7,首を持ったオシャレおじさん

 先程のB区域の状況が想像できない。D区域では目まぐるしく客が入れ替わって

ゆく。それは、良いことだがグレイスと黒犬のことがあって疲れたのかみんな

連接エンジンナシキャンピングカー(運転席がない部屋だけのキャンピングカー。

移動するときはキッチンカーが引っ張る)だ。この車は「ミステリー・サイト」が

販売する「クワシーノ・ハナセルノ」という会話できるソフトに作り方を教えて

もらい、みんなと、常連客で作ったキャンピングカーだ。


話は変わるが俺の得意料理はパフェだ。顔も体もごつく、顔も険しいのでよく

意外と言われる。でも、パフェやシェイクが好きなことは言葉では変わらない。


ところで、今、店頭にいるのは俺とマスターだけだ。

「なあ、ジェイムソン。パフェの注文来たぞ」

「ああ、分かりました、マスター。なんのパフェですかー?」

よし来た。やってやるぜ。

「『意外とアリ?探察☆ナガイモパフェ』だ。今日は何分以内で行くか?」

「5分で行きます」

「分かった、材料はみんなここにある」

「分かりました、今からやります」

“険し爽やか”な感じの笑顔で俺は元気よく答えた。


 目覚め方は気持ちよくなかった。黒犬の灰が入った唾液が爪の間に入っている。

「いてっ。ココ、いつ治るんだろう・・・・・」

おでこの右側に、黒犬の歯がかすったキズ。。2020年代に有名だったアニメ

キャラ、『炭次郎すみじろう』のデコにあるキズのようなものだ。


朝のストレッチを済ませて店頭に行く。

「ふぁぁ。おはようご・・・・・ざぁいまぁす・・・・・」

店頭に出ているのはマスターとジェイムソンだけだった。

「おはよう、グレイス、調子よくなったか?」

「全然。ゼリーは??」


ゼリーとはジェイムソンのあだ名。ジェイムソンの「ジェイ」を

ジェイ→ジェリ→ジェリー→ゼリーという感じで変化して、ゼリーとなった。

いかつい顔に似合わないからか、そう呼んでいるのは私だけだ。


「なあ、今から仕事できるか?俺、グレイスの代わりでウェイトレスするよ」

「わあ、リュークじゃん」

「あ。グッモーニン」

「起きたの?変わってくれる??」

「いいよ」

まだ寝られるらしいが、快眠できないから小説でも読むことにした。


 もうすぐ、日が落ちそうだ。ドラキュラカフェ、伯爵のルイ・クロード・ルーチス

は虚ろな目をしている。もうすぐ閉店時間なのに、バレンタインメニューが売れな

かったからだ。そんな時こそ、我の出番だ。

「おっとっと」

がれきから足を踏み外しそうになり思わずよろける。寸前のところで踏ん張った。


「やあやあ、グッドイブニング」

「おお、こんな時にお客さんが・・・・・」

バイトのシャーロットという女は驚きを隠せないようだ。なぜって、普段は店じまい

だもの。


「こんばんは。あちらの席にお座りください。注文はお早めにどうぞ」

「何で、マスターは平然としていられるの??」

「そんな経験はたくさんあるからな」

そりゃあ、あるさ。我は知っている。同じ時代に生きていたものだからな。そして、

あやつに追い落とされたものでもある。あの時のことは今も根に持っている。

それを爆発させたいが我慢した。我はバレンタインメニューを注文した。



5分後、バイトのシャーロットが「愛を深めて❤人血&イワシのウロコの

パフェ」と「タンポポエキスとカボチャエキスを混ぜたうまうまシェイク」両方を

持ってきた。


「ねえ、おじさんは何で

「これは、自分の首だ。我はマスターと同じくらいの年に処刑された。それで、

自分の首を持っているのだ」

「おしゃれですね」

「我はおしゃれ好きであったから今でもこうしているのだ」

想定外の質問を飛ばされて我は焦った。だが、我の頭脳で冷静を

“装って”答えた。だが、一つ言いたいこと。客のコンプレックスに対する話し方も

分からないのか。そんなもんで、良くカフェのバイトしてるな、小娘よ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る