第17話
目の前に現れた化物に僕たちは本能的に恐怖していた。
「おいおい、なんだありゃ」
「僕にもわかりません」
「わかんなくたって私はヤバいって分かるわよ」
「どうする。逃げるなら今のうちだぞ」
今なら逃げられる。アレの気が彼女に向いている今なら。
でも、そうしたら…そうしたら
「まってください!彼女は!」
「無理を言うな。いくら計算できなくてもわかるだろ」
口にしなくとも分かっている。といつでも冷静な彼は手の震えを抑えながら僕の腕を掴んで逃げる準備をしている。
「ですが!!」
「てめぇ一人とアイツ一人じゃ助ける度合いがちげぇんだ!わかってんだ
ろ!」
「はやく!!!」
「くっ」
僕は彼女を見捨ててその村から逃げ出した。
後日
ギルドで調べるとアレは高位の魔神『エンデルッツ』だと分かった。とてもではないけれど今の僕たちではかなわないだろう。
あの依頼の報告をした時にはギルドが騒然となり、村に腕の立つ冒険者が派遣されたがその時には生きる人も家畜も財も何も残ってはいなかったそうだ。
彼女、セレスティアはどうなったのだろうか…どうか無事である事を神に願うばかりだ。
生贄救出譚 野津とら @fivecats
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