第11話 弟たちや父の話

 私には二人の弟がいる。上の弟は私と3歳差で、子ども部屋では学習机を並べていた。私がそろばん教室だったのに対し、弟は公文式教室に通っており、家で計算プリントを解いていた。ケンカをしたこともあるが、おおむね仲は良かった。


 ずっと4人家族だった我が家に二人目の弟が生まれたのは私が8歳の時。奇しくも上の弟と同じ誕生日だった。出産前後は母方の祖母が泊まり込んで家事をしてくれた。

 父は早速次弟の名付けを始めた。読み方は早めに決まったが、漢字当てに苦労したようで、紙の上にいろいろな字を書いて試行錯誤していたのを覚えている。無事決まり、鴨居の上に名前を書いた紙が張り出された。

 母は乳腺炎だったこともあり、次弟は早くから粉ミルクで育てられた。高級そうな青い缶に入った粉ミルクに私と長弟は夢中になり、粉ミルクをなめてばかりいた。困った母が取った対策は、二人用の粉ミルクをもう一缶買ってくる事だった。そのうちに次弟も離乳食期に入り、粉ミルクブームは終わった。


 大きくなった次弟は母親の隣から長弟の寝ていた二段ベッドの下段に移った。長弟は私の寝ていた上段に移り、私は子ども部屋に一人で寝ることになった。

 オレンジの豆電球をつけて布団に入るが、どうしても寝付かれない夜もある。そんな時は部屋にある本棚から本を出して読んでいた。親にばれないように豆電球の下で読んでいたせいか、私の視力は下がり、中学生になると家族で一人だけ眼鏡をかけることとなった。


 次弟が湯浴みに使っていたベビーバスは大きくなって使われなくなると物置に入れられた。そのベビーバスが役立つ時が来た。長弟がカブトムシにはまり、父方の実家でカブトムシやクワガタムシを捕まえてきたのだ。大量の昆虫はベランダに置かれたベビーバスの中で暮らすことになった。上からアルミマットをかぶせ、スイカやメロンの皮をえさにして飼っていたが、寒さには耐えられず亡くなり、長弟のカブトムシブームも収まった。


 父親は釣りやゴルフ、パチンコ好きで、よく景品の菓子をお土産にくれた。駄菓子屋では買えない高いチョコレートを食べるのが楽しみだった。

 父のパチンコに一度だけつきあったことがある。ちょうど777機種がはやり始めた頃で、父はトイレに行くため私にハンドルを握らせ席を離れた。その間に777が揃いフィーバーしてしまったのだ。父は喜んでたくさんお菓子をくれたがなんとなく後ろめたく、その後は誘われても行く気がしなかった。パチンコ店には大人になってから数回行ってみたが、やはりなじめなかった。


 次回は友だちづきあいの話を予定している。

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