第40話 邪神
この屋敷の管理を任されているらしい貴族の男は勝ちを確信したように語る。
「馬鹿な貴様らに教えてやろうこの国の資金源は奴隷だ!家畜にも劣る奴隷共が高い金で売れるなんておかしいと思わないか?クククッ!」
「所詮奴隷なんぞ我らの道具でしかない!弄び!飽きたら捨てる!その程度の存在だ」
男は結界に守られている建物の屋上から話し続け、リゼ達はあまりの醜悪さに眉をひそめていた。
だが・・・ノワルがとった行動は意外なものだった。
「ふざけるんじゃないニャ!」
なんと屋上に向けて矢を放ったのだ、普段は陽気な彼女が激情を隠そうともせずに。
「無駄だ!!この結界はドラゴンのブレスでさえも無効化する!」
「なっ!ドラゴンのブレスだと!?そんな結界あるわけが・・・」
リゼ達の反応はいたって普通の反応だ、ドラゴンのブレスを引き合いに出されてはこうなるだろう。
「お前達が救ったあの“クズ共”も本来はそうなるはずだったんだぞ?ククッ!」
俺は建物の壁に手が届くところまで歩き。
「ん?何をしている、じきに王宮からの精鋭が大量にくる!お前達は・・・」
拳を振り上げ壁に叩きつけると、バリン!と結界が弾け壁には巨大な穴が開いていた。
男は空いた口が塞がらず、声も出ない様子だ・・・コイツは絶対に許さない。
「安心しろ、お前も今からこうなる」
「ヒィ・・・結界が!?ば、化け物!!!」
衛兵の一人がそう言うとそれを合図に恐怖が伝染し衛兵達はパニックを起こした。
「た、助けて!?」
「何してる早く逃げろ!」
「ヒィ!!?」
結界があると気を抜いていたのだろう“ドラゴンでさえ壊せないものを破壊できるはずがない”と。
「さて、屋上へと向かうとしようか?」
「「「「「ハイ・・・(ニャ)」」」」」
顔を引き攣らせ返事を返すリゼ達を尻目に屋敷の中に入り奴隷達を解放しつつ屋上へと向かった。
「くるな!?この化け物め!この屋敷は奴隷売買の要所・・・つまりこの国の資金源だ!こんなことをすれば貴様の国もタダでは済まんぞ!!」
「御託はいい、それよりその手に持っているスクロール・・・それがお前の切り札か?」
「ク・・・クク、そうだ・・・これは私が国王から授かりし闇魔法のスクロール・・・神話の邪神が使いしの魔法と言われる闇魔法が封じ込められている!」
「!!闇魔法だと?」
マズイなこの世界の闇魔法は異常な効果がある・・・俺はともかくリゼ達が喰らえばタダでは済まない。
「そうとも・・・後悔しても、もう遅い!!貴様らはここで始末する!“闇よ”“全てを飲み込め”・・・」
「皆!私の後ろへ!」
「は、はい!!」
この世界に来て初めて盾を使うな・・・。
「“対闇防御陣”(フルガード・ダークネス)!」
「終わりだ!“漆黒の死弾”(デス・バレット)!」
えっ?これって初級の闇魔法・・・しかも威力が増している様子はない・・・。
拳ほどの大きさの黒い球が迫り俺の盾に衝突する、その衝撃に備えていたが魔法は見えない壁に阻まれ“パシュ”とあっけなく消滅。
おそらく全攻撃耐性EXが発動したんだろう。
「な、何をした?貴様・・・!!」
「何もしていないが、今のは本当に闇魔法か?」
威力が弱すぎる、スクロールの魔法は誰でも手軽に使える分魔力の影響を受けない・・・だからか?
「拍子抜けしたな、今度はこちらの番だ」
「ありえない・・・こんなことあるはずが!!」
俺も使ってみて威力がどうなるのか試してみるか。
「私が本当の闇魔法を見せてやろう」
「ク・・・クハハハ!!馬鹿なことを!!闇魔法は神話上の魔法!この世で扱える者など魔王ぐらいだ!!」
「ならその目で確かめるがいい、“漆黒の死弾”(デス・バレット)!」
闇の弾は瞬く間にふくらみ人ひとりを簡単に飲み込めるほどに巨大になった。
やはりそうか、闇魔法の威力が高いのは魔力が高いのも影響していたのか。
「ま・・・魔王・・・い、いや・・・邪神・・・ぎゃああぁああぁ!!!」
男はそう言い残し闇の中に消えていく・・・やがて声も聞こえなくなり魔法が通り過ぎた後にはこの世界から完全に消えていた。
「これで一件落着だな」
背後で“ドウッ”と音が聞こえ振り返ると放った魔法が山を抉っていたが、不可抗力というやつだ・・・俺は悪くない、俺は悪くない。
「ヴァルディ殿・・・山が・・・」
「リゼ殿!」
「ひ、ひゃい!」
「見てくれ!朝日が眩しいな!」
俺はなんとか誤魔化そうとする。
「いや・・・ヴァルディさん・・・山・・・」
「・・・ここでは何もなかった・・・山は勝手に崩れた」
「無理があるニャ・・・」
その後リゼ達の追求をなんとかやり過ごし、捕縛される前にゲートを使いシグの村で保護した奴隷達の様子を見ることになった。
本来は片道で半月かかる旅を九日で終わらせてきたなんて言ったらどうなることか・・・。
「というわけでシグ殿、シルヴィス殿、半月程度ここでゆっくりさせてもらいたいと思っているのだが」
「は、はい!もちろんです!半月と言わずいくらでも・・・///」
「それより主人よ・・・儂に何かいうことがあるのではないか?」
シルヴィスに言う事?あ・・・そうか。
「ああ、久しぶりだな・・・元気にしていたか?」
「違うわ!この前来た時になぜ儂に顔の一つも見せんかったんじゃ!」
口を尖らせぷんぷんと怒るシルヴィスはどうやら顔を見せなかった事にご立腹の様子だ。
このあと村を一緒に巡るという条件で許してもらったのだが、なぜかシグとリゼはむむむとうねり声をあげシルヴィスは勝ち誇った様な顔をしていた。
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