第二部 転校後の中学生時代

第22話 引っ越し先の家の話、推し作家ができた話

 さて、中学一年生の10月に茨城県水戸市に引っ越した所から話を始めよう。

 父の転勤が急だったこともあり、新たな家は中古の一軒家だった。二階には二つの部屋とベランダがあり、私と長弟が一部屋ずつ使うこととなった。初めて個室をもらった私はとても嬉しかった。一方、長弟が使うことになった部屋には、前の住人が忘れていったらしいシャア・アズナブルのポスターが貼ってあった。どうやらアニメ雑誌の付録だったようで、裏面はアムロ・レイだった。私も弟もガンダム本編は恐らく見ておらず、地上波放映された劇場版ガンダム三部作を見た程度の知識しかなかった。結局ポスターはそのまま壁に貼られることになった。


 一階も三部屋あり、一部屋は客間として応接セットや前の家から持ってきたステレオ、エレクトーンが置かれた。この部屋には後に二台目のTVが置かれ、私も活用するのだが、それはまた改めて語ろう。珍しかったのは風呂場で、ガス点火式だった寮とは違い、夜間電気を利用した電気温水器が勝手口に置かれていた。次弟はまだ小さかったので個室はなかったが、後に一階に部屋を増築することになる。


 小さいが庭もあり、父親はよく植木の手入れをしていた。玄関近くにはキンモクセイの木が植えられ、私のお気に入りとなった。

 ペットを飼い始めたのもこの家に来てからだ。セキセイインコのつがいで、日光浴中に猫に襲われるなどして何羽か代替わりしたが、母親がずっと世話をしていた。


 家の周りは住宅街で、駄菓子屋にすぐ行けた東京時代とは違い、買い物には自転車で出かけなくてはいけなかった。近所の子供たちとの接点もなく、私はもっぱら学校の図書室で借りた本を読んで過ごしていた。私の部屋には母親が昔買っていた世界文学全集の本棚も置かれ、これも少しずつ読破していった。私の創作や文章に対する知識は、この時期の読書によるところが大きい。


 また、好きな作家の一人であるきた杜夫もりおの作品を読み始めたのもこの頃である。きっかけは忘れたが、『楡家にれけの人びと』を東京時代に図書館で借り、当時通い始めた塾の休み時間にも読んでいた。お年玉で買った『さびしい王様』三部作が特にお気に入りだった。

 他に当時新聞連載していた半村はんむらりょうみさき一郎いちろうの抵抗』もエスパー物ということで熱心に読んでいた。親が私に気を使って連載終了まで他紙乗り換えを待ったほどだった。


 私の読書に大きな影響を与えたのはもう一つ、町内会の廃品回収で入手した大量の文庫本である。私はいとこの家で読んだ筒井つつい康隆やすたかや、ほし新一しんいちなどのSF作品を中心に選んだが、『銀河パトロール報告』というタイトルに惹かれて知らない作家の文庫本を持って帰った。それが私に大きな影響を与えることになる作家、横田よこた順彌じゅんやとの出会いだった。ただし本格的に探求を始めるのはアルバイトで自分の小遣いが増えた高校時代に入ってからになる。


 次回は転校先の中学校について語りたい。

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