第三回:本編から削った設定と書く程ではないキャラの裏話色々
・国軍競技会について。
そう言えば、ちゃんと説明したかしら? と思いまして。
国軍競技会は、グルンステイン王国軍全軍参加の技術大会です。
グルンステインの軍隊は陸軍、海軍、治安維持軍、王宮近衛連隊の四つがあります。王宮近衛連隊は軍務省の管轄下になく、国王及び王太子の直轄になりますが、この時は代表者を出して参加します。
一次予選・連隊選抜会(希望者募集からの実技選考)
↓
二次予選・師団選抜会
↓
三次予選・各軍選抜会
↓
本戦・国軍競技会
の順番です。
参加資格があるのは、半年間の基礎訓練を終えた二等兵からです。
競技内容は
剣術、馬術、体術(徒手)、射撃、市街戦技術の計五種目。
剣術は防具、刃を潰した剣を使用した勝ち抜き戦。
体術も防具を使用した勝ち抜き戦。
馬術は障害物を用意した障害馬術。
射撃は立射、膝射、伏射の三姿勢で計60発の射撃を行い、点数を競う。
市街戦技術は二個分隊(約18人)と一個小隊(約27人)の2種で、各軍の対抗戦。
※近衛連隊は市街戦競技に参加しません。
ジェズ君は、かつて旅行で王都に訪れ、コール家のみんなと国軍競技会を見学したことがあります。その時に「軍人ってカッコいい!」と思って、兵役につくことを志願します。それまでは、貴族だけど僕ヒョロヒョロだしなあ、と将来のビジョンが見えていませんでした。
今、ジェズ君は身長も伸びて逞しくなりつつあります。シュトルーヴェ家の筋肉料理のおかげです。
因みに、国軍競技会はジェズ君の見せ場が欲しくて用意した設定です。それが思いの外、色んな出来事の転換や和やかな場面を作るのに役立ってくれて、私は過去の自分を褒めたいと思っています。
・伯爵襲撃事件について。
大した事は書きません。伯爵を襲撃した犯人の中に、以前ドンフォンに投げ飛ばされて首を絞められたファラルド少佐がいます。
何処にいたか、分かるかな?
・会議後はお茶とお菓子。
「コイツ等、いつも会議後にお茶してるな」と思った方もいるでしょう。
第二連隊に限らず、グルンステインでは午後のお茶は大事な時間です。密かに、グルンステイン人は甘味が好き、という設定を組んでいます。
フランツはやや酸味のあるフルーツ系のケーキ。
ティエリはクッキー。
ローフォークはカヌレが好きです。
ボナリーはチョコレート。
トゥールムーシュはシュークリーム(丸飲み)です。
会議後のお茶は、紅茶も菓子も厨房係に用意してもらって、副官の中でも一番下っ端のドンフォンが淹れる事が多かったです。ですが、ドンフォンの紅茶よりもエリザベスが淹れてくれる紅茶の方が美味しいと知った上官達は、エリザベスにその役目をお願いします。
その分、フランツはこっそりエリザベスの俸給を増やしています。
・番外編のレステンクールのお姫様。
多分、一方的な被害者。
祖父と父親と兄弟が愚かなばかりに、彼等の恥晒しの矢面に立たされたも同然の姫君。女性の地位が特に低いレステンクールで、彼女の意思は全く考慮されず、グルンステインに嫁に出された挙げ句に門前払いという、とんでもない侮辱を受けます。
恥ずかしくて泣き暮らす姫様の唯一の心の支えは、外国から嫁いできてレステンクールとは基本的に考えが違う祖母でしたが、その祖母が逝去すると、母方の貴族が面倒を見ていました。
カラマン帝国に嫁ぐ事になるが、転落事故でお腹の子諸共死亡。
そこにはグルンステインの王太子妃アリンダが、いたとか居ないとか……。
彼女の死がきっかけとなり、レステンクール包囲戦争が始まり、レステンクールは滅ぶ事になります。
・得意な武術について。
登場人物達が得意な武術について、少々。
多分、一番分かりやすいのがローフォークの剣術とジェズの射撃だと思います。ドンフォン中尉は体術(徒手)とナイフです。ファラルド少佐をぶん投げて首を絞めていましたね。幼少期からの喧嘩っ早さが影響しています。
基本、ジェズ以外の士官学校出身者はオールマイティーに何でもこなしますが、大体こんな感じです。
一番の謎はフランツでしたが、第九話で彼が見せたのは、銃剣術と徒手です。
元々陸軍軍人としての教育を受けていたので、この二つは特に鍛えています。フリントロック銃は一発撃ったら、再度発砲するまでに時間が掛かるので、現実世界でも威嚇で撃った後は突撃が主な戦術のようでした。なので剣術も相当な腕前ではありますが、ローフォークと比較するとやはりローフォークの方が上でしょう。
射撃は天才少年には敵わないと素直に認めていますが、徒手についてはドンフォンに負けるわけないだろ、この俺が。と思っています。
フランツは満遍なく高い技術を有しています。ですが、やはり一番得意なのは後方で兵を動かす用兵術でしょうか。あと、馬もよく乗ります。エリザベスが来るまでは、馬車ではなく乗馬して出仕していました。
なので、今、フランツの愛馬は臍を曲げています。
・ シュトルーヴェ家の兄妹。
シュトルーヴェ伯爵夫妻には五人の子供がいました。ですが、十年程前に五人の内、二人が夭折しています。ジェズが家族を亡くしたのと同じ流行り病です。
その流行り病で、次男と次女を亡くしました。
生まれた順番は、
長女・マティルダ …しれっと出てくる謎の『姉』。謎のまま終わらせたい。
長男・フランツ …妹に虐げられる運命の跡継ぎ。
次男・アンドレ …生きていたら十九歳の設定。腹痛事件の無垢な犠牲者。
次女・アレクシア …自由度の高い伯爵令嬢。
三女・パトリシア …アリシアの可愛い妹。生きていたら十四歳の設定。
エリザベスと良い友達になれたかも。
元々、何処かに入れるつもりで設定していたのですが全く余裕が無かったし、長女は徹頭徹尾『謎』の存在にしたくなったので、特別に描写はありません。
兄妹、ということでは、フランツもアリシアも、エリザベスとジェズを可愛がっています。亡くした兄妹の代わりに、というわけではありませんが、もしかしたら、心の何処かでは重ねている部分もあるかもしれません。それは伯爵夫妻も同じで、二人の存在に癒されています。
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