登場人物 碌

※番外編ルイ・フランシス


•トマ・ラピエール伯爵

 ……グルンステイン西部の地方行政官。シュトルーヴェ伯爵夫人マルティーヌの心優しい父親。ラピエール家は伯爵家だが、グルンステインの国土の拡大期に併合された国家の貴族。あまり目立った功績は無いが、誠実な人柄と実直な仕事振りで領民には慕われている。

 頑固なギュスターヴも彼の人間性を好んでおり、ルイの知らないところで実はまめに手紙のやり取りをしていた。(主にマルティーヌを褒める内容)。



•ラピエール伯爵夫人

 ……マルティーヌのしっかり者の母親。マルティーヌはこの母親に似ている。ルイの母ロザリーヌと違ってマティルダを大変可愛がる。



•ロザリーヌ・ガブリエル・シュトルーヴェ

 ……シュトルーヴェ伯爵ルイの実母。王族公爵カノヴァス家の出身。初代のカノヴァス公爵はギュスターヴの母ソフィの実兄で、二人は従兄妹同士での結婚となる。ロザリーヌは気が強く我儘な性格で、堅物のギュスターヴと結婚するのを嫌がっていた。それでもルイを溺愛していて超が付く過干渉。ルイがマルティーヌを連れて来た時は卒倒しそうなほどショックを受けて、以降はマルティーヌ苛めに精を出すようになる。

 孫は男の子ばかり可愛がり、女の子はどうでも良かった。



•フィリップ十三世(フィリップ・エルネスト)

 ……先代グルンステイン国王。フィリップ十四世の父。番外編の段階では存命。途中で崩御し、その死が『グルンステイン継承戦争』を招く。



•フィリップ十三世の妹

 ……レステンクール国王の妃。ルイーズ王女の祖母。嫁いだ先で夫と愛妾、その取り巻きに悩まされ続けた。苦しい生活を強いられる国民のために何とか宮廷を変えようとするが、王子を一人生むとさっさと離宮に追いやられてしまった。それでも慈善事業に力を入れ、国民には愛された女性だった。

 『グルンステイン継承戦争』において息子と孫息子の暴挙の後始末をすべく尽力したが、余計に息子に疎まれ、地方の城に追い出されてしまった。その後、孫娘ルイーズを引き取り、大切に育てた。



•ルイーズ王女

 ……レステンクールの王女。『レステンクール包囲戦争』の引き金になった王女。女性の地位が低いレステンクール王国で、王女でありながら虐げられてきた。『グルンステイン継承戦争』では父王と兄王子の尻拭いをさせられて振り回された。自分に自信が無く、気弱で臆病な性格。父や兄との関係性から男性、特にすぐに怒鳴るような男性に恐怖心を持っていた。アデレードが病気になった時に見舞いに訪れたが、容姿が変わってしまった彼女にも丁寧に対応した優しい王女。

 様々な政治的理由からカラマン帝国のメロヴィング公爵のもとに嫁ぐことになる。夫婦仲は良く、歳上で物腰の柔らかい公爵と着実に愛情を育んでいたが、エドゥアールとの不義を疑われ、嫉妬したアリンダに階段から突き飛ばされる。その時妊娠していた彼女はお腹の子と共に死亡している。



•レステンクールの王……フィリップ十四世の従兄弟に当たる。フィリップ十三世の妹の子。幼い頃から実母よりも父の愛妾とその間に出来た腹違いの兄弟にもてはやされ、無能で傲慢に育つ。グルンステインの継承権を主張し戦争を仕掛けるが、コテンパンにされる。絞首刑になる。



•レステンクールの王子……ルイーズ王女の兄王子。少年期から取り巻きによって担ぎ上げられ、ダメ王子になる。アデレードと婚約したが、場を弁えない愚行によってフィリップ十四世を激怒させ、顔を斬られる。幼少期からルイーズ王女を虐げてすぐに暴力を振るって来た、全くダメな王子。

『包囲戦争』後はカラマン帝国に引き渡され、絞首刑になる。



•カノヴァス公爵

 ……ルイの母ロザリーヌの兄。父はオーベール一世の異母弟で、母はエリザ女王の同母妹。ルイの母方の伯父に当たる。カノヴァス家は王位を狙っていて、度々国王に反抗的な態度を示して来た。先代カノヴァス公爵がギュスターヴにロザリーヌを嫁がせたのも、シュトルーヴェ家の資産と軍事の掌握が狙い。しかし、ギュスターヴが思い通りに動かないのでシュトルーヴェ家に対しても次第に辛辣な態度をとる様になる。

 裏で人身売買に手を出し、失脚する。



•ユリス・カノヴァス

 ……カノヴァス公爵の息子。ルイの従兄。番外編ではすでに結婚していて、息子が三人。父と折り合いが悪く、むしろギュスターヴのような実直な人物が好み。ルイとの仲も悪くなく、陰でお互いの父親の悪口を言い合っていた。

 王宮近衛連隊に務めるが、公爵位を継いだ時に退官。本編ではフランツの結婚式の時に所有する市街の宮殿を貸し出した。妻はスティックニー侯爵夫人の実姉。

 


•メロヴィング公爵

 ……カラマン帝国の公爵。皇帝ジュール四世の叔父。教養が高く非常に優秀だった為、若い頃にジュール四世の母親に毒を盛られ半身が不自由になったと言われている。その為、宮廷の隅に追いやられていたが、本人は穏やかに静かに暮らしていた。政治的な理由でレステンクールのルイーズ王女を押し付けられたが、のんびりゆっくり、穏やかに暮らしていた。

 子供が出来て驚きつつも、自分には得られないと思っていた幸福に心が満ちた日々を送っていたが、ルイーズと子供の突然の死とその理由にカラマン帝国に復讐心を抱くようになる。

 最後は自ら毒を呷って自殺する。



•ジュール四世

 ……カラマン帝国の現皇帝。アリンダの実兄。最初の妃(ショワズール王女)との間に皇子を二人、二番目の妃(エウヘニア公女)との間に皇子を一人設けている。血統主義的な思想が強く、カラマンとエウヘニアの血が重なってこそ神聖なるカラマン皇帝となる権利があると考えている。その為、一人目の妃が生んだ二人の皇子に関心は乏しく、かと言って二人目の妃が生んだ皇子は血の濃さからか人格に問題があり、後継者に定めていなかった。

 弟妹は複数いたが一番仲が良かったのがアリンダで、この美しい妹が何よりも自慢だった。



•アリンダ・フォントノワ・グルンステイン

 ……ジュール四世の妹の一人。グルンステインの王太子妃。

 白金の髪と晴れた冬の空色の瞳の美しい女性。その為に家族で最も愛されて、蝶よ花よと育てられる。自分が美しい事を自覚していたアリンダは美しいものが好きで、兄の大帝就任の宴でエドゥアールと出会い、一目で恋に落ちる。エドゥアールのことが好きで好きでどうしようもなく、夫以外は目に入っていない。自分の中にあるエドゥアール像を逸脱した行為は望まず、「エドゥアールは自分だけを愛さなければならない」と、強烈な束縛をした。夫に似ていなかったシャルルに興味はなく、女の子であったマリーは憎悪の対象になった。

 ルイーズと夫の悪意ある噂に怒りが爆発しルイーズを殺害。それ以降さらに束縛が強くなったのは、ルイーズを殺害してしまった事がアリンダの精神に人知れず負担をかけていたから。

 その数年後、夫と子供達に襲い掛かり、エドゥアールの手によって殺害される。

 スウェーデン国王グスタフ二世王妃マリア・エレオノーラを参考にしています。



•フィリップ・エドゥアール・グルンステイン

 ……フィリップ十四世の後継者。グルンステインの王太子。十二年前の事件で妻アリンダに殺される。外貌は母ヴィクトリーヌに似て、繊細で女性的な美貌の持ち主だが、性格は父フィリップ十四世に似て武勇を誇る。国内外の様々な立場の女性からモテたが、本人は変身ベルトを付けて戦いごっこをする園児の如く、側近を連れ回して剣や戦術・馬術に夢中で、周囲が心配するほど浮いた話は一つも無かった。

 姉アデレードと二人の妹がいたので女性にはそれなりに親切だが、家族以外の女性に対する適切な対応が分からないまま、アリンダと結婚する事になる。恐らくそういった事情もあり、アリンダは余計に不安を掻き立てられたのかもしれない。

 ルイーズに対しては、「男の風上にも置けぬ屑に虐げられる可哀想な人。姉に親切にしてくれた人」結婚してからは「少しは安心して暮らせているかな」と、どちらかというと同情的な感情で気にかけていた。



•レティシア・ロイソン

 ……ロイソン子爵の一人娘。幼い頃のマリーの侍女官。十二年前の王太子夫妻暗殺事件の時に、シャルルを庇ってアリンダに殺害される。

 父親であるロイソン子爵が無骨で寡黙な人だったからか、細々とした事によく気が付く女性。母は早くに亡くなり、祖母によって育てられたからか落ち着きがある。そこをシャイエ公爵夫人に認められてマリーの侍女官となった。

 レステンクール貴族の若者と婚約していた。



•レステンクールの貴族の若者

 ……旧レステンクール王国でうだつの上がらなかった末端の貴族の若者。

『継承戦争』でグルンステインに併合された地域に領地があったが、一度フィリップ十四世に没収され、新たな土地を下賜され正式にグルンステイン貴族に叙せられる。

 頑張れば認められると信じて懸命に働いた結果、ロイソンの目に留まり、一人娘レティシアの婚約者にまでなる。本編での描写は無いが、レティシアとは上手くいっていて、彼女をとても大切にしていた。レティシアが暗殺事件の巻き添えになったと知った時に生きる希望を無くし、婚約者を奪ったとされた同胞を憎むあまり、「婚約者を騙して鍵を開けさせた」と嘘を吐く。『レステンクール人の大虐殺』を生み出した発端の一人でもある。

 もし婚約者を殺したのがアリンダと知ったとしても、結果は変わらなかったかもしれない。




※第十二話

•ユルバン・スティックニー

 ……財務大臣スティックニー侯爵。当初はグラッブベルグ公爵と一緒になってシュトルーヴェ伯爵を陥れようとする役のつもりで登場させた。だけども、何だか憎めない人になった。王国の財政を預かる立場から「ケチ」と陰で文句を言われがちであるが、立て続く戦争で陥った財政難を立て直している。

 フランツの愛しのブロンシュの父親で、妻は同格の侯爵家から貰っている。その妻はシュトルーヴェ伯爵の従兄ユリス・カノヴァスの妻と姉妹。妻の実家もかなり実績のある家柄。

 数字や経営に強いブロンシュは侯爵の秘蔵っ子でもある。

 


•カラマン大使・エキューデ伯爵と夫人

 ……カラマン帝国の大使夫妻。表での立場は第一皇子派だが、裏では皇妃とも繋がっていた。ベルナールを誘拐する為に大使の紋章の付いた馬車を使う。



•宮廷医師と弟子

 ……マリーの出産を取り仕切った医師と助手。王宮の医師群をまとめる宮廷医師長。普段はフィリップ十四世の主治医を務めている。弟子は弟子。たくさんいる内の中で最も優秀な弟子。


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