第11話
何を考える間もなく、駆けだしていた。目的地は、確かに見つけた。ふと、両の手を見下ろしてみる。何も握られていなかった。肝心要の目的が、最初から抜けている。何も持っていないことを認識したら、もうダメ。名前を付けられる前の衝動が、霧のように薄く広がって消えていく。揮発性の燃料がなくなって動けない。他に何も積んでいない。
歩道の真ん中、立ち尽くす。人の流れは、止まらない。水のように私を避けて流れ続ける。
追いかけていた影は、私なんかに気付くことはなく、洋食屋の中に消えていった。
何が、私を動かしたのだろう。唯一、分かるのは、古宮澄という人間が、円の中心点に居ることだけ。追いかけて店の中に入る勇気はない。だからといって、この場を去る踏ん切りもつかない。
メッセージアプリを立ち上げて母親に向けて、帰りが遅くなる、とだけ打ち込んで、送信。
「ねぇ。古宮さん……私、どうしたいの?」
呟きは、アスファルトの上に転がって、踏み潰され、地面の汚れの一部に混ざって、見えなくなった。
咄嗟、握りしめたのは、先延ばし。
道路の向こう側にある洋食屋。相対するように、ついさっき訪れたばかりのカフェが変わらず営業中。イートインスペースには、道路に面した窓際のカウンター席がお誂え向きに用意。
まるで、ストーカー。或いは、探偵の真似事。
丁度、飲み足りない、と思っていたところ……なんて、言い訳を手元に忍ばせる。呟いて、店の中に入る。長丁場を見越しお手洗いを済ませてから、注文したのは一番大きなサイズ。生まれて初めて、頼んだサイズ。一枚、お札が消えた。飲みきる頃には、お腹の中は、ちょっとした湖になっているかもしれない。
カップを持って、カウンター席に座り、鞄の中から参考書とノートを広げる。長期戦の準備は万端。
店の前を通る人々。その人達から映る私は、カフェで勉強しているどこにでも居る女子高生。
決して、勉強するフリでは無くて、きちんと、授業の予習復習を満遍なく積み重ねていく。とは言っても、意識は殆ど、ガラスの向こう側。効率はいつもの二割くらい。シャープペンシルを動かす速度は、徒歩よりも遅い。
ちら、ちら、と向かい側へ意識を向けながら、時折、ラテを啜る。やっぱり、後を引かない程度の甘さが、丁度良い。サラリーマンに、主婦、それから学生。私と同じ学校の制服も居れば、目に馴染まない制服も映る。同じようで、変わり続ける景色。
朱が、濃紺に殆ど飲まれていって、街灯や店灯りが人々を照らす。街路樹が通り過ぎる風に眉を顰め、葉を揺らす。風に流され、流れる人波も少し色を変える。見慣れた制服が、ピタリ。小さな影が私の前で止まる。ほんの少しだけ、流れを堰き止めた。
目が合う。声は聞こえない。けれど、向こう側に見える肩口で切りそろえられたショートカットが、揺れる。薄い唇が動いて、私を呼んだ。
熱を奪う夜風に晒される、首元は、寒そうで。ストールの一つでも、巻けばいいのに。
「一葉」
眉間に皺が寄っている原因は、私か、それとも寒さだろうか。急用、と言う名の一方的な逃亡をしてから、小一時間。隣には他のプリーツも、小春も居ない。
ジッと見つめていると、一枚隔てた向こう側、一葉の後ろに大股で歩く一人の中年男性が迫っている。
「後ろっ」
声は届かず。一葉は、中年男性に態とらしく肩をぶつけられる。小柄な一葉が踏ん張れるワケもなく転びそうになって、窓に手を突いた。一葉が目を細め、睨み付けた先には、もう、姿はなくて。苛立たしげに、体勢を立て直した一葉。私を一瞥してから、人波の中に戻っていく……こともなく、店の中に。
五分もしないうちに、私の隣に、小さなセーラーが収まった。小さなプラカップの中には、生クリームがぐるぐると山のように渦巻いていて、見るだけで胸焼け。
「災難、だったね」
「さっきのアレ? 居るんだよね。私が小さい事を小馬鹿にするように、ぶつかってくるちっさいヤツ。大体がおっさんかおばさんかの二択」
「てっきり、怒鳴りつけるかと思った。凄い表情してたし」
「ないない。あんなのと、言い合いしたら面倒だし絶対にスッキリしないから。ムカつくけど、スルーした方が、結局マシ」
「大人なんだ」
「前に、似たようなおっさんが向かってきたことあってさ。ぶつかってくるのが分かってたから、思いっきり肩を鳩尾にぶつけてやったんだよね。身長低いから、こう、上手い角度で、グッと」
気付けば、シャープペンシルから手は離れていて。力が抜けたのは、呆れのせい。
「漫画みたいに、ぐえっ、ってその場で、スッテンコロリン。すっごい間抜けだったから笑っちゃったんだけど、面白かったのはそこまで。その後、凄い顔でキレ散らかされたんだよね。蛸みたいに顔真っ赤にしてさ。前見て歩けとか、最終的には年上に対する態度かー、とかね。めっちゃつば飛んできたのが、一番、気持ち悪かったなぁ」
「……大人、じゃないね。どっちも」
肩を竦めて啜ったラテは、とっくに冷めていた。
「私は予備校に寄った帰り。で、海月は?」
どうして、ここに。聞く前に機先を制されてしまう。単刀直入な物言いは、どこか心地良い。
「自分でも、何をしてるのかわかんない」
カモフラージュとして勉強道具を広げてはいるけれど、一葉には通じない。
「そのまま帰ればよかったのに」
「友達を見かけたのに、無視して帰るような薄情者に見えるってこと?」
「だって、面倒ごと、嫌いじゃん」
「なんか釈然としない……まぁ、当たってるんだけど」
ノートと参考書をパタリ。閉じて、端に寄せる。洋食屋は繁盛しているようで、思ったよりも客の出入りが激しかった。
「今日の海月なんて、めんどくささの塊だったからね」
「だから、帰ればって言ってるの。自覚してるから」
一葉は、あまり人と関わりたがらない。面倒ごとは避けるし、深く踏み込んだりもしない。
「ほんと、めんどくさい。ウジウジ悩むか、暴走するかのどっちかにしてよね、めんどくさい」
「……めんどくさいめんどくさいって、言い過ぎ。めんどくさい相手が嫌いなの分かってるってば」
そんな一葉が、私といつの間にか居るようになったのも、距離感が楽だったから。互いの、丁度良い距離感が、合致していた。それだけ。
「はぁ?」
ふくまれた棘が、チクチク、と私の皮膚を刺激する。苛立たしげな半音高い声色。きっと、眉間に皺寄せた表情をしているんじゃないだろうか。表情を、覗き見る。
「それ、当たってるけど、なんか的外れだわ。あくまで、基本は、とか傾向として、みたいな話でしょ。海月、かしこぶってるけど、結構バカだよね」
「えっ?」
怒り、苛立ち、不機嫌、無関心。四層構造のミルフィーユを向けられると思っていたけれど、浮かんでいたのは、苦笑い交じりの呆れ顔。カップの縁を、五本の指で持ち、くるくる、回しながら、窓の外を見つめる。
「受験に就職、色々、荷物持たされてるんだから、楽したいのは当然。めんどくさいこととか、人間関係とか、出来るだけ避けていきたいのは、海月の言うとおり。ドンピシャで当たってる。その辺のバランス感覚が海月は上手いから、つるむようになったのは、確かに、そう」
特に互いに連絡をしなくとも、話したい時にだけ話す。仲間意識というものは持ち込まなくとも、それなりの歩調で、そこそこ近くを歩く。肩がぶつからないくらいの距離を。
一葉が求めていたのは、負担にならない相手。私にとっても楽だったから、自然と、一緒に居ることが増えていた。けれど、今の私は真逆。自分を制御できず、周りを振り回している。
「今言ってるのはそういうことじゃないんだわ。例えば、野菜が嫌い。でも、ネギは好きみたいな感じ」
「はぁ」
紙カップを片手に持ったまま、人差し指をピンと立て、指先を私に向ける。唐突なたとえ話。いまいち、一葉の言いたいことが分からない。
「勉強は嫌い。だけど、数学の授業だけは楽しみ、とかそういうことなの」
要領を得ない。それでも、なんとなく言わんとすることは分かってきた。
「わかんないかぁ……こういうときに察しが悪いのはなんなの。海月から、察しの良さとったら、何が残るわけ?」
「愛嬌、とか?」
「自分で言う辺りが可愛げ無いわ。減点。とか何とか言いながら、大体は、分かってるんでしょ」
「なんとなく」
但し、前後の話が紐づかないだけ。一葉は、何を伝えようとしているのか、と。
夕方過ぎて、夜の入り口。学生や社会人もカフェでひと休み、という時間ではない。少し前までの慌ただしさが嘘のように、店内はがらん、としている。一葉は、ストローから甘い液体を吸い込んでから、ぼそり。
「一回しか言わないからね」
身構えて。小さく、頷く。何が出てくるのだろうか、と。
「疲れたりめんどうなことは嫌い。でもさ、めんどうでも海月は好きなの。そういう良いも悪いもひっくるめたのが友達なんじゃないの」
逸らされた目線は、窓の外、向かいの洋食屋に向いていて。
「あー、恥ずかし」
太陽は沈み切っていて、僅かに空の橋に赤みを残すばかり。不思議と、一葉にも朱色を置いていったみたいで。
パタパタと、空いた手で顔を扇ぐ姿を、ぼぅっと見つめる。
「な、なに……?」
微かに流れていたジャズミュージックも、溢れる雑踏も、耳に届かないほどの遠くに離れていって。
「今の面倒くさい私、嫌いじゃないの……?」
「その質問が面倒なオンナそのものだわ」
布一つにすら包まれていない、剥き出しの言葉。なのに、胸の内側には一つの擦り傷もついていない。角の落とされていない角ばった言葉でも、構成する声色がマシュマロのように、柔らかい。
「私は、海月みたいに器用じゃないって知ってるでしょ? だから、嫌いになっても無理に付き合い続けるなんて出来ないんだよね」
知っている。嫌いなことはしないし、疲れることは避けたい。誰もが持っている当たり前の部分が、人よりも少し、強いことを。
「今の海月が結構面倒だっていうのも、私にだって分かる」
「……だよね」
だから、嫌われる。距離を置かれる。一葉の望む瀬戸海月ではないから。
「でもさ、面倒だって分かってても、私は海月と話したかったのよ。なんでか、分かるでしょ?」
思いつくのは、伝えられたばかりの言葉。
「友達、だから……?」
オウム返しのように答えを返すと、『恥っず』と呟いて、また、ストローを咥えた。
「改めて言葉にされると、小っ恥ずかしいわ。きっかけは付き合うのが楽そうだから海月と絡んだ。でもさ、一年も付き合い続けてたら、少しは友達っぽいことをしてあげたいくらいの情も湧くワケよ……ちょっと話を聞いてみようかなってさ」
友達。改めて、言葉にされて、じわり、染みこんでくる。好かれ、記憶に残ることばかり考えていたから。改めて、友達だから何かをしてあげたいだなんて、考えたこと無かった。
「周りを振り回して、面倒だなって思った。思ったけどさ、自分でも意外なことに、ちょっとくらいめんどくさい海月の方が私は好きっぽいわ」
いつもの、瀬戸海月ではない、コントロールの効かない私。一葉に好かれる要素なんて欠片もない。自分でも見ることのなかった、私自身。自分勝手で、空気も読めない。嫌われて当たり前、だと思っていたのに。
「……嫌われないんだ」
「あばたもえくぼってこと。多少の欠点の一つや二つある方が、可愛げがあるわ……自己中な一面を見せたきっかけが、古宮だってことだけは気に食わないけど」
素の私。自分がどれほど頑張っても出せないほど、奥底に引っ込んでしまった部分。それを、引きずり出してくれたのが、古宮さん。
「一葉はどうして古宮さんが嫌いなの……?」
「珍しいこと聞くね。大体、誰にでも嫌われてる……っていうか、ハブられてるのに」
「……そんな理由で、嫌ったりしないでしょ?」
「まぁね。ホントか嘘かわかんない噂とかはどうでもいいし、それが私に関係しないからどうでもいい。無駄に美人だなとは思うけど、私、美人よりも可愛げのある方が好きだし」
「昔何かあった、ワケでもないんだよね」
「全然。中学校も別だし、話したことも二年になってから数えるほどしかないかな」
一葉は、どうでもいい噂話を否定もせず肯定もせず。ただ、そこに自分の感想を付け加えるだけ。『何処で何をしててもおかしくない』『空気が読めない』と。
「あー……」
手に持ったカップを、ことり、カウンターの上に置いてから頬杖。目元はけだるげに、覇気がない。
「簡単な話、同属嫌悪ってやつ」
たった一言で、すとん。腑に落ちた。
「……それは、わかるかも」
自分を偽らず、憚らない性質の二人。程度の差はあっても、方向性は、凄く似ていた。
「でしょ? 私も結構、言いたいこと言うけどさ……それでも、場の空気とか、言っていいことを考えてるつもり」
考え方も性格も離れている。ただ、背筋に一本線、それぞれ、自分の色を通している。
「あれは、甘えてるんだよ。そのうち、自分を受け入れてくれる誰かが居るんだってさ。自分は合わせようとしないのに、周りには合わせて貰おうって言うのが気に食わないの。そんなの、宝くじに当たったらー、とか白馬の王子様がーって妄想するのと一緒。私だって、妥協? してるのに、っていう当てつけ半分」
「甘え、か。厳しいね」
「それで、色々あったわけよ。小春にも迷惑かけたしね」
「小春とは幼馴染みなんだっけ?」
「まぁ、小学校の途中から一緒だったのを、幼馴染みって言うなら、そうかな」
一年も一緒に居たのに改まって話すと、幾らでも知らないことが出てくる。小春と付き合いが長いことや、中学校までもっと自分勝手だったこと。
遊んだり、話したりはしたけれど……内側を曝け出すような会話はしたことがなかった。踏み込みすぎず、程よい距離感を維持していたから。だから、話してくれるどれもこれもが新鮮。二人だけで話し込むなんて、いつぶりだろう。このまま、店が閉まるまで、なんでもない話をのんべんだらり、続けていたい。
向き合っては居ないけれど、大きな窓に薄ら反射する、二つの顔。まるで、双子のように、同じような笑みを浮かべていた。
「あっ」
時間も忘れていた。けれど、この場所に陣取って、窓を見つめていると……スーツのシルエット、古宮さんの母親達が向かいの店の入ってすぐの場所で会計を済ませている。
「……海月?」
出てきた二人は、アルコールでも入っているのか、妙に距離が近くて、腕を組んでいた。
「アツアツだね……」
「うん」
何を話しているのかは分からないけれど楽しそう。ゆらゆらと揺れたり、身体をくの字に折って笑い合ったり。
「どうかした?」
言葉少なく、静かになった私。頭に浮かぶのは、やっぱり、古宮さん。
「あの、さ」
視線の先には古宮さんを構成する主成分が、知らない男の人と歓談している。
「私が、古宮さんにとっての白馬の王子様になりたいって言ったら、どうする?」
私の口から飛びだした、言葉。自分でも何を言っているのか分からない。きっかり、十秒の沈黙。そして。
「えー……」
苦虫を口いっぱいに突っ込まれてしまったような渋面。嫌われてしまうような行動を躊躇苦無く取ってしまう、面倒くさい方の私。表に出てくるようになったのは古宮さんと出会い、望まれたから。
「そうだよねぇ……古宮は兎も角、海月はそっちの方がいいからなぁ……」
ボソボソと呟く一葉を横目に、窓の外を見る。店先で楽しそうな笑顔は、アパートでは見せた表情とは全く色が異なっていた。
本当に、追いつきたいなら、今すぐ店を出ればいい。だというのに、座ったまま、荷物をノロノロと片付けている。見失ったら見失ったで、この衝動も諦めてくれるだろうから。結局私は、どちらにも天秤を傾けることも出来ず、前にも後ろにも進めない。
「誰かと仲良くすんのに、許可を取らなくていいって。それが、王子様になるんなら、尚更ね……海月が王子様って似合わなすぎだけど」
「それは、言葉の綾って言うか……そもそも、言い出したのは一葉でしょ」
「そりゃそうだ。海月、どっちかって言うとお姫様って顔だもんね」
一口の端を吊り上げて笑う。けだるげな、起伏の乏しい一葉だけれど……薄布一枚向こう側は、極彩色のオーロラみたいに、色彩で充ちている。
顔を出した素の私は、古宮さんを追いかけたがる。注ぎ込まれた燃え上がるナニかの名も分からないままに、走り出してしまう。
同時に、一葉や小春の前での友達としての私がブレーキを掛ける。そっちに行くと、こっちが疎かになるぞって。
「でも、一葉は古宮さんのこと、嫌いなんでしょ……?」
古宮さんに言われたとおり、取り繕わない瀬戸海月は、一葉や小春の前での瀬戸海月とは相容れない。一つ分の演台には、片方しか立てない。
一葉という友達を失いたくない。その想いは、この少しの時間で更に大きく膨らんで、切り捨てるなんて、絶対にできない。
隣で、私のより二回り小さいカップを思い切り喉を鳴らして飲み干す音。まるで、お風呂上がりに牛乳瓶を一息で飲んでしまうような豪快さで。目を丸くしながら、見つめていると。
くしゃり。握りつぶされた。
「好きにすればいいんだってそんなの。友達なんだから、気を遣わないでいいからさ」
握りつぶした手、人差し指を立てて私の額を小突いた。潰れた紙カップから、ほんの少し溢れた雫。額を抑える。痛くはないのに。
「……じゃあ、友達のよしみで一個だけお願いしてもいい?」
突かれたおでこから、頭の中に。一葉の言葉が真っ直ぐ、何にも阻まれずに、届いた。
「面倒すぎないことでお願いね」
友達だと思っていた。それは、今でも変わっていない。でも、どうしてだか、今は、私はこの子と友達なんだぞ、と誰彼構わず、言って回りたい。自慢してやりたい。
「今だけで良いから、自分勝手で周りを見てなくて、正直者通り越してめんどくさい、そんな素の私を、望んでくれない?」
「えぇー……」
瞬き一刻分の空隙。生まれたのは、笑顔と、隠しきれない呆れ。
「海月はそのままが一番カワイイんだから、その分厚い仮面、全部捨てちゃったら?」
小突かれたおでこの中心には、きっと、小さな穴が開いている。そこから、一葉の言葉が、真っ直ぐ、大脳を貫いて脳幹まで、全部全部、入ってくる。
くれた言葉が、本当かどうかなんてことまでは、疑わない。友達の言葉だから。私一人では、どちらにも天秤を傾けられないなら……友達に、傾けて貰えば良い。大事な友達なら、言うことなし。
半分以上残っている、ビッグサイズの紙カップを一気に、傾ける。お腹が水分でタプタプだとか関係ない。一息、全部なくなるまで、元の体勢になんて戻ってやるモノか。
「んぐっ……!!」
飲み干し、そのまま、ぐしゃり。一葉の真似をして握りつぶしてみる。少し噎せても、関係ない。
「行ってくる」
「いってら」
一言も追求せず。踏み込んでくることなく。とん、と柔らかく押された背中。今の私には、それだけで、十分。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます