第5話

ずんずんと先を歩いて行ったリーシャさんには村の中心のちょっとした広場で追いついく。


「リーシャさん!リーシャさんってば!」


「なに?説教でもしてくれるっての?」


あきらかに苛立った様子です。


「いえ、そうではありませんが落ち着きましょうよ」


「…落ち着いてるわよ」


「そうですか。では、お話を聞いたお二人が来るまでそこで座りませんか」


見るからに怒っているリーシャさんに近くにある木陰を提案します。


「…………ふん」


不貞腐れた様子で木にもたれ掛かった彼女はしばらくして話始める


「……わかっているのよ。去年そうしなきゃこの村ではどうにもできないって」


「そうですね」


度々ある事です。理不尽な事も間に合わなかった事もいくつか経験してきました。


「でも、去年の時にもし言ってくれればもしかしたら今年も誰かを選ばなくてよかったかもしれない」


「そうですね」


リーシャさんは真っ直ぐで優しくて僕らの中で一番感情豊かで表に出やすい。


「自分勝手だってわかってるもん」


「そうですね」


だからだろうか、彼女はいつだって一番に怒ってしまう。


「私は誰かの憧れになりたいだけなの」


「そうですね」


それはいつだって自分の為には怒らない、誰かのために憤って捨てようのない思いが爆発してしまう。


「そうよね。私が悩んでてもしかたないよね!!」


「そうですね」


彼女はそれを自覚しているのかわからない


「ありがとう、スッキリしたわ」


「僕は何もしてませんよ」


けれど、いつだって強く真っ直ぐで前を見ていく彼女は僕の憧れだ。


「そう?ま、いいわ」


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