第8話 真実に近づいて2 前編
赤井村から帰宅して探偵事務所に戻ると冴子に新聞社からの取材依頼が入っている事が分かった。
しかし、冴子はこれを拒否した。調査がまだ中途半端だからだ。そこで所長は、冴子からの情報を元に答えられる範囲で書類だけ新聞社に渡した。
そんな赤井村から帰宅した次の日、冴子は、同僚の男性を連れて商店街の路地裏にあるホテルへと行った。
冴子 三崎くん、医大卒で医師免許を持ってるのよね?
三崎 はい。まぁ、人数オーバーではみ出しましたけど笑
冴子 今回は、そのおかげで助かるわ♪
三崎 あの?いったい、どこへ行くんですか?何か、この辺、妖しいお店が!
冴子 そ、れ、は~?着いてからのお楽しみ♪と、その前にいくつか質問なんだけど?
三崎 はい?
冴子 人って水死するのに、何分くらいかかるものなの?
三崎 場所や環境、状況にもよりますけど、平均で10分くらいじゃないですかね?
何でですか?
冴子 じゃーさ、そこから蘇生するのに一番ベストな時間は?どれくらい?
三崎 一応、溺死後、3分以内なら後遺症はほとんど無く蘇生しますが、約8分が限界です。ただ、5分を越えると後遺症が残りますかね?それでも5分後なら、まだ蘇生だけは可能です。これ、でもAEDありきで、しかも病院への迅速な送還があっての話しなので、人工呼吸だけでなら、蘇生確率は60パーセントくらいです。
冴子 ふーん。じゃ、3分がベストね。
三崎 ベストとは?
と話していると、冴子は三崎の手を引っ張って1軒のラブホテルへと入っていった。
三崎 えっ?えっ?わー、ちょっと!マズいっすよ!
そんな事は気にせず冴子はさっさと部屋を選んで、三崎を連れていった。
冴子 あら、素敵な部屋♪
丸くて大きなピンク色のベッドが中央にあり、その頭上には大型テレビがあった。そして、入り口付近にお風呂があり、冴子はすぐにお風呂に水を溜めた。
三崎 先輩?これ、何の仕事っすか?
冴子 アタシ、これから死ぬの!
三崎 は?
冴子が重たそうなキャリーバッグの荷物をベッドの前に持ってくると、中の物を出した。
中には、AED一式と、注射器、パイプチューブ、三角ロートとビニール手袋、ビニール袋が入っていた。
三崎 まさか?お風呂で自殺するつもりとかじゃないですよね?
冴子 わぁ!さすが!ピンポーン♪
三崎 何で?彼氏と喧嘩とかっすか?
冴子 彼氏とかはいませーん!クライアントが狭間世界にいるから、連れ戻しに行くのよ!
三崎 狭間世界?死後の世界とかっすか?んなのあるんですか?
冴子 そっ♪あっ、ストップウォッチを忘れたわ!
スマホで時間ってさ、計れる?
三崎 まぁ、出来ますけど。
冴子 じゃ、お願い♪
と話すとお風呂の水を止めて冴子は服を全て脱ぎだした。
三崎 わっ!俺、どこを見たら?
冴子 大学で散々、見てるでしょ?裸くらい。医大なんだから。じゃ、死んでくるから、蘇生をよろしくね。
三崎 いや、まぁ映像では。生身は少しだけ。俺は先輩が風呂中、ずっと見てるんっすか?
そして、冴子が水に入り顔をつけて呼吸が止まり、心肺停止状態になると死後の世界である狭間世界に着いた。
その様子を見ながら三崎はスマホで時間を計りだした。
冴子 うわ~♪ここ、懐かしい~♪じゃなくて行かなきゃ!向こうで3分だからコッチだと3時間が限界ね。
と言いながら腕時計を入念に確認した。
冴子が真っ白な空間で手を広げてジャンプをすると住み慣れた、いつもの街へたどり着いた。
冴子 やっぱり誰も居ない!
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