第23話 転校先の中学校のこと、図書室のこと
茨城県水戸市に引っ越した後、私は地元の公立中学校に通い出した。制服はジャンパースカートにブレザースタイルだ。一年生の教室に編入された私は、なぜか一冊だけ置いてあった三浦綾子『塩狩峠』の文庫本を時間潰しに読み始めた。主人公が人々を救うため自ら犠牲となるという内容で、自分にこんなことが出来るのか考えさせられた。
いきなり読書を始めた転校生をクラスメイトはどう思ったのか。その後もあまり親しい友人は出来なかった。
転校後すぐ、校歌を行事で歌うことになり、生徒が体育館に集まった。少しでも早く学校に溶け込もうとした私は必死に皆の歌う校歌を覚えた。お陰で今でも在学した学校の校歌では一番覚えている。
幸い図書室の本は充実しており、私は興味のある本を次々読破していった。誰も読んでいない読書カードに名前を書き込むのは誇らしかった。学校で一度、読書量を競うコンテストが行われ、私は入賞して賞状をもらった。今も実家に飾られている。図書委員会にも入り、中三の時は図書委員長を務めた。
図書室にあった本で印象深いのは『少年少女世界SF全集』。私はこれで古典SFを学んだ。それとは別に日本人作家を集めたSF作品集もあり、『燃える地球』やタイトルは忘れたが少年エスパー部隊が活躍する作品は印象に残っている。メンバーに水戸出身者がいたので親近感があった。もう一つ、古代遺跡や歴史のシリーズも私の知識を深めるのに役だった。
他にはタイトルは忘れたが古代ローマ時代の少年が主役のミステリー、乙骨淑子『ピラミッド帽子よ、さようなら』も印象に残っている。特に『ピラミッド帽子よ、さようなら』は後書きで作者が完結前に亡くなり、最終章は他の人が遺稿をまとめたことが書かれており、驚くと同時に作品に込められた思いに心うたれた。私のパーマン二次創作『ピラミッド・ペンダントの秘密』はこの作品もイメージソースの一つになっている。
図書室の奥には歴代の卒業生たちの作文をまとめた文集が置いてあった。かつて学校が出来る前、ここは荒野だったことからつけられたタイトルは、初めて聞いた単語だが気に入った。
それとは別に、寄贈されたらしい本がガラスケースに入っていた。タイトルに惹かれて読んだ、竹川英幸『帰り道は遠かった──満州孤児三十年の放浪──』の内容はパーマン二次創作『パーマンと朝鮮戦争』のエピソードの一つに使わせてもらった。『パーマンと朝鮮戦争』は私が創作資料集めにはまるきっかけでもあり、自作『一蓮托生』もこの延長線上にある。
一方、部活は演劇部がなかったため、合唱部に入った。合唱部のエピソードは後でまとめて語りたい。
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