第15話 「楽園」の絵、給食の話、図書室にまつわる話

 前回「エホバの証人」の話を書いてから思いだしたエピソードがある。幼稚園の時、各自の卒園アルバムの表紙にするため、自分の描いた絵を選ぶことになった。先生が推薦したのは動物がたくさん描かれた絵。タイトルを聞かれ、私は「楽園の絵」と答えた。聖書に書かれた「エデンの園」を意識したのだろうが、「エホバの証人」の話を他人にするのはまずいと当時から思っていた私はその絵を表紙にするのを断り、遠足で芋掘りに行ったときの絵を選んだ。私の卒園アルバムの表紙はサツマイモの並んだ畑になっている。


 給食当番の時、シチューの入れ物を一人で運ぼうとして倒してしまい、足に火傷をしたことは以前話した。給食は各階の置き場から当番が自分のクラスに運び込むことになっていた。結局この日のシチューは他のクラスから少しずつ分けてもらいまかなったが、私の足の火傷は水ぶくれになってしまい、しばらく片方サンダル履きで過ごすことになった。幸い現在は痕跡は残っていない。


 給食は私が小学校に通う間に大きく進歩し、四年生から通った小学校ではごはんの入ったアルマイトの弁当箱が加わった。米飯給食は昭和51年から始まったとのことなので、私の小学校での導入は少し遅れたようだ。もちろん定番のコッペパンやソフト麺、きなこの付いた揚げパン、カレー味のシチューや鯨の竜田揚げなどのメニューはよく食べていた。

 ただし苦手なものもあった。干しぶどう入りのパンだ。幼稚園の頃は干しぶどうの袋を茶箪笥に入れてもらいおやつとして食べていたくらい好きだったのだが、パンに入ったものはなぜか苦手だった。他に給食がきっかけで嫌いになったのはパイナップルだ。牛乳と一緒に食べたところひどい味がして一気に苦手になった。給食に関係なくずっと苦手なのはトマトだ。ケチャップ系は問題ないが、形が残っているものや種は大嫌いで、味噌汁と一緒に飲む込む等、無理して食べていた。


 小学校時代、私は図書室から借りてきた本を読みながら登下校していた。「二宮金次郎みたいだ」と言われていたがもちろん危険きわまりない。この習慣が止まったのはある事件が起きたからだ。ある日、いつものように本を読みながら登校していた私は、いつもの歩道ではなく、歩道と隣の団地との敷地境の小高い植栽エリアを歩いていた。気がつくと手に持っていた本がなくなっていた。私は慌てて引き返したが、結局本は見つからなかった。私はしばらく図書室に行きにくくなり、本代は結局弁償したと思うが覚えていない。


 図書室ではもう一つ記憶に残る事件が起こっている。小学校6年生の時だ。体育の授業で、担任の女性教諭が女子生徒を叱ったことからクラスメイトのリーダー格数人が担任に反発し、次の時限の授業をボイコットしようと言い出した。リーダー格に逆らって一人だけ授業に出るのも気が引ける。結局ほとんどの生徒は体育の授業が行われた校庭から戻らず、空いていた図書室の奥にある準備室に立てこもった。ボイコットに気づいた担任と級長たちは教室と図書室を往復しながら話し合い、ボイコットは一時限で終了した。解決までの間、私は準備室に置かれていたマンガによる偉人伝を読んでいた。


 四年生から通った小学校は三階建てで、三階の窓からは冬になると遠くに富士山が見えて嬉しかった。私が後年ダイヤモンド富士撮影にはまった原点でもあり、現在も外出時に富士山眺望スポットにさしかかると気になってしまう。


 次回は学業周りのことをメインに話したい。

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