第3話 のじゃロリ式ワンサイドゲーム

 スフィンクスを『竜眼』で鑑定する。ふむふむ、なるほど。


 奴らは分類上ストーンゴーレム扱いらしい。個人的にはZ〇IDSゾ〇ドと認識。

 一体当たりのレベルは1000で統一されていて、個体によるバラつきがない。


 そのレベル帯にしては耐久性が格段に高く、腕力もそこそこあり、保持する魔力は十分以上。また素早さも相当のものだった。

 欠点をあえてあげつらうとすれば、四つ足の畜生型のために武器を使っての攻撃が難しい点か。物理攻撃は、主に鋭い前爪と口から覗く牙となろう。



 さらに、さらに。



 こいつは魔術を行使できる知能を有している。

 むしろ、下手な人間より賢い。

 そりゃそうだろう。多少の偏見が混ざるがなぞなぞが好きそうだもの。


 面白いのは自動修復機能を持っているところと飛行能力を持つところ。


 ゴーレムタイプなので種別的に防御力が高く、魔術・魔法耐性もレベルに相応する高さを持ち、リジェネ機能で回復までする性質の悪さ。

 加えてスフィンクスについている翼がそもそも飾りではない点。おそらくは翼からなんらかの力場展開して飛ぶのだろう。



 総合すればどう表現すべきか。



 攻撃型でも守備型でもなく、あえて評するなら『迎撃型』という立ち位置。いつかどこかで聞いたことのある『攻性防壁』というアレ。


 まったくもって人類には絶望でしかない。が、俺の感覚ではただの雑魚。

 しかし数だけは多い。ざっと500体はいようか。


 人面猫型の怪物はこちらを見据えて一斉に吠えた。


 威嚇、警告の類ではない。


 戦闘のためのを込めた咆哮であった。レベル150程度の人間が浴びれば途端に血肉は沸騰し、しかも衝撃波がその肉体を散りじりに吹き飛ばすだろう。



「衝撃波がオマケにつく超高出力の電子レンジってところかのぉ?」



 俺は吶喊を止めない。革製の防寒服がドロドロに溶けて更に衝撃で吹き飛ばされても、このロリっ子ボディは吹き飛ばせない。



 竜神の力はその程度では屈しない! 



 俺は内側に着込んでいた純粋神気で織り上げられた、バレエドレスのような――に称するなら、魔法少女衣装とも言うべき姿となって敵に凸する。



 告白すると、今の俺の姿は金髪碧眼ツーテールの美少女である。



 人の子ならいざ知らず、遥か上位存在の神族が美形なのは当然っちゃ当然。外見の年嵩は『悟り』と言えばわかるヤツはわかるだろう。そう、


 俺は跳躍する。虚空に力場を展開、それらを幾度も蹴り、敵に襲い掛かる。



 ひゃっはーッ、喰らえオラァ!!!!!



 どがん! と一体のスフィンクスを手にした鈍器で叩き潰す。

 神気を纏う圧倒的腕力が巨大な人面獣の顔面を潰し、そのまま連鎖的に身体も崩壊させていく。大剣の体裁を取った鈍器。斬るではなく、叩き潰すが一番的確だ。



「お次はトンファーキックならぬ鈍器キックじゃあ!」



 どごぉ! とAAアスキーアートで見たことのある、武器を使わないただの蹴りを放つ。



「そしてトンファー鉄山靠ならぬ鈍器鉄山靠である!」

「さらにトンファー置きっぱなしバックドロップっぽいサムシング!」

「ついでにトンファービームならぬ、なんか目から出るビーム!」

「敵の攻撃にはトンファースルーを参考に、華麗なる鈍器スルー!」

「がら空きの横っ腹にトンファー正拳突きをリスペクトする鈍器正拳突きじゃ!」



 いや、武器を使えよというツッコミ、ただ今受付中。



 にしても、である。


 均一化されたレベルの、500体もの怪物。しかもどこかに司令塔になる存在がいるらしく統率された動きを見せている。

 多少の個体を潰したところで揺らぐことのない鉄壁。まるで統一された規格の個を束ねて、一塊に戦術を展開する軍隊のようだ。



 数は暴力である。どれだけ個で強かろうと、数の力には負ける。

 脆弱な人類種の観点からすれば、ではあるが……。



「残念ながらこちとら神をしいした人ならざる者。天駆ける竜神の身体をはべる者。もっとも新しき破壊と再生の体現者デストロイマスター。この世界の強さとは、数ではなく、神気よ! 纏う神気ですべてが決まる! わらわの神気は、すでに亜神の域を超えておるわ!」



 ぎゅんと垂直に跳躍する。瞬時に上空1500メートルに達する。眼下にはスクミズが両腕に仕込んだ12.7ミリ亜神気(竜輝)バルカンで牽制を続けている。


 戦闘形態になっているのでもちろん彼女の姿はスクミズ&エプロンである。

 つけ加えればスクミズニーソックス&エプロンである。



 正面から見れば、裸エプロンっぽく見えるロマンの塊でもある!!!!!



 まったく、かような姿を考え出したヤツは天才だな。自画自賛する。

 自らの黒歴史を肯定する。テンションの高さが、すべて肯定する。


 俺は右手に握られる大剣の体裁を取った鉄塊、或いは鈍器をひょいと肩に担いだ。



「多弾頭含光ほおみんぐ爆裂弾で行くかの?」



 空いた左手で、練り上げた神気を球状に纏める。1万の魔力が1亜神気(竜輝)に相当し、1万の亜神気が1神気に相当する。つまり1億の魔力が1神気となる。


 調子に乗って周辺を破壊しつくすと遺跡までついでに崩壊させかねないが、その程度で崩れるなら1万年間ピラミッドの形態を保てるはずもないと判断して遠慮せず神気を加工する。そうして出来上がった弾頭に、フッと滅びへの吐息を吹きかける。


 含光爆裂弾はパッと光のシャワーとなって降り注ぐ。スクミズは俺の行動の意図を読んで、阿吽の呼吸さながら敵に背を向け全力で遁走モードに切り替えていた。



 轟ッと、眼下で綺麗な十字の花火が幾重にも咲いた。



「おー。まるで某有名アニメの、使徒を倒したエフェクトに似ておるのー」



 アレは十字の光柱で、俺のは十字に花開く不可避の爆裂である。

 我が滅びの光弾を受けた巨大人面獣どもは、やおらぴゅるると打ち上げ花火のように上空へと強制的に吹き飛び、十字に爆散するのだった。



「あっ、しまった。ピッと指さして爆殺した上で『汚い花火』ってやるの忘れてた」



 覚えていたら今度悪党の誰かにやってみよう。いつもは頭を握り潰してるし。


 俺はゆるゆると滑空し、スクミズが我が元に馳せ参じるのを待つ。



「お見事でございます、メガンテお嬢様」

「だからその無差別自爆テロじみた名前はやめよというに」

「そうでした、メガルティナお嬢様」

「うむ!」

「それで、トドメはいかが致しましょうや?」

「そうであるなー、何が面白いかのー? ふむ、ふむ。ではロンギヌスで行くとするかの? これは中々のモノ。危ないのでスクミズはそこで見ているがよい」

「はい、お嬢様。仰せのままにー」


 そう、まだトドメの一撃を加えねばならないエネミーがいるのだった。




 ~次回予告

 幼女はトドメ・ファイナルを放つ。幼女容赦なし。

 ようじょにならぶものなし。きみもようじょにならないか?





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