第9話 狭間世界
五十嵐勝利くんが行方不明になって2ヶ月が経とうとしていた頃、居場所を突き止めた木村冴子は、勝利くんを連れ戻す為に自ら命をたった。
なぜなら、勝利くんがいるのは死後の世界だからだ。
死後、真っ白な無空間である留まりの世界(地獄)に着いた。
留まりの世界は重力が上から下に流れている為、体重が2倍になった感覚になり、空気が重たく感じる。
そして、何より真っ白で何も無い世界の為、長く留まると精神に異常をきたし、灰になっていくのであった。
その為、冴子はすぐにその空間を抜け出した。
無欲な人間には、空間の抜け道が見えると言われる留まりの世界(地獄)は霊能者として経験を重ねた冴子には無効化であった。
そして、狭間世界へ足を踏み入れた冴子は、勝利くんの名前を叫んでいた。
狭間世界は現実世界と同じ景色であり、地理も同じであった。ただ、違うのは人が全くいない事だった。
その為、まず勝利くんの家へ冴子は行った。
冴子 もし、お母さんを捜しているなら、ここにいるはずよ。どこなの?勝利くん。
当日、勝利くんが消えた自宅マンションのエレベーター前に来た冴子は辺りをくまなく捜した。
すると、子供らしき黒い影が、階段の方へ走っていったのを察知した。
冴子 待って!勝利くーん!
冴子が叫んだ、その時、冴子の後ろで子供の声がした。
う、う、だれ?神様?ですか?
冴子 もしかして勝利くん?五十嵐勝利くん?
真っ白な顔で裸の男の子は、泣きながら近づいてきた。
う、うん。僕、怖いよ。
冴子は子供を抱きしめた。
勝利くん、良く聞いて!時間が無いの。おねぇさんは、ここにあと1時間しかいれないから。でも、勝利くんと現実世界に帰るわ!
う、うん。この地図、役に立つかな?
勝利は手に握りしめたクチャクチャになった紙を冴子に見せた。
冴子 これは?死神の契約書?
違うわ!これ、そうよ!勝利くん、偉いわ!あなた、どこでこれを?
勝利 学校から帰る時にね、駅で拾ったの!次の日、おまわりさんに渡しに行こうとしたら、ここに(泣)
冴子 そう、だから、飛ばされたのね!分かったわ、とりあえず行きましょ!
勝利 で、でも赤い目の怖いおじさんが、来る。
冴子 大丈夫よ。この世界では気持ちを強く保てば何ともないの。こんな世界だから、悲しくなっちゃうけど、こらえて!負けちゃダメ!
勝利 う、ん。分かった!
その時、後ろから赤い目をした黒いフードをかぶった年寄りがドン!ドン!と音をたてて近づいてきた。
冴子 行こう!
震えている勝利を抱えて冴子は走り出した。
マンションの入り口のドアを蹴ってあけると、階段を下り、右側にある駅とは反対側へ冴子は走った。
その時、勝利が話し出した。
僕、自分で走るよ。だから、
冴子は周りを見渡してゆっくり勝利を道へ下ろした。
そして、近くにあった車に乗ると勝利を乗せて来た場所へ戻った。
冴子は地図を逆さまにして破いた。
冴子 勝利くん、また現実世界で会いましょ
勝利 ?
すると光が二人を包んだ!
一方、現実世界では、、、三崎が時間を計り3分前に冴子の身体をバスタブから出し、ベッドに寝かすとAEDを付けて人工呼吸をはじめていた。
三崎 先輩、生き返ってください!1、2、3!
顎を持ち斜めに顔を向け気道を確保しながら、チューブで空気を送り込み、カウントをしながらAEDに合わせて人工呼吸をし5分が経過した時、冴子の口から水が溢れ出した!
ブァ!ゴッホ、ゴホ!
冴子が咳き込みながら起き上がろとした。
三崎 先輩!良かった♪でも、まだ起きちゃダメです。
ゆっくり深呼吸をして、横を向いてください。
冴子 三ざきく、ん。成功したわ!はぁ、はぁ。
冴子が三崎の手を強く握った。
三崎 お疲れ様です。あとはゆっくり休んでください。
冴子が小さな声で、うん。とだけ言って目を閉じた。
そして1時間後、冴子が目を覚ますと、
はぁ、はぁ!
とゆう声が聞こえていた。
冴子 三崎くん?何やってるの?
三崎 暇だからテレビを見ようと思ってテレビを付けたら、こんなのしかやってなくて笑
映像には裸の男女が抱き合う場面が映っていた。
冴子 バカ!こっち来て。
三崎が冴子に近づくと、冴子が三崎にキスをした。
三崎 んー、ちょ!先輩!本当にマズいですよ!
しかし、裸でキスをしてきた冴子を三崎は受け入れるしかなかった。
冴子 お願い♪少しだけ。
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