8,首持ちおじさんの店??

 正直、びっくりしたな。ビックリした点はたくさんある。

①閉店すれっすれに客が来ること

②自分の物っぽい首を抱えていること

③マスターが平然すぎること

④何かをこらえているのか唇を必死に噛んでいたこと

⑤おじさん1人がバレンタインメニューを頼んだこと

⑥意外とおしゃれ好きなこと

・・・・・・・・のようなことだ。


そんな中、私が運んで、また店に戻るときにチラッと振り返るとPCペーパーっぽい

紙に何かが表示されていた。どうやら、今日の日記っぽい。その内容は――

「客のコンプレックスに対する話し方も分からないのか。そんなもんで、良く

カフェのバイトしてるな、小娘よ」

という内容が目に留まった。どうやら、話し方がまずかったようだ。

「あの、変なこと話してしまい、すみませんでした!!」

「もしかして、日記覗き見したのか?」

「え」

「したっぽいな。そういうところだ。ダメなものだ。あいつはそんなところを

しっかりと指導しないのか。うちに来い。教えてやるから」

「へ??」

どうやら、このおじさんも店を出しているらしい。


 帰って、キャンピングカーについているバスルームにグレイスはいた。今日は本当

に色々なことがあったから久しぶりにゆっくりと風呂に浸かっていた。今日はいつも

は好まない入浴剤も入れてみた。カフェで料理を作るとき、余ったサツマイモを

そのまま入浴剤にしたものだ。実は販売もしているのだが、あまり目につかない。


ガチャ

「きゃっ!!」

「あ、ごめん。グレイス入ってたんだ。私も入っていい?」

シャーロットだった。シャーロットだったらいろいろ打ち明けられそうだ。

「いいよ。サツマイモの入浴剤入れてるし・・・・・」

「やった!!それ大好きなんだ♬」

そう言うと、いきなりシャーロットは湯船にダイブしてきた。

「わ~っ!!」


「ねえねえ、今日変な話聞いたの。聞いてくれない?」

「いいよ」

いいよって言っても、私が色々吐こうと思ったのに・・・。これでは一方的に話を

されるだけになってしまいそうだ。

「あのね、今日最後のお客さんが自分の首を手に持つオシャレおじさんで」

「何それ、いきなり怖くない?」

「それでさ、私が気になって色んなことを根掘り葉掘り聞いちゃったわけなのよ」

それはまあ・・・・・。

「それで、その人の日記を覗き見しちゃったのね」

「それに、私が言ったことに対する愚痴が書いてあって。言った頃を詫びたら

『日記見たな?』って言われて」

「ねえ、シャーロット荒れまくりだよ??」

「そんで、おじさんが『うちに来い。教えてやるから』って言って。『うちに来い』

っていうのはおじさんの店だと思うの」

「ああ、確かに」

意外といい推理するじゃないの。

「それでね、私思ったの。一回そこ行ってみたいって」

「ああ、そうなんだ。それじゃあ一緒に行こ――――え」

「どうしたの・・・・・」

「えぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!」


 リュークが首持ちじじいの話を聞いたのはバレンタイン翌日だった。

シャーロットがじじいが店を開いているかも知れない、そこに行ってみたいと言って

きたのだ。グレイスはめちゃくちゃ驚いて、風呂場で立ち上がって怒鳴ったらしい。


もっとも、それはその通りだ。なぜかというと、ここの掟で『店長の許可がない

限り他の店に行ったり、誰かのご飯を食べないこと』というものがある。店長とは

マスターのことだ。その掟を破ってやつは1人で言ってしまったわけなのだから。

マスターはキレるだろう。店の掟を破られたわけだから。だが、この店の掟は

マスターの父親が決めたことらしい。だからキレるかは分からないところだが。


リアクションを楽しみにしながらもマスターにそのことを聞いてみた。

「おお、そうか。私も行きたい。連れてってくれ――」

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