第41話 不吉な先触れ
そして俺は今シルヴィスと村を巡っている真っ最中なのだが・・・。
「シルヴィス様!この前は魔獣を追い払ってくれてありがとうございました!」
「あら!シルヴィス様に騎士様!美味しい野菜を入荷したんだけど買っていくかい?安くしておくよ!」
「あ!シルヴィス様だ!このまえは遊んでくれてありがとう!また遊んでね!」
よかった・・・正直シルヴィスがこの村でうまくやっていけているか心配だったんだ。
でも、この様子なら大丈夫そうだ。
「シルヴィス殿、村では上手くやれているようだな・・・安心したよ」
「フン、お主の方はどうなんじゃ?噂によると色々やらかしているようではないか?」
「それは道すがら話をしよう、まずは王国での事から・・・」
それからシルヴィスとはお互いにあったことを話し合いながら村を散歩した。
・・・背後から密かについてきているリゼ達の視線をひしひしと感じながら・・・。
そこまで信用がないのか・・・確かに絵面的には少々まずいかもしれない・・・。
「主、どうかしたのか?」
「い、いや、なんでもない・・・」
そうして気の休まらない休日は過ぎていった。
村でのんびり過ごし一週間ほどが過ぎたころ“彼女達”はやってきた・・・凶報と共に。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
???side
「姫様!!後続はほぼ壊滅!!現在先導している部隊を下げなんとか矢を防いでいますがいずれは・・・」
まさかこんなことになるとは・・・!先日奴隷を管理している屋敷が何者かに全滅させられた。
兵士いわく黒い鎧を着た化け物だったそうだ・・・その化け物は奴隷を解放しただけではなく、我がバルランド王国の貴族を殺し消えたらしい。
「ぐわあぁぁああぁ!!ひ、姫様を守れぇ!!」
数少ない我が配下達がひとりまたひとりと消えていく中、私は自分の無力さを呪った。
奴隷解放を掲げていた第三王女の私は、国にとって邪魔でしかなかった・・・。
王子である兄様たちが私の暗殺を企てている事を知った夜、奴隷の取引を禁止しているという隣国へ亡命しようと決意した。
我が国が攻め入ろうとしていることをどうにか伝えなくては・・・。
「死ぬな!!あともう少しで王都へたどり着く!どうか・・・神よ・・・」
背中に何本もの矢を受けもはやその命が尽きようとしていた時、私は神に出会った。
「あ・・・れは、街!!それに黒い鎧の騎士?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ヴァルディ殿!そろそろ門を閉めるようです!」
今日は門の修繕を手伝ったり、大変な日だったな・・・もうすっかり日も暮れたし部屋でゆっくりしよう・・・。
「ん?あれは・・・」
「き、騎士様・・・どうか我らをお助けください・・・どうか・・・兵士達を・・・ゴホッ、ゴホッ!!」
門の中に入ろうと思ったら森の奥からボロボロになったドレスを着た女性と数名の兵士が現れた、どうにも穏やかじゃないな。
異変を察知したリゼ達が駆け寄り。
「これは、今すぐ治療しなくてはッ!!シグ殿を呼んできます!」
「ああ、頼む」
とりあえず回復魔法を。
「おい!いたぞ!そこの騎士!その女を庇うなら容赦はしない!今すぐ引き渡せば命だけは助けてやる!」
そんな暇はないか・・・まずはこいつらを倒すのが先だな。
「すまないが渡す気はない」
「なら死ね!」
「その言葉、そのまま返す“連鎖する雷撃”(チェイン・ライトニング)!」
数十人いた、アサシンと傭兵は極太の雷撃によって3秒経たないうちに丸焦げになっていた。
「なっ・・・ガッ!!」
「ぎゃっ!!」
倒れているドレスの女性に再び話しかけようと思った時、仲間であろう神官がバタバタと駆け寄り回復魔法を慌ててかけはじめた。
「姫様っ!“回復”(ヒール)!“回復”(ヒール)!“回復”(ヒール)!」
「アニス・・・私はもう助かりません・・・騎士様、我らを救って頂きありがとうございます・・・」
神官が必死に回復魔法をかける中、姫と呼ばれている女性は浅くなってきている呼吸で感謝を伝えてくる。
「姫様・・・ヒック・・・」
「アニス・・・後のことは貴女に任せました・・・王都に向いなさ・・・い」
事情も聞いていないのに死んでもらうわけにもいかない、それにかなり重要な案件だろうし。
「アニス殿・・・でいいか?私がなんとかしてみよう」
「無駄です・・・騎士様・・・最高位の神官である私の回復魔法でも治らなかったのです・・・もはや姫様を救うことは・・・」
「“回復”(ヒール)!」
“回復”(ヒール)は魔力のステータスが高いほど効果が増す・・・俺なら治せるはずだ。
「・・・かはっ!コホッ!」
魔法による損傷や切り傷がみるみる治っていく、まるで逆再生を見ているみたいだな。
「これは・・・」
「姫様!!・・・貴方は何者なんですか?見たことがありません・・・こんなデタラメな回復魔法・・・!」
何者と言われてもな、冒険者だということは伝えておいた方がいいか・・・妙に怪しまれるのもなんだし。
「私はこの国で冒険者をしている、ヴィス・ヴァルディだ・・・もう少し違う出会い方をしたかったものだがね」
「ふふ、そうですね・・・私はバルランド王国の第三王女、ステラと申します」
この世界に来てからトラブル続きだな・・・また大きな問題が増えそうだ。
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