第10話 陰キャの俺、復讐を成し遂げる(アヤネ母・風雲編)
《アヤネ(母)視点》
だだっ広い部屋の真ん中に大きなベッドが堂々と鎮座している。
ベッドの上からは童貞役である白ブリーフの中年男たちが、ソワソワした様子でこちらを見つめている。
監督のポリャンスキー内藤さんのスタートの合図で私は煽情的な黒のネグリジェ姿となり、ベッドへとゆっくり近づいて行く。
「あら、あら、あらぁ?ずいぶんおいしそうなチェリーくんたちがいるじゃあなぁ~い♡」
☆☆☆☆☆☆
はじめはこんなことになるなんて思ってはいませんでした。
夢に向かって頑張る娘。
そんな娘の夢を必死に応援する夫。
ふたりを陰で支える私。
幸せな未来が待っていると信じていました。
でもそんな穏やかな日々は長くは続きませんでした。
借金についての口論が絶えず、すっかり冷え切ってしまった夫婦関係。
スーパーのパートでの肉体的疲労。
さらには金策であちらこちらを駆けずり回る毎日に、私の精神はもう限界を迎えようとしていました。
そんなある日私は街中で偶然、高校時代の彼氏(現役バックダンサー)に声を掛けられました。
私たちは連絡先を交換し、その後何度か会って食事をするようになりました。
そんな私たちが親密な関係となるのは時間の問題でした。
不倫関係になって数か月後、私は元カレの紹介でモデル派遣事務所に登録。
日々の生活費にも困っている私にとって、いわゆる“とっぱらい”でお金をもらえる点がなによりの魅力だったんです。
事務所の社長に言われるがままに契約書にサインをする私。
……それが私にとっての〈あやまちのはじまり〉だったんです。
☆☆☆☆☆☆
――――私は今何をしているんだろう?
じんじんと痺れる頭で私はそう考える。
都内の某所にある事務所兼撮影スタジオ。
早朝からの撮影スケジュール。
カメラマン、メイクさん、部屋の中を動き回るその他のスタッタたち。
初めての経験に最初はとまどいを隠せない私だったが、とにかく監督さんの指示に従い次々とシーン撮影をこなして行く。
――――どれくらいの時間が過ぎただろうか、そこには今やカメラの存在すら忘れひたすらに行為へと没頭して行く私の姿があった。
私は三人の男優たちの上に次々と馬乗りになり激しく腰をグラインドさせて行く。
スタッフたちが固唾を飲む緊張感の中、私の腰の動きはいよいよその鋭さを増す。
男優さんたちは必死の形相を浮かべ何かに耐えている様子だ。
私はそんな男優さんたちをにらみつけながら口汚い言葉で思い切り罵る。
そして私はついに自らの腰を激しく上下動させ、泣き喚く彼らを激しく責め立てて行く。
昼下がりのスタジオ内には、ただ私の絶叫だけが響いている。
――――「おほっ♡おほっ♡♡おっほぉぉ~~ん♡♡♡♡」
くり返しになりますが、はじめはこんなことになるなんて思ってはいなかったんです……。
★★★★★★
その後この作品は無事に某大手熟女AVレーベルからリリースされることとなる。
――――作品タイトルは
“THE DEBUT”~五反田ジェシカ(42才) <元CA人妻が童貞キモメンたちとベロちゅうFUCKしちゃいました♡>
新人としては好調なダウンロード数を記録しており、上々の滑り出しを迎えている模様。
販売サイトのコメント欄には、
『次回作が出たら絶対予約します!』
『ニッポンのAVサイコーデス』
『地方の者ですがサイン会イベントはいつになりますか?』
『ジェシカ姉さん、一生ついて行きます!』
などなど熱いコメントが多数書き込まれているらしい。
【完】
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