでよく使われた馴染みの歌だった。カクヨム版では著作権に配慮して歌詞はカットしてある。


 オリジナルの『くちびるに歌をもとうぜ!』は原稿用紙20枚の作品だった。教室で展示する際に板目紙で表紙をつけることになり、私は『針葉樹』とタイトルをつけた。樹海のイメージが頭にあったのだろう。


 『針葉樹』は文化祭の期間、教室に展示されたが、どれくらいの人が内容を見たのかはわからない。感想をもらうこともなかった。しかし、オリジナルの小説を完成させたことは密かな自信につながった。


カクヨム版『くちびるに歌をもとうぜ!』

https://kakuyomu.jp/my/works/16816452221076147621


『針葉樹』表紙イメージ

https://kakuyomu.jp/users/ootayasuko/news/16816452221410192273


 次回は家での音楽について語りたい。

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